8話
何となく、実際にエミリーが窮地に陥ったときにルディが無茶をするだろうということが分かった。
―確実な方法はないか?
「やはりこの方法しかないか・・・。」
考えた末、そもそもエミリーを迷わせないという方法が最善策だと思った。
ラズリーを言いくるめて、エミリーにぴったりと最初から付いておくのはどうだろうか?そうすれば、エミリーが逸れることはないだろう。また、予想外の敵が出てくるような妙な場所にわざわざルディを案内するリスクもなければ、エミリーがハーヴェルに惚れることもない。
あるいは、ダンジョンに先回りして、イベントの起きる通路に対して『この先立ち入り禁止』の看板を置いておくとしようか?
ちなみに、俺であれば、原作のボスを倒すことは容易である。何なら、あのダンジョンでうようよしているジャイアントスネイルよりも簡単に倒すことができるだろう。
—―やりすぎかもしれないが、もはや介入する以上は、ボスも予め倒しておくことにしよう
と、そんなことを考えながら歩いていると、
「それでね、次のお茶会なんだけど―、キャッ!!」
ちょうど曲がり角で誰かとぶつかった!
―誰だ!?
考え事をしていて反応が遅れた!俺はその背後に素早く回り込む!
――ぐっ
危うく後ろに倒れこむ華奢な体を抱えると、それはラズリーだった。
「―え?」
ぽかんとしているラズリー。見れば、セフィリアやその他のいつもの取り巻きもいるが、みな呆気にとられた様子である。
――むにっ
背後から抱きかかえる形になって、手が何やら柔らかい所に当たっている。
―おお、柔らけえ・・・
「―すまん、考え事をしていた。怪我はないか?」
少し危なかったので詫びを入れることにする。
「え、ええ・・・。」
目をぱちくりさせるラズリー。
「ラズリー、次の合同ダンジョン探索には参加するのか?」
そのまま手に柔らかいモノを感じながら、俺はラズリーに聞く。
「う、うん・・・。」
「よし、では俺も参加することにしよう。」
やはりラズリーも参加するつもりらしい。
俺はそのままゆっくりと彼女を起き上がらせ、非常に名残惜しいが、柔らかい部分に当たっていた手を離す。
ラズリーの方を見ると、顔が真っ赤である。
「―ではな。」
そう言って、柔らかいモノにしっかり触れていたことを話題には出さず、その場を急いで離れることにする。
「・・・なに、あれ?」
セフィリアのそんな呟きが聞こえてきたのを背中で聞いたが、振り向きはしない。ラッキースケベをしてしまったことに気づかせてはならないのである。
「・・・えっち。」
ラズリーの小さな呟きが聞こえてきたが、気にしないことが重要だ!
俺は冷や汗をかきながら、速足で離れに戻って来た。
「ふう・・・。」
ぶっちゃけ焦った。とても焦った。それくらい触り心地が良かったのである。
―さあ、気を取り直して
「看板か。」
もちろん、普通の店に看板が売られていることは考えにくい。が、俺はそんな妙な物でも販売しているような便利な店を知っている。
「だが、販売はしていないのであれば、取り寄せてもらうことになるか。」
さすがに、あの婆さんに商品の取り寄せを依頼する場合、時間がかかるだろう。無ければ無いで、仕方がない。ぴったりとエミリーとラズリーに俺が付いてやればよいのだ。
「次の休みの日にでも金物屋に行ってみるか。」
ちなみに、合同ダンジョン探索は来週の予定である。ダンジョン探索に必要な物は魔法学院が準備するが、俺の方でも他に準備をしていた方がよいだろう。
―他に必要なものは
「ポーションと、蛍石だな。それに、水筒に携帯食か。」
少なくともいつものダンジョンに持って行くものは、今回も準備しておいた方が良さそうだ。
―それにしても
「やはり、おっぱいはとても良いな・・・。」
ラッキースケベに感謝である。




