15話
翌日、朝から馬車に乗り、昼すぎには商業都市ゼリウスに到着した。
「おおお、ここがゼリウスか。」
ルディがそんなことを言う。
「結局昨日は勉強しなかったじゃあないか。何しに来たんだ、ルディ?」
「うるせえやい!それを言ったらイシュバーンもだろ。」
「俺には護衛という名目がある。」
本当に名目にすぎないだろうが。
「ところでよ、イシュバーン。今日の宿はどうなるんだ?」
確か、出場選手は付き添いが何人か認められていて、宿泊部屋も数部屋予約できるといった仕組みのはずだ。だが、その部屋は随分前に申請が必要だったようで、正直ルディの分の部屋が用意されているとは言い難い。
「―おそらく、今回はこいつの出番だな。」
そう言って俺は予め準備しておいた寝袋を取り出す。これはルディのために準備していたものだ。
「まじかよ・・・。」
「おいおい、ルディ。寝袋があるだけましだと思えよ?」
「――何をやっているのですか、お二人とも。お嬢様がお待ちです。」
すると、先に馬車から降りていたソフィアがこちらに来て、そんなことを言う。
「そうだったな。さっさと行こうぜ、ルディ。」
「あ、ああ。」
どうもルディはラズリーを目の前にすると緊張してしまうようだった。
―昨日の飯は別のテーブルで、逆に良かったのかもな
そうしてラズリーが待っている場所へ行くと、
「―遅いわよ。」
お小言を言われてしまった。
ちなみに、ラズリーの付き添いは俺と、ソフィアを含む使用人三名。ルディは俺の付き添いというよく分からない構成だ。
ラズリーがもっとルディを気にするかと思ったが、ソフィアによれば、案外ラズリーはそういったことはあまり気にしないらしい。
この後、アルトリウス魔法学院のメンバーと合流する予定になっている。
ちなみに、原作ではハーヴェルの付き添いはアイリスとプリムである。
レティはお供に猫を持っているが、こいつは実は化け猫?か何かで、より大型に変身できる。というより、化け猫が一般の猫に擬態しているというのが正しいのか、とにかくそういったやつだ。
そして、アウグスタは使用人を多数引き連れている。
レティのお供の猫はかなり強力だが、こいつが健在である限り、レティの身の安全はある程度確保される。面倒ごとはこいつが殺されてから生じるのだ。とはいえ、そのイベントは随分と先の話だ。
―だが、原作と違うところが随分あることに注意しなければならないだろう。
なんせ、ラズリーが生きていて、それにイシュバーンとルディまで金魚のフンのようにくっついているのだ。
ラズリーを先頭に俺たちがぞろぞろと続く。俺は寝袋を背負い、ルディはちょっとへっぴり腰だ。
「―ああ、もう!もうちょっとキビキビ歩けないの!?」
ラズリーがイライラしてそんなことを言ってきた。
「そんなこと言ったってよう・・・。なあ、イシュバーン。」
ルディが何故か俺の方を見る。
「おい、ルディ。これはお前が持つべきだろう?―ほらよ。」
よくよく考えてみれば、何故に、俺がルディの分の荷物を持たなければならんのか。
ルディに寝袋を押し付けることにする。
ちなみに、これは魔法学院のイベントであるので、ラズリーは制服だが、俺はラズリーの付き添いで、ルディは俺の付き添い?なので、俺とルディは私服である。俺の服装はいつものシャツとズボン、ルディは一張羅を着ている。
私服で来て良いかどうかは、念のため予めラズリーに確認していた。
果たして、俺たちが到着すると、レティが見覚えのある猫を持って、そしてハーヴェルがアイリスとプリムを引き連れて待ち合わせ場所で待っていた。アウグスタの姿だけが見当たらない。
「やあ、ラズリー。・・・と、」
ラズリーに穏やかに声をかけ、そしてしかめっ面になって俺とルディを見るのは、ハーヴェルだった。




