表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
3部 見えるもの、見えざるもの 8章 異界探訪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/208

1話

そんなことがあって、少し経った翌週の休日の朝。

俺はいつもの上下に着替え、いつものルーティンを終え、飯を食い終え、森の様子でも久しぶりに見に行こうかと思い、玄関から出たちょうどそのとき。


玄関を開けたときは何も異常はなかった。いつも離れから見る外のちょっとした庭が見える。振り返り、扉の鍵をかけ、さあ行こうかと振り返ったそのとき。


――俺は見知らぬ場所にいた


いや、厳密には見知らぬ場所ではない。そこは非常に見慣れた大地のどこかだろう。


都会の大小様々な看板、目の前を横切る車道には車が行き交う。


―チリンチリン


「おわ!」

思わず声が出てしまった。俺の目の前を自転車がそれなりのスピードで去っていく。


幸い、俺の格好はいつもの上下であり、むしろこちらの世界では目立たない。ありふれた格好をしている。


「―それでね、・・・っていうことがあったんだよ~」

携帯電話で話しながら目の前を通り過ぎていく女性。


上をふと見れば、いつもの透き通るような青色ではなく、それ以上に嫌になるほど見慣れた灰色がかった青空が見える。


―まさか。そんなことがあって良いものか


だが、そこで話している人の声は、いつも聞く言葉ではないが理解することができるし、何なら話すこともできるだろう。看板の文字だって読めるし、向こうにある妙な店がコンビニであることも分かる。


歩道の真ん中で立ち止まっている俺を、少し年配の男性が怪しむような目で見ながら無言で通り過ぎていく。

見慣れた景色に聞き慣れた言葉。


―間違いない・・・。ここは、日本だ

俺は呆然とするより他ない。


「・・・こんな所で何をしろというんだ。」

俺の独り言は雑踏にかき消されていく。


ここが日本であることは分かるが、日本のどこかはよく分からない。今分かることといえば、この場所がそれなりには都会であるということぐらいである。


―ありえない!!!

俺は叫びたくなる気持ちをただひたすらにこらえる。


少し離れたショーウィンドウに反射する自分自身を見れば、その姿はイシュバーンから変わっていない。


「・・・元の世界に帰る方法を探さなくては。」

そう呟いて、その言葉がいかに馬鹿馬鹿しいことか気が付く。


元の世界に戻って来たのだ。


本来なら喜ばしいことなのだろうが、戸惑うより他ない。こんな姿でこんな場所に放り出されたところで、どうしろというのか。


俺はポケットの中を探してみるが、都合よく金が入っているようなことはない。仮に異世界の方に戻れないとすれば、金が必要だ。この国で暮らしていくには何よりも金が必要であることは俺自身が一番よく分かっている。


俺自身は魔力を持っているが、この世界で魔力など持っていたとしても宝の持ち腐れである。ひょっとして大道芸で使える程度のものだろう。


「この状況は非常にマズイのでは・・・。」


こんな道の真ん中で突っ立っていたところで仕方がないので、とりあえず俺はこの場所から離れることにする。


あてもなく歩いていると、歩道から少し横に入る道の脇におしゃれな店があることに気が付いた。


そこには西洋風の大小様々な商品が棚に並べられていた。それらはちょうど異世界の方でよく目にしたいくつかの調度品によく似ていた。


看板を見ると、『アンティークショップ・風鈴』と書かれている。

他に行く宛もないので、俺はその店に入ってみることにする。


店のカウンターには誰もいない。

その店にある大きな置時計を見ると、現在の時刻はどうやら午前10時41分のようだ。


俺は棚に並べられたいくつかの商品を見る。もしかすると、異世界で見たものと同じものがそこにあるかもしれないと思ったからだ。


「―あら?お客さん?」

すると、店の奥から女性が出てきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ