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12話

今回の飯はルームサービスを予約してあるみたいだった。

宿は魔法学院アルトリウスの学生でいっぱいであり、宿に備え付けられている食堂が溢れることが想定されたためである。


ちなみに、部屋割りはラズリーとソフィアが同じ部屋で、隣に俺の部屋。今回は一人部屋でルディもいないので、悠々自適に部屋で過ごすことができるだろう。


ルームサービスは便利ではあるが、難点がある。


「もう注文してずいぶん経つが、忘れられてはいないだろうな・・・?」

そう、料理を注文してから部屋に届けられるまでかなり時間がかかるのである。


だが、おそらくは食堂の方は混雑を極めているだろう。


―少し様子を見に行ってみるか?


コンコン

俺はラズリーの部屋の扉をノックする。


「―はい、ってイシュバーン様でしたか。」

ソフィアが少し扉を開けた。


「少し食堂の方の様子を見に行こうと思うんだが、問題ないか?」


「何か食堂に用事があるの?」

ラズリーも扉の前に出てきて、チェーンを外す。


「なに、注文している料理が全く届かないからな。食堂に行って何か飲み物でも取りに行こうと思うんだ。お前たちにも取ってこようか?」

セルフサービスではあるが、食堂では様々な種類の飲み物があるという話を予め聞いていたのだった。


「そうね、私たちの注文した料理もまだ来ないのよね。お願いできるかしら?」


「分かった。何が欲しい?」


「ソフィー、何が良いかしら?」


「そうですね・・・。お嬢様、紅茶は部屋に備え付けのがありますので、ジュースにしてみてはいかがでしょう?確か、色々な種類が準備されていると聞いております。」


「良い考えね。イシュバーン、フルーツ味の美味しそうなジュースを二つほど頼めるかしら?」


「承知した。」

そう言って、俺は食堂に向かうことにする。



食堂に行くと、思った通りやはり人で溢れていた。多くは魔法学院の生徒とその護衛などの関係者だろう。


「―おや?イシュバーンじゃないか?君も参加しているとはね。」

見ると、ヒューヴァがいた。


「ああ。ちょっとした野暮用でな。」


「またラズリー様の護衛か?」


「そんなところだ。」


「君にそれが務まるとは思えないが。―あの方も趣味が悪い。」


―言ってくれるじゃあないか


「お前はハーヴェルとか?」

ハーヴェルとヒューヴァはアイリスを巡る恋のライバル、もっともそれはヒューヴァの一方的な感情であるかもしれない、であるが、何故かヒューヴァは何かとハーヴェルを支援しているようだった。


「それもあるが、今回はローズも参加する。我が妹の婚約者である君の弟君も参加するのだろう?」


「ああ。一緒には来ていないが、この宿のどこかにいるだろうよ。」


周りをざっと見渡すと、いつか見た女騎士と弟とその婚約者が一緒にいるのが見えた。

俺がそちらを見ると、イシュトと目が合う。


―あいつめ

イシュトはとても嫌そうな顔をしやがった。


「それで、君は一人寂しく夕食かい?」


「いや、俺はルームサービスを頼んでいる。ここには飲み物を取りに来たんだ。何か美味しそうなジュースを知らないか?」


「ああ、予め予約をしていたのかい。そうだな、ベリーフレッシュを先ほど飲んだが、とても飲みやすかったな。」


「なら俺もそれにしよう。」


混雑しているのでヒューヴァとの会話を切り上げ、列に並ぶ。どうやら食堂での夕食はバイキング方式のようだ。


―俺の分はまた取りに来ることにしよう

俺はコップ二つを持ち、上の階へ戻ろうとすると。


「・・・兄さんも来ていたんだね。」

イシュトが声をかけてきた。隣にはローズも一緒にいる。


「―イシュトか。何か用か?」

自分の弟であるが、こいつの相手をするのは本当に面倒である。


「今日は、あの破廉恥な女は一緒ではありませんの?」

おまけに、このローズというイシュトの婚約者もかなり面倒な性格をしている。ヒューヴァに文句を言うべきだろうか?


「さあな?」


「―そのコップ。もしかして同じ部屋に?あなた、合同演習を何だとお思いですの?」


「単なる魔法学院の単位だろう?」

今回、俺にとってはそれ以上の意味があるが、大抵の学院生にとっては単位こそがその最大の目的だろう。


「ローズ、兄さんには何を言っても話が通じないんだ。行こう。兄さん、父さんから言われていると思うけど、僕たちに迷惑だけはかけないでよね?」

それだけ言うと、イシュトとローズはどこかへ行ってしまった。


―何だというんだ、まったく

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