6話
「明君はここにある段ボールをトラックの前まで運んでくれるかな?」
俺は夕日から仕事に関する具体的な指示を受ける。
「ああ、了解だ。」
そう言って俺は段ボールを二つ重ねて持って、軽トラの前まで運んでいく。
「・・・無理しなくても良いのよ?」
俺の様子を見た夕日が声をかけてくる。
「問題ない。この程度は一度に運ぶことができる量だ。」
やはり筋力が上昇しているのか、中に品物が詰められてそれなりに重さのある段ボールのはずだが、二つ程度は難なく運ぶことができる。
実のところ、まだ後数個程度は同時に持つことができそうだったが、中身が割れ物であるので、一度に二つだけ持つようにしている。
「そう・・・。」
夕日はそんな俺の様子を少し心配するように見る。
「おお、お前さん、力持ちだなあ?」
トラックの前で待っていた中年を少し過ぎたくらいの男性に声をかけられる。おそらくサトルの父親だろう。
「中身はそれほどの重さでもないさ。」
俺は特に問題ないことだとトラックの運転手に答える。
「覚、荷台に積み込むのを手伝え。」
その男性はサトルに声をかける。
「分かった。」
そう言うと、二つの段ボールのうち、一つをサトルが持とうとする。
特に手伝いが必要というわけではなかったが、ここで断ると何となく印象を悪くしそうだったので、サトルに段ボールを一つ渡す。
「・・・おもっ!」
思わずサトルが声を上げるが、荷台に積み込むことはできそうだった。
俺もサトルに続いて段ボールを荷台に積み込み、再びバックヤードに段ボールを取りに戻る。そうして、今度も二つ同時に段ボールを重ねて持ち、軽トラの方へ運んでいく。
夕日はというと、ほうきと塵取りを持っており、どうやらバックヤードの掃除をしているようだった。
そうして軽トラとバックヤードの往復を何回か行った後、トラックへの積込作業が完了したのだった。
「それじゃあ、俺たちは先にこいつを商店街の方へ回しておくからよ。」
そう言うと、荷台に紐をかけた後、サトルの父親は軽トラをぽんっと叩く。
「ええ。よろしくお願いします。」
夕日はサトルの父親に礼を言う。
その後、軽トラはブロロッと道を走って行った。
「それじゃあ、私たちも行きましょうか?」
夕日は俺に声をかけてくる。掃除の方は後で続きをやるのかもしれない。
「そうだな。」
俺は短く返事をした。
「・・・そういえば、前に住んでいた街の近くには不思議な金物屋があったんだ。」
俺は歩きながら、ふと金物屋のことを夕日に伝えてみたくなった。ここの住人にならば、あの金物屋について伝えたとしても問題ないだろう。
「金物屋?」
夕日は金物屋に少し興味があるのか、こちらを見る。
「ああ、金物屋だ。妙な婆さんがそこの店主をやっていてな、店主も妙ならそこに置いてある商品も妙なものばかりなんだ。」
俺は歩きながら、話を続ける。
「そこの商品は、俺の住んでいる辺りにはない商品ばかりなんだが、その商品一つ一つの品質は確かなものなんだ。そんな金物屋さ。」
「金物屋・・・。何だか私も明君の言うような店をどこかで見た気がしたわ・・・?どこだったかしら?」
うーんと考えるようにする夕日。
最近はその数を減らしていると聞くが、金物屋そのものはこちらでは珍しいものでもない。おそらく夕日はどこかで似たような店を見たのだろう。
「ま、金物屋そのものは珍しいものでもないからな。」
俺は夕日に言う。
そんなことを話しながら歩いていると、
「そうそう、この辺りに鎧を祀っている神社があるのよ?」
今度は夕日がそんなことを言う。
「鎧を祀っている?」
俺は夕日に聞き返す。
「ええ。何でも、凄く有名な武将の鎧が祀られているらしいの。ちょっとだけ見ていこうか?」
夕日はそんな提案をする。
―鎧が祀られている??
「ああ、ちょっとばかり見てみたい。」
俺は夕日の言う鎧神社に興味が出て来た。




