第四話「強豪校に挑め!反則ギリギリ上等」
練習試合から一週間後。
朝日南高校サッカー部に、一本の電話が届いた。
「え? 国見東高校から練習試合の申し込み!?」
マネージャーの紗英が驚きの声を上げる。
国見東――県内屈指の名門校。昨年の県大会準優勝校だ。
「えっ、えっ、なんでそんなところがうちなんかと……?」
電話口の相手は苦笑していた。
『最近、おたくの“ラグビー式サッカー”が面白いって噂でしてね。うちの選手も、体当たり慣れしておこうかと』
つまり、対“異種格闘技”訓練。
だが熊田監督は違った。
「面白いじゃねえか。こっちも強豪の身体を借りて、筋肉の実戦試験ってやつをやらせてもらうぜ」
──数日後。
国見東の人工芝グラウンドに、朝日南の精鋭(筋肉)たちが現れた。
だが、相手チームを見て、部員たちは息をのむ。
「デカ……でも全員細マッチョ……!ムダな肉がひとつもない……」
「体格も走力も、こっちの1.5倍くらいありそうなんだけど……!」
国見東は単なる技術集団ではなかった。鍛え抜かれた“本物のアスリート”だ。
試合開始。
開始5分。
朝日南のDF陣が――吹き飛んだ。
「ぐっ……!」
「う、うそだろ、オレが当たり負け!?」
国見東のFWは、同じくらいの筋肉量を持ちながら、バネと技術がまるで違った。
あっという間に、2点を奪われる。
「まずい……これはラグビー式だけじゃ通用しない……!」
だが熊田は、まったく動じなかった。
「お前ら、忘れたのか?」
「え……?」
「ラグビーは“戦術”のスポーツだ。ぶつかるだけじゃ勝てねぇ。仲間と動いてこそ、真の強さが生まれるんだよ」
部員たちは顔を見合わせる。
「そうか……ただ筋肉で突っ込むんじゃなくて、フォローと連携……!」
「ラインで動けば、相手の進路を塞げる!」
「パス回しも、体幹でぶれなきゃ精度が上がる!」
後半開始。
朝日南の選手たちは、筋肉に“知恵”を宿し始めた。
3人で斜めにラインを組んで守備を固め、攻撃時はロングスローを起点にショートパスでつなぐ。
「おいおい……あれ、本当に朝日南か?」
国見東の監督が思わず呟く。
残り5分。朝日南が1点を返し、最後の攻撃。
翼がドリブルで突っ込む。だが相手DFが立ちはだかる――そのとき。
「翼、右だ!」
声が飛ぶ。
パス。赤木が受けて、シュート!
──ゴールネットが揺れた。
2-2の同点。
その瞬間、朝日南の選手たちは肩で息をしながら、笑った。
「やった……やったぞ……!」
熊田は腕を組んで言った。
「よくやった。ようやく、“チーム”になったな」




