11話
魔法学院対抗のランクマッチから帰ってきてから、試験まではあっという間だった。
俺はなんとか必要最低限の勉強を行うことができた。
「―それでは、筆を置きなさい。」
試験管の合図が講義室に響く。
「・・・あー。」
何とか学習が間に合ったのか、進級に必要な点数は取れていそうだ。
原作ではそのうち魔法王国エルドリアそのものが魔族の侵攻に遭うので、勉強どころの騒ぎではなくなるが、そのイベントが生じるかどうかも今の世界では怪しい。そのため、今後も進級するべく勉強をする必要があるのだ。
ぐてっとしていると、ルディがやって来た。
「イシュバーン、どうだった?」
どうだったとは、無論、試験のことだろう。
「―まあ、何とかなりそうではあるな。ルディは?」
「あー、そうだな・・・どうにかこうにかといった感じだ。」
多分、俺と似たような感じか。
ところで、魔法学院アルトリウスでは試験結果の上位陣はクラスルームに張り出される。原作ではアウグスタやアイリスが常連だったが、今回はラズリーやセフィリアも健在なので、原作とは順位も変動するかもしれない。
「イシュバーンは試験終わったら何をするんだ?」
「さあな。これといってやることはないが。」
本当は学院が休みの日には、定期的にダンジョンに潜ろうと考えている。
「俺はエミリーの通う剣の訓練場に俺も行ってみようと思うんだ。」
ルディがそんなことを言う。
「・・・剣か。いいんじゃあないか?」
確かに原作ではルディは剣を成長させてくるが、このようなイベントは存在しなかったはずだ。俺も、うかうかしてはいられない。
「イシュバーンも一緒にどうだ?」
どうやらこれがルディの要件らしい。
―出来れば剣を習いに行きたいが、ダンジョンにも潜りたい。
俺にはセバスという剣の指南役がいるにはいるので、今回はダンジョンに潜ることを優先させた方が良いだろう。
「ルディ、俺はもう少し剣の基礎を固めてから訓練場に向かうことにするぜ。」
とりあえず適当に理由を付けて俺はルディの誘いを断ることにする。
「そっかあ。それは残念だ・・・。」
ルディは本当に残念そうに言う。
もっとも、俺が剣の基礎を固めてからというのも偽りではないつもりだ。まだ素振りを始めた段階であるので、セバス以外を相手にするにはもう少し上達してからの方がよいだろうというのが俺の本音でもある。
「とにかく、明日の魔法陣の科目の試験が終われば、しばらく勉強からは解放されるな。」
朝のルーティンは欠かさず行っているものの、ここ最近はまともに鍛錬もできていない。俺は早く試験を終わらせて、鍛錬に取り掛かりたかった。
「魔法陣かあ。俺の苦手な科目だあ。」
ルディは魔法陣を作ることを苦手にしているようだった。
「過去問を見る限り、大問数個程度だからな。詠唱魔法の科目みたいに、使用することのできない属性の魔法をいくつも暗記する必要はないと思うが―、どうだろうな。」
先ほどの試験は詠唱魔法の科目だったが、自分の属性以外の詠唱を覚えて、試験用紙に書かれた詠唱がそれぞれ正しいかどうか確認するというものだった。
試験範囲が決まっていて、予め覚えなければならない詠唱が提示されていた。ただし、その量が多く、大変だったのだ。
それに比べて、明日の魔法陣の科目は過去問通りであれば、大問数個の論述であるので、多少は気が楽な科目ではあった。




