14話
届いた料理を食べながら会話は続く。
「ボクの実家はね、貴族でもあるけれど、商家でもあるんだ。商家が成り上がったって言った方がいいかも?」
「なるほどね。それじゃ男爵なの?」
ルディがレティに質問する。
俺は貴族について全く詳しくないが、きっと男爵であれば商家から成り上がることもできるのだろう。
「ううん、都市国家郡は厳密な貴族階級というのはあまりないんだけれど、家名があるかどうかで貴族かどうかが分かるんだ。うちはフラム家という家名を頂いているので、貴族だね。基本的に貴族の中では序列はあまりないんだけれど、その家の軍事力や財力なんかで序列がある感じだね。影響力ってやつかな?」
―なるほど。むしろエルドリアより分かりやすいのかもしれない
エルドリアでは貴族の序列とその影響力の序列は、相関関係はあるにせよ、例えば伯爵家より領地がデカくて儲かっている子爵家なんていうのも存在する。その場合、貴族としての位は伯爵家の方が上だが、影響力は子爵家の方が上という分かりにくいこともある。
他方、都市国家郡では、基本的に貴族の軍事力や財力といった、影響力によって大体の貴族の位分けが決まるのだろう。家単位での実力主義と言った方が正しいかもしれない。
「へえ。変わった国なんだね?」
ルディからすると変わった国に見えるらしい。俺からすると、エルドリアの方がどちらかと言えばややこしい気がするが。
「そんな貴族のお嬢様が何故こんな遠くまで来ることになったんだ?」
今度は俺がレティに訊ねる。
「うーん、理由はいくつかあるけど、やっぱり一番大きな理由は何と言っても魔法だね!どうもボクには魔法の才能があったみたいで、留学してはどうかと実家から推薦されたんだよ。」
魔法学院アルトリウスは留学生にも門戸を開いている。ただし、エルドリアの貴族の場合は、侯爵家以上の実家にはコネでの入学が可能だが、留学生にはかなりのレベルの才能が求められているはずだ。
俺などは実家のヘイム家があってこそだったが、レティはかなり厳しい試験を突破して入学しているのだろう。
と、そこで俺はルディがどうやってここに入学してきたのが気になった。
「ルディ、お前はどうやってここに入学できたんだ?」
俺はルディに聞いてみることにする。
「どうやってって、そりゃあ入学試験を突破してに決まってるじゃん。」
ルディが口を尖らせる。
「アルトリウスの入学試験はかなり難しいはずだが?」
そうだ。少なくともイシュバーンと同じ程度の魔法の才能では、ルディが入学することは困難なはずだ。
「入学試験はかなりできたんだよなあ。魔法の実技もストーンバレットを上手く使うことができたし、試験の方も自分としてはかなりできたと思う。イシュバーンの方はどうなんだよ?」
確かに、以前の世界でもかなり稀な存在ではあるが、難関大学に逆転合格するといったやつがいた。おそらくルディはそのパターンだったのだろう。
「俺か?俺は侯爵家だからな。」
「ああ、確かに。」
俺の一言にルディは納得がいったようだ。
「イシュバーンは実家に感謝しなくちゃね!」
レティも察したのか、そんなことを言う。
「ちなみに、俺と違って弟の方はそれなりに魔法の才能があるみたいだぞ?」
俺もイシュトについては詳しくは知らないが、今度のダンジョン合同探索に推薦される程の実力だ。
「知ってるぞ。ヘイム家のイシュト様と言えば有名だぜ?ヘイム家のイシュバーンもある意味で有名だけどな・・・。」
「おい、ある意味でってどういう意味だよ、ルディ。」
「そりゃあ、ねえ。レティ。」
と言ってルディはレティの方を見る。
「ボ、ボクに言われてもね・・・!」
それに対してレティは慌てたように自分の前で手をぶんぶんと振る。
だが、その様子からレティは、ルディが何を意味しているのかを理解している様子だった。




