5.首の長くないキリン
「カワセミ先にいけ!」
「わ、わかった」
怪我の様子全部確認してなくて、エルさんの負担具合がわからない。でも急がないと。
甘い匂いがなんとなくする、そっちに行く。
湿気が高くて気持ち悪い、疲労か足がふんわりしてきた。
全校生徒の前で話しするようなときに似てる。
「転ばないように気をつけるから」
ダンカンさんが後ろで青いワニを追い払っている。
急がなきゃと思ったところで茂みが途切れた。
何か足元、木の細切れの柔らかい土に硬い物が混ざり始めた。白く、長いこれは骨?
数メートル先にある岩は頭蓋骨に見える。
「こ、これ動物の?」
頭の中では異常な状況だとわかる。
背後はちょいちょいダンカンさんに撃ち落とされてる青いワニがいるが、さっきより増えてる。群れなのか?
その向こうにヤバそうなデカいキリンみたいなの。
「 ここおかしいっ!」
「戻れない、進めっ」
「ぬっ」
前進と後退はできない。
右と左は? この辺りは道は広いからどっちにも進める。
ならどちらでも良い悪いない。
「だめだったらごめん!」
枝の縁側に駆け出した途端青いワニが飛び出てきた。
慌ててナイフを取り出そうと手を伸ばしたところでエルさんが何か投げた。
何も飛んでないが、青いワニが弾かれ茂みに突き刺さる。
何したか気になるけど後で。進路が取れてる。
「ありがとうございます!」
言い切ったら長くてもきっと敬語でも一緒。
タメ口慣れない。
落ちてる骨は得体がしれないけど、とりあえず森の外だから進みやすい。見通しもいいし、ヤバそうな生き物はいなさそうだし。
にしても匂いが強くなる。心地よい香りだ。
骨が多くなってきて、地面が見えなくなってきた。
そろそろ、匂いに惹かれるんだけど、やばい場所な気もする。でも真っ直ぐに行く。
枝の縁側に白い物が見えてきた。
きれいに整ってる、建物っぽい。人が住む場所!?
たすかる!ダンカンさんは?!
「止まれ!」
離れた位置からダンカンさんが叫んだ。
目が霞んできた、でも止まらない。だってすぐそこに建物がある。あそこにつきさえすれば。
「あそこに避難させてもらうから!」
「止まれ!」
何かがおかしい感じがする。
いまの状況を再確認する。
俺とエルさんが青いワニに追われて、数もかなりいる。ダンカンさんがどうにもできないくらいだ。その後にデカいやつがいる、森の中から出てきて全貌を今確認した。
足が太く長いウマ、身長はキリンくらいはあるんじゃないか? それが2頭、いろんなものを蹴り潰しながらこっちに来てる。
青いワニが一匹、一瞬で踏みつけられ、青い汁が弾け飛ぶ。戻れる気がしない、ならすすむしかない。
「カワセミ、エル、もどれっ!!」
「でも、あそこに建物がっ!」
「あれは違うっ」
数メートルの高さの白い六角形の柱がいくつもくっついた塊。おしゃれなビル群にも見える、言い過ぎかもだけど、小学校の敷地くらいの広さあるんじゃないか?
家としての見た目とも思えないけど、この枝の上に天然であんなのできるか?
多分この香りも、誰かが用意したものなんじゃないの?
「駄目だ! ぐっ」
ダンカンさんが青いワニに襲われてる、数も多い。
急がなきゃ。
骨を踏みながらそれらに近づく。
一辺1メートルくらいの辺の六角柱。それがいくつも重なりあたかも城に見えなくもない。白い城。
やばかったらエルさんだって抵抗するでしょ。
と思ってエルさんみると少し目が虚ろに見える。
「エルさん?!」
エルさんも限界くさい?
あとちょっとで匂いの元につけるから!
でも、ついてどうするの?
人がいるようでもないし、入口も見えない。
あれ、どういうやつだ?
「羽音」
エルさんが突然動く、音の正体は蜂だ。
嫌な羽音を鳴らし、俺たちの周りを旋回する。
まずい、蜂の巣でもあるのか。
「まさか」
六角柱の上の方に穴が見える。
そこから何匹か、出入りしてる。
「蜂の巣か、これ」
4話と同じ文章も載っけてしまっていたため、被り分を削除しました。このため、この話だけ文章短くなっています。(2024/12/18)