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樹登りは命懸け〜@異世界〜  作者: ぼここ
1.雲の海の底の森の中の
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6.蜂と蟻の巣

これ全部か、ヤバすぎないか。

俺たち、匂いに釣られたってこと?

ダンカンさんの元に戻らないと!

まだ蜂が少ないうちに!

でもいい匂い。


「そのまま進め! 戻れない」


ダンカンさんがこっちにかけてくる。本気の走りだ。

滑らかな杖の動きで、何が飛ばして蜂を撃ち落とす。

そのまま、俺の背を叩く。


その向こうからキリンのようなやつが迫る。

脇を抜けて戻れば‥、無理だ。どういう動きか、正確に青いワニを蹴り、踏み潰す。一匹たりとも逃してない。

死屍累々。

距離があるのに、目があった。まずい。


「でも、あれ蜂の巣っ」

「まだ蜂は出ない、あれらの襲撃に警戒だけしてる」


足腰が崩れかけたエルさんを立ち上がらせた。

あからさまに限界が来てる。


「いそげ。先導する」


俺の返事は待ってくれてない。

行けと背を押される。


ただ、まあ匂いのもとに行けるなら。

エルさんを肩にかけ直して、進む。


ん?! くさっ。


突然、甘い匂いから、腐った匂いに切り替わった。

落ちている骨が骨だけでなくなり、肉がまだついてる。

そして、そこにたかるのは、蟻、蜂。

なにかの肉と覆い蠢く黒い膜。見たくなかった。


背中を小突かれ振り返れもしない。

このまま進めば、六角柱郡を登ることになる。

階段状になってる部分なら行けるそうだけど、

蜂は大丈夫じゃないでしょう。

スズメバチって確か5センチとかでもイメージよりでかい感じがした記憶がある。それより、おおきい?


柔らかい石を踏みつぶした。大きな中に芯があって。ズルリといった具合だ。


「エルさん、いくよ」


一瞬で思考が高速回転した気がする。

もう、日和ってられる状況じゃない。

いちいち、ショック受けてたら蜂にさされかねない。

ダンカンさんが言うようにまだ蜂はたくさん出てない。

思えば蜂なんて飛んでいたら、それだけでヒヤッとするけどそのまま刺されたことはないな。ならいけるかも。

じゃ走れ!


白い蜂の巣は土で出来てるのか、ボロボロになってるところが多い。

特にボロボロな六角柱は中が空洞になってるのがよく見える。逆にきれいなやつは中がみえない、そしてたいてい蜂がついてる。

つまり生きてる巣の判別はつく。生きる巣のほうが少ない!

それえらんでいけば!


駆け上る振動が伝わったのか、蜂がふえる。


「怯むな、すすめ!」


フラフラするエルさんを押し上げて登らせる。

この様子、怪我したってだけじゃない気がする。


そういう俺も体が重い、正直まっすぐ歩けるか自信ない。

遊具みたいな場所にあわせて体が動かしてるから、意識してなかった。

頭も霞みかかってクリアじゃない。


でも羽音が増えてく。

高さもわからない真っ白の雲の空を、羽音が黒くとらえどころなのないシミを増やしていく。

先を見る、このペースで増えたら間に合わなくない?

アニメみたいにわかりやすく走って逃げ切れるものなの?


「カワセミ、跳べっ」


数メートル離れたところ登り進んでたダンカンさんの声がきこえた。

俺の後ろをさしている。


振り返るといつの間にかキリンっぽいやつが巣の目の前まで迫って、両前足を上げた。

全く気づけなかった、注意力不足すぎる。

キリンの目は俺を捉えてる、踏み潰す気か!

エルさんを脇に挟み込むように抱き寄せ、今いる六角柱の段を跳ぶ。

その2秒後に前足が落ちた。


複数の六角柱を一撃で粉砕した。

それから一気に空が暗くなった。黒くて粒子の荒い雲、尋常じゃない羽音をまき散らす。怒りだ、家を壊された蜂たちの反撃。なのにキリンは意もしてない。

なぜか俺たちから視線を外さない。


あいつ、俺が何したっていうんだ!

蜂に周り全部囲われて逃げ道がない。

多分蜂の怒りは俺たちに向いてないけど、どうなるんだ?


ポロボロとはいえ、俺とエルさんが同時に乗って走っても平気なくらいの強度はある。それをふ菓子を踏み潰すような感覚で!

それに一番まずいのはダンカンさんに続くルートが破壊されたことだ。

選んでもらったルートが使えないなら自分で探す必要画ある。でも観察して安全なルートを選んでる余裕がない。

もうキリン呼びでいいや。キリンの視界から隠れる為に、できれば巣を超えて反対側に行きたい。

蜂の量がやばい、戻るつもりなかったけど、戻ることもできんのか?


しかもエルさんがまずい。

ぐったりし始めた。今は背負うのがベストか。

もう登る方向は厳しいから、同じくらい高さの六角柱をとんで迂回してく。

蜂がつかないのはダンカンさんに蜂から守ってくれてたみたい、でもダンカンさんの援護射線が途切れる。

呼吸。覚悟決める。刺されても足止めてやらない。


2回目の踏みつぶし。

大きな身体だ、振りかぶりが緩い。ちゃんと見れば避けれなくない。ただ巨大ゆえの移動が早すぎる。迂回してたんじゃ逃げ切れない。

どうする? もっと蜂で怯んでほしい。

ダンカンさんの援護ないかな?


あった!


キリンのあたまが弾ける。

離れたところで杖を回すダンカンさん、大きく手を振りなにか指示出してる。

指示の内容はわからないけど、援護するからなんとかしろってことか。


キリンはダンカンさんの方見て、俺を見た。

どっち追うか迷ってる。

チャンスだ。

次視線はずしたら隠れる。走るんじゃ多分逃げ切れない。


二度目の牽制弾。

キリンが向こうを向いた。すかさず死角であろう六角柱の影に滑り込む。

見失ったか確認したいけど、頭出したらバレる。

耳に集中。羽音がうるさすぎる。

巨体の足音は聞き逃さない、こっちにゆっくり近づいて来てる、バレてるかわからない。

逃げ出す準備だけしなきゃ。

ひとまずエルさんの容態を確認する、意識はあるが熱があるのか? 毛で覆われて肌が露出してないからよくわからない。視線の感じはしんどそう。


ブブブ

しくじった。蜂が青い袖にとまった。

一匹、二匹。

腹がキュッと縮んで、反射的に振り払いそうにはなるもこらえる。

払う? 潰す? やり過ごす?

もう一匹突っ込んでくる。無意識に反射的に袖で払ってしまう。手応えと音が重い、これが蜂か?。

叩きつける勢いでも、宙返りした直後すぐに態勢整えてきた。

まずい、ロックオンされたっぽい? あんだけ暴れてるキリンが、いるんだからそっちいけよ!俺が何したっていうのさ?


再びの登山服の袖を伸ばして、タイミング測って、蜂はたき落とす。的は大きく意外と直線的、数さえいなきゃ俺でもなんとかなるのに。

その振った腕をノータイムで回してエルさんをさっと背後背負う。キリンにも8、9割見つかってる。すぐに走り出す用意をしておく。

物陰からでて右手、低い段差で駆け上がれるルートがある。その先までは見えないけどなんとかしないといけない。いけるか? 選択肢と時間がないっ!


凄まじい雑音のなか、地響きと言っていい大質量の足音が止まって、若干の間。

まずいこれは!


走り出した。


いた場所にキリンの前足が突き刺さり、六角柱を踏み砕く。


判断が遅かった。

崩れる六角柱の範囲から抜けきれてない。

左足にあった体重を支える感覚がすり抜けた。

これは落ちる。

直後、最適の行動を取れてない。崩れ残った六角柱に掴めたかもしれなかったのに落ちて届かなくなって気づく。


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