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サッカー部なのに筋トレしかしてません!  作者: やしゅまる


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8/18

第八話「反撃の狼煙」

後半開始。


0-1でリードを許したまま、朝日南高校サッカー部はピッチに戻ってきた。だが、彼らの目に迷いはなかった。


「読み切ったぞ。武蔵野学院は、3分30秒ごとにフォーメーションを切り替えている。理由は単純。全員の心拍数と体力管理に合わせて、ポジション負荷を分散しているからだ」


熊田の隣に立つのは、PC片手に戦況を分析する宮本、元将棋部部長。

彼の言葉に、部員たちは真剣な表情で頷いた。


「しかも、ローテーション直前の30秒間は、全体の布陣が一瞬だけ不安定になる。そこを突くんだ!」


「つまり……その“30秒間”を、筋肉でぶち抜くってことか!」


翼の目が光る。


試合再開。武蔵野学院は、変わらず精密機械のようにパスを回し、主導権を握る。

だが、朝日南は冷静だった。


「次の切り替えは……あと10秒!」


宮本がスタンドから叫ぶ。


「いまだ、いけぇえええッ!」


ドオオォン!


鉄之介がセンターサークル付近から全力スプリント。

対峙したCBを、合法的に体で押し込み、ボールを奪う。


「翼、前へ!」


翼がそのままドリブル。DFが慌てて寄るが、すでに形は崩れている。


「赤木、受けろッ!」


「まかせた!」


横パスを受けた赤木が、ダイレクトでゴール右隅に蹴り込む!


――ゴール!


1-1!


観客席がどよめく。武蔵野学院の選手たちが動揺しているのが分かる。


「まさか、ウチらのリズムを……読まれてる?」


その言葉を、壬生京一は無言でかみしめた。

想定外だった。筋肉戦術はただの奇策だと侮っていた――が、違う。


戦略+筋肉+冷静な“読み”=制御された暴力


それが、朝日南の新たな形だった。


──残り15分。


流れは完全に朝日南。鉄之介を基点にしながら、ボールを前へ運ぶ。

宮本が、また手を挙げた。


「次のタイミング、あと20秒!」


熊田がベンチから叫ぶ。


「フォーメーション“押し相撲”だァッ!」


「押し相撲!?」


全員が最前線へ押し出す陣形に切り替え、前線でパワープレイ。

まさかの“ハーフラインからのライン押し上げ”が功を奏し、ゴール前で混戦!


ボールがこぼれた先にいたのは、翼。


「いっけぇぇぇぇ!」


ゴォオオオオル!


2-1!逆転!


試合終了のホイッスルが鳴ると、朝日南ベンチは歓喜に包まれた。

だが、壬生は最後まで視線を逸らさなかった。


「……おもしれぇな、お前ら」


その目には、敗北の悔しさと、ライバルへの敬意があった。


帰りのバス。熊田がポツリと言った。


「次は、決勝だな」


赤木が笑った。


「さあ、“第3段階”は何が来るんだ、監督?」


熊田は、にやりと笑う。


「……“空中戦”だ」



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