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十三斗  作者: yomi
第1章「非日常編」
1/5

第1話 無関心ボーイ

 2010年。夏。


 ー高木海斗は無関心である。どのくらい無関心かといえば、形容できないほどに無関心である。高木海斗はあまり驚かない。高木海斗はあまり笑顔を見せない。高木海斗は感情をあまりオモテには出さないのである。


 ー日常はあまりにも日常だ。どのくらい日常かといえば、形容できないほどに日常だ。僕はあまり驚かない。僕はあまり笑顔を見せない。僕は、多分、あまり、感情が動かないんだと思う、多分。

 でもそんな僕はこの日常においては非日常的なもので。でも、非日常的なものにおいては僕はまあまあ日常なんだと思う。でも…。僕は…。このゆったりとした日常が好きなんだと思う。多分…。

 だから僕自身も意外と急に訪れるこの日常が非日常に変わる瞬間が来た時。意外に冷静で、意外に心は動かなかったけれど。それでも、意外に悲しかったんだと思う。

 でも僕は。仕方がないので、銃を向ける。僕が銃を選んだのではない。銃が僕を選んだのだ。だから。この人も、今。今日このときに僕に殺される運命だったのだと思う。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なあ。高木。」

「どうしたの?」

 いつも突然の問いかけなので僕は、小首を傾げるようにしている。

「過去と未来。どちらかに行けるとしたらどっちに行きたい?」

 とても満面の笑みで問いかけてくる。

 多分この人は、話の内容というよりは僕と話すことが楽しいみたいだ。

「んー。過去かぁ…。でも未来もいいかも?」

「ほんまに?俺は絶対過去!だってさ、自分の未来が分かっちゃうのってなんか怖くない??」

「えぇ…。でも僕はさぁ。」

「ん?」

「大人になった僕がどんな人と出会ってるのかとか、興味あるんだぁ。」

「いや、でもさ。未来の自分が思っていたのと違う、とかさ。将来付き合っている彼女がめっちゃブサイクだった、とかさ。知りたくないことまで、知ってしまう可能性もあるやん?」

「確かにね。でもね?僕は思うんだけれどさ。」

「ん?何を?」

「その過程までは分からないよね?未来へ行くと言っても。」

「過程…??」

「うん。」

「どういうこと??」

「だからさ。自分の思い通りでなかったとしても。そこに至るまでの過程に、意味があったんじゃないのかなぁ…。とか。」

 適当に話すにしても、適当なことばかり言い過ぎてるな。まあ、でもこのくらいで丁度いいかな。こういう話は。どうせ起こらないことなんだし。

「はぁ。なるほどなぁ。高木はすごいなぁ。」

「まあ。適当なんだけどねっ。」

「いや、適当なんかいっ。高木は、おもろいな。」

 僕は大抵、いつも。適当に話しているよなぁと自分でもつくづく思う。そこがちょっとした天然感もあって、そして時に相手を困らせてしまうことから小悪魔感もあるらしく、評判は良いらしい。まあ、でもこういう無害な感じの人たちに銃を向けることは一生ないんだろうなと思う。多分。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「高木くん?」

「ん?どーしたの?」

 適当に話しているのでテンションも適当に変わるなぁと我ながら思う。

「あの…。えっと。」

 特に話題がなかったのだとすぐに感じられるほど言葉に詰まっている。

「過去と未来。どちらかに行けるとしたら…どっちに行きたい?」

「んー。過去…かなぁ。」

 明らかに初見ではない話を初見のように迷いながら答える。

「あ。過去、なんや?どーして?」

「だってさ。未来が分かるって、なんか怖くない?」

「あ。確かに。これからのことが分かっちゃうもんね。」

 今、中学生の間でこの手の話題が流行っているのだろうか。というより今時の中学生とかこういう話が好きだよなぁ。まあ、そういう僕も中学生なんだけれど。しかももう14歳。でも、僕と今話しているこの子は14歳になっていない可能性の方が高いよな。5月生まれの僕が、6月の今、同級生と話して、その相手が年下である可能性はどのくらい高いんだろう。

 日本の学校の制度は、4月がスタートだ。だから5月生まれの僕はこの学年では比較的誕生日は早い方であるはずだ。80%以上の確率で相手は13歳だろう。つまり今僕の目の前にいるこの子も13歳である可能性がめちゃくちゃ高い。なんか気になる。別にどうでも良いのだけれど。

 でも気になる。まあ別にどう思われてもいいし思い切って年齢を聞いてみよう。いや、でも昔おばあちゃんに女の子に年齢を聞いてはいけないって言われたな。やっぱ失礼に当たるのかな。いや、でも中学生相手にその理屈は通用しないよな。普通。あ。僕は普通という言葉は大嫌いなんだけれど。この話をし出すと、話があまりにも脱線し過ぎるからここではやめておこう。

 全く関係ないのだけれど、女性に年齢を聞くと失礼に当たるというのは何歳から通用する話なのだろう。30歳くらい?いや、そんなことよりも。確率の話で言うとこの子はほぼほぼ僕より年下だ。是非とも確かめたい。というか同級生に年齢を聞くと言うことがもう不自然なのである。あまり聞いたことがない。誕生日を聞けば良いのである。それで全ては解決するのだ。そうなのだ。

 しかし、僕はこの子の名前を知らない。ど忘れしてしまった。人に関心がないと言うのも玉に瑕である。なんと言ったか。この子の名前は。確か…、この繊細な感じの子のイメージにぴったりだったような。めちゃくちゃ主観なんだけれど。

「早川さん、ずる〜い!一人で高木くんと話して!」

「え…。あ。あの。いや、そういうんじゃなくてっ…。」

「えぇ〜。本当かなぁ。」

 神は僕に味方している。神なんて信じないけれど。

「あの。そういえばさ…。早川さんって誕生日いつだったっけ?」

 わざと。少し照れくさそうに言ってみたのだけれど。

「え。うそ。覚えていてくれたの?」

「え?」

「うん。6月14日。今日だよ。」

「あ…。やっぱりそうだったよね?誕生日、おめでとう。早川さんっ!」

 満面の笑みで言ってみる。適当に。長々しく話したのだけれど、詰まるところ読者に僕の年齢、学年、今日の日付を伝えたかったのである。皆様。伝わったでしょうか。

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