表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サッカー部なのに筋トレしかしてません!  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/18

第十話「空を制して地を征す」


――前半18分。

東海付高の怒涛の空中戦に対し、朝日南は懸命に耐えていた。


「赤木、鉄之介、前で潰せ!」

「宮本、落ち球の位置を読め!」


熊田の指示が飛ぶ中、朝日南の最前線では異様な攻防が続いていた。


東海付高の190cmトリオ――通称「空の三銃士」。

その跳躍は圧倒的で、普通の高校生なら競ることすらできない。


しかし。


「ハアアアアッ!」


赤木が、鉄之介が、限界まで膝を沈め、爆発的にジャンプする。


「くっ、こいつら跳ねすぎだろ……!」


東海のFWたちも驚き始めていた。

フィジカルと跳躍を極めた朝日南の“空中タックル”は、正当な競り合いの形で東海の攻撃を次第に削いでいく。


そして、空中戦の裏で――翼が静かに息を潜めていた。


「……次、来る」


宮本の分析どおり、跳ね返されたセカンドボールがペナルティエリア手前にこぼれ落ちる。


すかさず、翼が動いた。


「トォッ!」


地上の“狩人”――翼が拾い、トラップからの一閃!


ボールはDFの股を抜け、ゴール右下へ転がる。


ゴォオオル!


「翼うううぅぅッ!!」


ベンチが総立ちになった。1-0! 先制!


「……落ちたら俺のボールだって、最初から決めてた」


翼は小さくガッツポーズを作る。

空を制する者が華なら、地を征する者は影。

だが、その影がなければ勝利はなかった。


そして、さらに。


後半30分。再びコーナーキックのピンチ。


東海の三銃士がエリア内に入る。観客がどよめく中、熊田の声が響く。


「“浮かせて潰せ”作戦、発動だ!」


「は!?」


味方が密集し、敵3人を囲い込む。その中央で――鉄之介が再び跳ぶ。


「うおおおおおッ!!」


体ごとぶつかるようにして、空中で相手FWを正面から押し返す!


審判はホイッスルを吹かない。競り合いは正当だった。


ボールが再びこぼれる――!


「任せたっ!」


翼が滑り込む。

つま先に当たったボールが、逆サイドのスペースへ流れる。


走り込んだのは、サイドのスピードスター・七海。


「見てろよ、これが“ラグカー式カウンター”だ!」


七海がドリブルで一気に50mを駆け抜ける!


右には赤木、左には鉄之介が並走。


3人の連携から、最後は赤木がトゥキックで叩き込んだ。


2−0!


会場が爆発するような歓声に包まれる。


東海の選手たちは膝に手をつき、うなだれていた。


そして――試合終了のホイッスル。


勝った。朝日南、全国大会東京都予選・優勝。


部員たちは歓喜の輪を作る。

熊田は腕を組んだまま、黙って空を見上げた。


「空を制したら、次は……世界だな」


誰にも聞こえないように呟いたその言葉は、確かに未来への狼煙だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ