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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
3部 見えるもの、見えざるもの 9章 合同ダンジョン探索

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9話

縞々(しましま)縞々(しましま)その週の休日。俺はいつもの金物屋にいた。


「婆や。立札か、あるいはその代わりになる物は置いていないか?」


「―おや、イシュバーンかい。立札?一体(いったい)何に使うつもりなんだい?」

今日は珍しく店の奥に引っ込んではおらず、店番をしているようだった。


「ちょっとな。危ない場所があるから、予め注意を促す立札を設置するつもりだ。」


「・・・わざわざそんな危険な場所に行くのかい?」


「そうだ。俺にとってはどうってことないことなんだがな。」


すると、店の棚を開けたり、雑多に積み重なった商品の中を探ったりする婆や。


「・・・さすがに、立札は置いていないねえ。取り寄せるかい?」


「いや、もう次の週には必要だ。何か代わりになる物はないか?」


「代わりになる物・・・。ああ、テープならある、確か・・・。」

そう言うと、婆やは棚から黄色と黒の縞模様(しまもよう)のテープの束を取り出して来た。よくサスペンスドラマなどで見たテープとそっくりである。


「む―?これを張って立ち入り禁止の札をかければ問題ないか・・・?」


「そうぢゃのぉ。ないよりはましぢゃ。」


「これを買おう。いくらだ?」


「大銅貨五枚ぢゃな。」


―婆やの店の商品にしては安いな

俺は婆やに大銅貨五枚を渡す。


「ひっひっひ。まいど。他に何か買うていくかい?」


「いや、特に今回買うものは他にないな。」

そう言って帰ろうとするが、俺は婆やに聞かなければならないことがあったことを思い出した。


「―そうだ、婆や。日本って知っているか?」


「ニホン?はてはて・・・?」

そう言うと、婆やはいつものようにカラカラと笑う。


―何か態度が怪しいが、ここで詳細を聞いても仕方がないか


俺は店を出て、振り返る。確かに金物屋はここにある。どうやら婆やは既に店の奥に引っ込んでしまったらしい。


「・・・この店は一体何なんだろうな?」

この世界はまだまだ俺にとって分からないことが多い。そして、この店はあまりに俺の日常に馴染んでいるが、実際にはかなり奇妙奇天烈な店である。


とはいえ、あまり深く探ろうとは思わない。


「―帰るか。」

他に必要な物は既に購入済みである。看板は木の板でも使えば問題ないだろう。

俺は離れに戻ることにする。



離れに戻ると、扉の前でセバスが待っていた。


「―どうしたんだ、セバス。何か用か?」


「坊ちゃん、ご当主様が坊ちゃんをお呼びです。」


「親父が?一体何事だ?」


「イシュト様が来週の合同探索に参加されるので、おそらくそのことに関連するかと。」


「・・・全く、面倒なことだ。」


「ところで、坊ちゃん、剣の訓練はいかがでしたか?」

剣の訓練場での剣の訓練のことを言っているのだろう。


「そうだな。皆かなり剣が出来るように思えた。」


「―それはそれは。坊ちゃんも気が抜けませんな。」


「そうだな。一人(ひとり)で剣を訓練するのも良いが、ああいった場所に行くことも新鮮で良いな。」


「そうでしょうとも。それでは参りましょう。」


「セバス、後で行くと親父に伝えておいてくれ。俺は荷物を部屋に置いてから行く。」


「承知致しました。それでは私はこれにて。」

そう言うと、セバスは別邸の方へ戻って行った。


俺は荷物を部屋に置いてから、別邸に向かうことにする。





「―親父殿、セバスから俺に用事があると聞いたが。」

俺は久しぶりに親父の書斎にいる。


「・・・イシュトがアルトリウスの合同演習に参加することは知っているな?」

無駄に重々しく話す親父。


「ああ、知っているさ。それがどうかしたのか?」


「・・・おまえも参加するつもりか?」


「ああ。今回は用があるんでな。」


「――イシュトの邪魔だけはせんでくれよ?」


「俺がイシュトの邪魔を?笑えることを聞くものだな、親父殿。」

どうせヘイム家から護衛を派遣するのだから、問題ないだろう。


「・・・何故おまえのような者が合同演習に参加するのだ?」


―俺はテレジアの公爵令嬢の護衛だからな


「ダンジョンというものに潜ってみたくてな。何、単なる好奇心さ。」

実際にはダンジョンには何度か単独で挑んだことはあるが、それを知る者はいない。


「ダンジョンはおまえが考えているように甘いものではないぞ?イシュバーンよ。」


「さあな。だからこそ経験する意味があるのではないか?」


「・・・・・・当然だが、護衛はイシュトのみに付ける。」


「ああ、問題ない。他に話がなければ、俺は戻るぞ?」

そう言って、書斎を後にする。




通常、上位貴族にもなれば、このようなダンジョン探索の際には腕利きの護衛が複数人付くことが多い。いくら本人に才能があろうと、ダンジョンというものは予期せぬことが生じることがあるからだ。


ダンジョンには複数人で挑むべし。この掟はダンジョンに挑む者であれば常識なのである。


―俺がしばしば行くダンジョンは、一応(いちおう)は初心者用のダンジョンだからな


ちなみに、今回行くダンジョンは合同探索に使うことができるダンジョンであるので、かなり広い。入り組んでいる巨大洞窟型のダンジョンであるが、浅い階層では確か、ゴブリンくらいしか出ないはずだ。


おまけに、各貴族はそれぞれの護衛を連れてきているので、本来ならばかなり安全であるはずなのだ。


学院生で、護衛を連れていないのは、ハーヴェルと俺くらいのものだろう。ルディでさえ、護衛を連れてきているはず。


ハーヴェルは平民であり、護衛がいない。そして俺に至っては護衛される方ではなく、護衛する方として参加するのである。

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