10話
「ルディ、そもそもどの科目で試験があるか覚えているか?」
俺はルディに聞くことにする。
「―イシュバーン、俺はてっきりお前がそれを知っていると思って・・・!」
愕然とするルディ。
「―俺が知るわけないだろう?」
「お、俺は一体何のためにここに来たのだ。」
ルディは既に敗北者の顔である。
「ふっ。俺の勝ちだ、ルディ。」
「あほかーーーーー!!!!イシュバーン、どうしてお前はいつもいつもそんななんだ!!!」
ルディが激怒する!!!
実は、ルディは怒ると我を忘れるやつだ。それで猪突猛進にハーヴェルに挑んではハーヴェルに敗北をするというのが印象的だった。
「俺はいざとなればルディに聞けばなんとかなると思っていたからな。」
残酷な真実をルディに告げる。
「・・・」
ルディは口をパクパクさせる。
―まるで金魚のようだ
「―とまあ、冗談は置いておいてだ。いい話があるんだ、ルディよ。」
そう言って俺はニヤリと笑う。
「・・・これ以上何があるというんだ、イシュバーン。」
ルディの瞳から生気が消えている。
「ああ。今度、俺は理由あって、対外ランクマッチに同行することになった。そこでだ。ルディも付いて行ってよいか聞いてみようと思うんだ。」
「本当か!?」
ルディの瞳に生気が戻る。
「ラズリーは勉強ができると聞いている。かばんに本を詰め込んでランクマッチの間、勉強することにするぞ。」
「ああ!ああ!さすがはイシュバーン!!!」
ルディは涙を流す。
「―名付けて金魚のフン作戦だ!」
ここに俺たちの崇高なる作戦が始まったのだ。
「・・・だが何故ラズリー様なんだ?」
ルディがいつもの調子で俺に聞いてくる。
「ちょっとした勘違いがあってだな。ラズリーの護衛を引き受けることになったんだ。」
「―イシュバーンがラズリー様の護衛を・・・」
愕然とするルディ。
「どうだ?俺もそれなりにやるだろう?」
俺はニヤリと笑う。
「いや、ラズリー様がとても心配だ。」
ルディの反応はとてもそっけない。
「なんだ?おまえはラズリーの心配をするのか?少しぐらいは俺を崇めよ、称えよ!」
「―イシュバーンを崇めて称えるときが来るなら、それは世界の終末が訪れるときに他ならないと思う。」
「あながち間違いではないかもしれない。」
俺はうんうんと頷く。
「そこは俺の話を否定をしないのかよ・・・。」
ルディが呆れた顔をするのだった。
「というわけで、俺の家にわざわざ来たところで今ルディが得るものは何もないだろう。」
俺は明らかな事実をルディに示す。
「・・・そうだな。出直してこよう。ちゃんとラズリー様に言っておいてくれよ?」
「ああ。約束する。」
俺がそう言うと、ルディは帰っていった。
ルディが帰ってしばらくして、俺はメイドから夕食を受け取り、それを食べることにする。
―明日は公爵家を訪ねるとしよう
だが、俺のような者が突然訪問することはできるだろうか?
「ラズリーの護衛を頼まれているということを押せば何とかなるか・・・?」
そうでもしなければとてもではないがラズリーと会う事はできないかもしれない。
―ここまでルディにしてやるのも、妙な話ではあるが
だが、俺も一人でラズリーにくっついて勉強をするより、できればルディと二人してラズリーにくっついて勉強をする方が俺の負担は小さいはずだ。
・・・ラズリーがどんな顔をするのかはちょっと分からんけどな?
俺は飯を急いで食べて、鍛錬をすることにする。
最近は剣の練習もしているが、それを理由に鍛錬をサボるようなことはしたくはない。
「昼間に突きや蹴りの鍛錬を行ったので、夜は雷切の鍛錬をしようか?」
俺は鍛錬室に向かい、夜は雷切の鍛錬をすることにした。




