13話
午前中が試験で、その後の講義はなかった。そこで、王都の商業区に剣を見に行くのと合わせて、飯もどこかの店で食べることにした。
「なあ、ルディ、お前、エミリーとは上手くいっているのか?」
俺は気になっていたことをルディに聞くことにする。
「ああ・・・。大丈夫さ!問題ない!!」
多少強がりのように見える。
「実際はどうなんだ?」
俺はもう少し聞いてみることにする。
「そうだな・・・。ここだけの話、エミリーは多分、俺よりも剣も魔法もできると思うんだ。」
―まあ、それはそうだろうな
実際、ルディがメキメキと力を付けて行くのはエミリーをハーヴェルに取られるのが原因だ。
今そのイベントは起きておらず、いわばルディ覚醒前であるので、現段階ではエミリーの方がかなり強い。
だが、俺は知っている。
エミリーを取られてからというもの、ルディは剣の実力ではエミリーを凌駕する程に成長するということを。
―今のうちからルディが剣を鍛えておくと、仮にイベントと同じことが起きたとしてもエミリーをハーヴェルに取られなくて済むかもしれないな
仮にルディが立ち向かうことがあれば、俺もルディをサポートする必要があるかもしれない。そのときは、ルディを格好よく目立たせる必要があるだろうか?
「―大丈夫さ、ルディ。きっとお前は強くなれるぜ。」
「イシュバーン・・・。」
涙ぐむルディ。
そんなことを話していると、飯屋についた。ちょうどメニューが店の前に表示されている。
「・・・どれにすっかなあ?」
ルディがさっそくメニューの表示されている看板をじっと見つめる。
「俺はこの魚の煮つけにするわ。」
何の魚かは分からないが、普段俺は鳥のぱさぱさした肉を食べており、たまには魚が食べてみたくなった。
「魚かあ。うーん・・・」
ルディはまだ迷っているようだ。
すると
「―あれれ?どこかで見た顔だナア?」
どこかで聞いたような声が後ろから聞こえてきた。俺たちが振り返ると、薄い赤色の髪が見えた。
「よお、レティじゃあないか。こんな所で何をしてんだ?」
俺はレティに声をかける。
「ボク?ボクはお腹すいたからこの店にでも入ろうかなってところ!」
元気よくレティが答える。
「じゃあ、レティも一緒に飯を食うか?問題ないよな、ルディ。」
俺はレティを誘うことにする。
「ああ、問題ないぜ?」
ルディもそれに賛成のようだ。
「そ?じゃあボクもご一緒しちゃおっと!」
そう言うと、レティは店の中に入っていく。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
店員が俺たちを見て人数を確認する。
見れば三名と分かるが、後から合流する者がいたりするときがあるので、念のため人数を確認するのだろう。
「三名で!」
レティが元気よく答える。
「―かしこまりました。それではこちらのテーブル席へどうぞ。」
俺たち三名はテーブル席に案内される。
「そういや、レティはよくこの商業区で見かけることが多いな?」
俺はレティに聞くことにする。
「そうだね、ボクここの商業区に住んでいるからね!」
「どこかの貴族の娘じゃないの?」
ルディがレティに訊ねる。
「そうそう!って言ってもあんまり貴族らしくないかも?実家はオルビス都市国家群の港街セルペタだよ~」
―ここに来て初めて聞く情報が出て来た。
オルビス都市国家郡というのも原作では聞かないし、港街セルペタというのも初めて聞く。
「ルディ、オルビス都市国家群について何か知っているか?」
ルディが何か知っているかどうか確認する。
「いいや、イシュバーン、俺もあまり詳しいことは分からない。けど、エルドリアからはかなり遠い国なんじゃないか?」
ルディも詳しくは知らないらしい。
「そそ、オルビスに行くには船が必要だね!」
レティが胸を張って答える。
「そんなところから遠路はるばるよく来たものだ。」
素直にそう思う。
「えらいでしょ!」
そう言うと、レティはにっこりと笑う。
「ねえ、レティ、そこはどんな街なんだ?」
ルディが、レティに詳しい街の様子を聞くようだ。
「そうだねえ、港街だからね、海風がとても気持ちいいよ!それにここよりもずっと暖かいかも?」
よく考えてみれば、俺はレティのことをほとんど知らない。
しかし、なんとなくではあるが、そのレティの言葉で街の様子を想像することができるのだった。




