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13話

「天に住まう神イシュヴァルよ、その名において我は命じる。唸れ!サンダーボルト!」

バチバチ!


合同演習でだが、一応真面目に出席し、魔法を唱えることにする。


ちなみにこのサンダーボルトはそれなりに練習しているが、毎回同じ出力で安定する。詠唱をすれば勝手に魔法が発動する優れものだが、応用範囲は小さい。


もっと俺の使用するジンライは、距離・方向・発動タイミングをマニュアルでやらなければならないが、その分、「使いこなすことができれば」という条件付きで、かなり自由度が大きい。


俺の性格からして、どちらがよいかといえば、それは言うまでもなく、ジンライだった。


とはいえ、この世にジンライなどという魔法が存在するわけがなく、これを皆の前で披露するわけにはいかない。また、未だ完全に制御できるとは言い難い状況でもある。



俺が魔法を唱えると、周囲がざわめく。


ちなみに、それは、俺が唱える魔法が凄いとか、そういう理由では決してなく、こいつは本当に魔法を使うことができたのか、といった意味合いのざわめきであることは明らかである。


「ふっ。」

とりあえずカッコつけてみる。


「イシュバーン、それカッコつけるところじゃないわよ。」


「なんだ、プリムか。」


「何が、『なんだ、プリムか、』よ。失礼しちゃうわ。」


「なんだよ、何か用か?」


「あなたにしては珍しく、魔法の練習してるじゃない。」


「誰に言っている?俺はいつだってとても真面目だ。」


「・・・とても真面目な人間は、魔法を放つだけで驚かれないわよ。」


「まったく、何が言いたいんだ?婚約者に愛想でも尽かされたか?」


「あなたと一緒にしないで。」


「へえへえ。」


「まったく、嫌味な奴ね。」


「―プリム、そんな奴と一緒にいないで。こっちで練習しよう?」


「アイリス、一応彼、あなたの婚約者よ?」


「いいのよ。あんなやつ。構うだけ時間の無駄よ。」


プリムとアイリスはさっさとどこかへ行ってしまった。



―そういえば、ルディの姿を見ていないな?


「お、いたいた。何やってんだ?」

見ると、ルディは土の塊をこねて何かを作っているようだった。はぁん、あれはゴーレムだな?



やはり、周囲を見ると、みなそれぞれ様々な魔法を使うことができるようだ。


見てみれば、セフィリアとラズリーもそれぞれ多彩な魔法を使用することができている。特に、ラズリーの周囲には綺麗な魔法陣が展開されており、それがとても美しい。


セフィリアは光属性、ラズリーは氷属性という特殊な属性を持っている。


そしてそれは、遠目から見ても、その華やかさが伝わってくるものだった。


珍しい雷属性とはいえ、サンダーボルトくらいしかまともに扱うことができる魔法がないというのは、かなり見劣りがする。


ルディですら真剣に土属性の目玉ともいえるゴーレム作成の魔法に取り組んでいるのだ。


―俺は、一人前に焦っているのか。


だが、それを俺は恥ずべき事だとは思わない。

この焦りを活かしてでも、何としても「ジンライ」をものにしてやる。そう改めて決意するのだった。




そして、その日の夜も俺は森に入る。


移動地点を決め、目を閉じ、精神を集中する。


―感覚が研ぎ澄まされていく。


「ジンライ」

ビュンッ


目を開けると、距離は違っていたが、今回は実際に移動した方向が、移動したい方向とおよそ一致(いっち)していた。

しかも、いつの間にか態勢が崩れることが少なくなった気がする。


この練習方法はやはり正しい。何かコツを掴めそうな気がする。


他の魔法学院の生徒とは異なり、俺には師匠となる魔法使いがいない。自分の魔法の向上は自分でやらねばならない。



今度は目を開けた状態で試してみよう。


「―ジンライ」

すると、一瞬バリバリッと電気がほとばしり、

―バシュッ


「おっと。」

目標地点を少し通り過ぎたことが感覚的に分かった。移動方向はほとんど正確である。


今までは距離も方向も移動してみるまで分からなかったが、今のジンライは、距離と方向を感覚で理解することができたのだ!


「ふぅー。」

大きく息を吐き、マナポーションを飲む。


あと少しだ。この鍛錬の方法は正しい。


「見てろよ、ハーヴェル。」


そう言って俺はしばらくの間、鍛錬を行うのだった。

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