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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
3部 見えるもの、見えざるもの 8章 異界探訪

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18話

そんなことがあって、その後すぐの休日のこと。俺は再び一人、ダンジョンまで来ていた。

剣はまだまだ訓練が足りていないので、ダンジョンに持ってくることはしていない。


道中、巨大なカタツムリに何度か遭遇したが、既に簡単に片づけることができるので、容易に滝のエリアに辿り着くことができた。今回は、前回倒した巨大な蛙は出てこなかった。


―いわゆる中ボスの一種だったのだろうか?


目指すは滝の裏側。俺は水に濡れながら、何とか滝の裏側に行く。


その裏側の一本道(いっぽんみち)を進んでいき、洞穴のような場所から出ると、目の前には水の流れる渓谷が広がっていた。


「――こんな場所が・・・!」



そのとき、ペタ、ペタという足音が聞こえてきた。


―あれは、見たことがあるな?

確か、イシュゼルと同行した際にサハギンと言われていたものだろう。あれも魔物の一種のようだ。


「あのときはイシュゼルが一人で倒していたが、俺もできるはずだ・・・!」

俺は雷切を発動させる!


―だが、本当にあれはサハギンか・・・?何か違う気もする・・・


俺が躊躇していると、


「―誰かいるだべ?」

サハギンが喋った。


―え?

危うく雷切を投擲するところだった!


よく見ると、以前のサハギンよりももっと人間っぽい恰好をしている。あれは何だ?


「・・・すまん、魔物と勘違いしていたようだ。」

俺は物陰から姿を現す。


「おめえ、もしかして攻撃しようとしたか?」


「ああ。以前見た、サハギンという魔物にそっくりだったからな。」

俺が素直にそう言うと、


あちゃあ、という顔をしたそいつは、


「たまにいるんだべ、サハギンと間違うやつが。だからこうやって見回りをしているんだべが、危うくオラが襲われるところだったとは!」

ぶるぶると身震いをする。


「俺はイシュバーンという。お前は?」


「オラはマーマンのゴンズという。マーマンは始めて見るか?」


「ああ。」

いわゆる亜人種というやつだろう。原作では、他に、エルフやフェアリーといった亜人種も、出番はそれほどないが、存在するのだ。


「なら、覚えておいてくんな。マーマンはサハギンとよく似てるンだべが、あんな魚の頭はしていないんだべ。水かきのある手足くらいか?胴体もあんな魚の形はしていないんだべさ。」

ゴンズはマーマンの特徴を言う。


「マーメイドとは異なるのか?」

マーメイドがこの世界にいるのかは知らないが、もしかするといるかもしれない。そう思って俺はゴンズに聞いてみる。


「アイツらは海に存在するンだべさ。それにさ、えらく美しいが、それに惑わされちゃいけねえゾ。歌声を使って船を沈没させるわ、好みの男は取って食うらすいんだべさ。」

ゴンズはひどく物騒なことを言う。


「そいつはおっかねえな・・・。」

素直にそう思う。


「その点、オラたちは基本、無害だべ。だが、いかんせん、サハギンと間違うやつが多いんだべな。とても迷惑しているンダ。温厚なことで有名なオラたちも、襲われると戦かわなくちゃいげねえ。」


温厚なことで有名どころか、俺はその存在も知らなかったが。


「ちなみに、何故ダンジョンの中で暮らしているんだ?」

少し気になっていたことを聞いてみることにした。


「ダンジョンの中だあ?お前さん、ここを一体どこだと思っている?」

ゴンズが妙なことを言う。確かにここはダンジョンの中のはずである。


「どこって・・・。何というかは知らないが、初心者用のダンジョンの中のはずだ。」


「おいおい、そいつは初耳だべさ?ここはアルディン渓谷だべ?」


―どこだそれは?


「どこだそれは?」

俺はそのままゴンズに聞いてみることにする。


「どこって、セレオス山脈の麓だべ?」

セレオス山脈とは、ちょうど俺たちの住まう魔法王国エルドリアの南に(そび)える厳しい山脈である。山頂にはドラゴンが住まうという話である。


「もしかして、俺はその山をいつの間にか越えていたのか・・・。」


「お前さん、どこから来たべ?」

ゴンズが俺に聞いて来る。


「魔法王国エルドリアだ。」

俺は素直に答える。


「おお・・・。この山を越えて来たのか・・・。そいつは難儀だったろう。」

そう言って、ゴンズは俺の背後を示す。


そこには天を突くような巨大な山々が横たわっていたのだった。

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