表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/186

18話

「―むん!」

鬼の様な速さで迫って来る!


―右!

そのまま左に躱す!


――もう一度右!!

左後ろに躱す!!


―――また右!いや左!!!躱しきれない!!!


「―がっ!!」


ぽた・・・ぽた・・・

脇腹をやられた!!


――ポーションを


!!!!!!!


「―――っ迅雷!!」

光の速度で迫る一閃を何とか躱す!!!


―まずいぞ、これはまずい!

迅雷で距離を取り、ポーションを傷口に振りかける。


しばらく前から魔力変換を用いた雷撃を打ち込む度に、何か魔力を得る感触があった。だが、今回のアレに雷撃をいくら打ち込んでも魔力を得る感触がない。


奴の攻撃はそのどれもが文字通り必殺の技である。先ほどの一振りも迅雷で回避しなければ、直撃を受けていただろう。


しかも、相手は転移魔法も持たないのに、迅雷を見切ることができるときた。

それはつまり


―迅雷は攻撃の切り札にはならない


しかも、回避に使用できる回数にも限界がある。





「くくっ。躱しよる躱しよる。それでこそよ。」

くつくつと笑い、太刀をその場でさっと回す。


―ィィィィン

奴の持つ大太刀が音を立てる。


さっきからいくら魔眼を使用しても、相手に魔力が全く感じられない!!!!!


驚くべきことだ。魔力を全く持たない人間が、魔力を持つ世界の人間を上回る戦闘力を持つなどということがあるのだろうか!?


―打開策はないのか!?


魔力もポーションももうほとんど残っていない。

使用できるものといえば


―闘気だけ


だが、俺程度の闘気ではアレの闘気を上回ることはできない。

つまり、純粋な戦闘では奴に勝つことはできない。


―それでも

それでも、後ろに引くよりはずっといい。

考えようによっては、世界中の誰もができない経験を俺は今、しているのだ。


こんなダンジョンの端で、かつて天下一を手中にしかけた武人と戦うことを一体誰が想像できるだろうか?


俺は相手を見据え、真っ直ぐ構える。

全身に闘気を集中させる。


―俺の全身が闘気で覆われていくのを感じる!!


「―――ほう。貴様の本気、見せてみよ!!!!!」

敵は大きく踏み込んで来ようとする!


しかし、俺は相手より速く縮地を使い接近する!!


―右ストレート!

鎧の上から懇親の突きを入れる!


だが、小手を使い、上手くガードされる!!


――まだまだ!!

―もう一度右ストレート!!


今度は鎧に突きを入れることに成功するが浅い!!!


―であれば!!!

―左の貫手を!!!!!


急所の脇腹を目掛けて闘気を集中させた手の刃を突き出す!!!!!!!


―ガシャリ

脇腹を抉るが、それでも致命傷にはなっていない。


「・・・むぅ。先ほどの意趣返しか。」


リィィィィン


素早く俺は下がり、距離を取る!!

左手を見ると、指先にかけて血で濡れる程度で、やはり致命傷を与えることはできていない。


じくり

逆に、俺の負った傷口が開いて再び血が流れる。


―あまり長くは戦えないか


古来より刀を持つ者と無手の者の勝負は幾度も起きてきた。襲撃にあってやむを得ず無手を挑む者、刀を持たない農民、あるいはそもそも無手に自信がある武人など、事情は様々だっただろう。結果は、おそらくほぼ全て大太刀を持つ武人の勝利に終わっただろう。本来、大太刀を持つ相手に無手で挑むは無謀である。


そんな中、唯一。そう、唯一と言っていい。ただ一つだけ無手の者が大太刀を持つ者を上回る可能性のある、そういった技がある。だが、一般的にはその技を成功させるのは達人中の達人であり、古武術を鍛錬してきた俺も、その技についてはもはや御伽噺の世界の幻の技である。もちろん、俺はそんな技を使ったことはない。


―ぶっつけ本番になるが


もはやそれに成功しなければ、この難局を乗り切ることはできないだろう。


もう一度相手を正面から見据える。


「・・・」

これまで肩に担いでいた太刀を、そのまま正中に構える。

こちらが何をしようとしているのか、見抜いた上でそれに乗ろうというのかもしれない。


「―やれるものなら、やってみよ。参るぞ」


「――(おう)!!!!!」


互いに正面から踏み込む!


正中から上段に振りかぶるのが見える。

振り下ろされる太刀はもはや神速といっても過言ではないかもしれぬ。



なけなしの魔力を全身に集中させる!


―この技を決めるには全身の反応速度が極めて重要だ


限界を突破した闘気を両の手に集中させる!!

―この技を決めるには太刀を上回るほどの鋼の手が必要だ


「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


―神速の太刀が今、迫り来る


「はあああああああああああああああああ!!!!!!!」

限界を突破したものを、今ここに


―迅雷


閃光と稲妻が交錯し!!!!!!!!!!!!!


無音


そして、大太刀を両の掌で柔らかく、しかし豪胆に防ぐその技が完成した。


―その技の名は




『白刃取り』





「おらあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


直ちに防いだ太刀を振り払い、至近距離から全力の正中突きを鎧の上から叩き込む!!!!!!!!!


――バキリ


「―――見事。見事なり。」

鎧と面が割れ、中から男の姿が現れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ