20話
それから来た道を通って、ダンジョンを戻ることにする。
おそらく片道およそ、二時間程度の距離である。どうやら、このダンジョンを通り抜けることで、山体をほとんど最短距離で山越えをすることができるようだった。
滝つぼを見るが、やはりあの蛙はいない。おそらく、ボスモンスターに相当する魔物だったのだろう。魔眼のおかげで、姿が予め見えていたから簡単に対処することができた。しかしいるのが分からなければ、咄嗟にあれに対処するのは難しかったかもしれない。
俺は滝つぼを見る。
―もしかすると、あの滝つぼの中にも何かあるのだろうか?
しかし、今のところ、水の中で満足に戦うことができるとは言い難い。そんな状況でダンジョンの水の中に潜ることはやめておいた方がよういだろう。
滝つぼから、ちょうど来た道を振り返ると、果たしてやはり滝つぼの裏側にも同じように岩壁で塞がれているように見える。
この場所は今のところ、魔法王国エルドリアでは、俺以外の他の誰かが知っているということもないだろうということは、すぐに想像できた。
―だが
「果たして、自然にこのような仕掛けができるものなのだろうか?」
俺には、誰かが意図的にこのような仕掛けを施したようにしか見えなかった。
もっとも、人為的に仕掛けをするとして、何のためにこのようなことをわざわざする必要があるのかについてはさっぱり分からない。
ところで、ダンジョンのこちらの道は基本的にジメジメしているが、ここの豊富な水が影響していそうである。
「カタツムリがうようよいるのも分かる気がするな。」
とりあえず、正式名称を何というかは知らないが、ジャイアントスネイルとでも名付けることにしよう。
俺はどんどん来た道を戻って行く。
「―雷切」
俺は数秒のうちに短剣を作り、それを投擲する!
すると、かなりのスピードで短剣が飛んでいき、ジャイアントスネイルに突き刺さる!
来た時に比べて、投擲のスピードが上昇しているように思える。また短剣を作るスピードも上昇している気がする。
「・・・レベルアップしたのかもしれないな。」
来た道を戻る際にも、ジャイアントスネイルはたくさんいたが、ウルフは一匹もいなかった。もしかすると、この場所から移動したのかもしれない。
―あるいは、もう一方の分かれ道の方に行ったか
このダンジョンには、もう一方の分かれ道が存在する。だが、そちらはどうやら地下に続くような道をしていたので、あまり深く探索はしていないのだ。
こちらはジャイアントスネイルさえ片付けてしまえば、後は平たんで攻略のしやすい道だったが、もう一方の道が同じような構造をしている保障はない。
そのため、もう一方の道を進むのであれば、初めてこちらの道に来たときと同じように、慎重に少しずつ歩を進めていく必要があるだろう。
「―それにしても、この道はエルドリアの外に行くのにはもってこいだな。」
万が一、エルドリアから追われるようなことがあれば、この道を通れば、エルドリアの外に逃げることができる。
ふとそんなことを考えて、俺は首を横に振る。
―馬鹿馬鹿しい
そんなイベントは原作でもないし、俺程度の存在をわざわざ追う理由がないな。
そうして、道を駆けていくと、すぐにダンジョンの入り口まで戻って来た。
――日の光が眩しい
朝早く出発したおかげか、まだ日が傾くには早い時間であり、日の光が当たりに差し込んでいた。
「帰ったら剣の訓練をしないとなあ。」
エミリーには完敗だったし、ルディにもまともに剣で勝ったとは言い難い。
ルディはズルしたんじゃないのか、と主張したいようだった。
確かに、剣の勝負であるにも拘わらず、チョップによって気絶させたので、ルディの言い分はよく分かる。
「だが、俺程度を相手に本気でいくと言うルディも、やはりまだまだだな。」
俺は人知れず苦笑するのだった。
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