表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
樹登りは命懸け〜@異世界〜  作者: ぼここ
2.崩れ落ちた枝の
19/20

8.人、蛇、鷲、そして

「ヒビキ! すぐ 行くよ!」


単純に喜べない。すぐに父親のもとに直行しなければ、基本的に何も解決してないんだから。

他の村人に気づかれる前に。


外に飛び出るのと同時に音が鳴った。

口笛、かなり大きな音で、遅かったらしい。仲間を呼んだのだろう。もうまともな理性は残ってないと想ってなきゃ。


マクセルさんはハーブの中なら飛び出す。


「ヒビキ、もう一度俺が抑えるからこのロープで縛り付けてくれる?」


目が合うと頷いてくれる。厳しいけどまだチャンスはある。


「じゃいくよ!」


走り出す。一度、盾でタックルして押し出して上から抑える。

さっきと同じだ、ただ不意打ちにならないから何度でもやる覚悟でだ。


マクセルさんの目を見る。

虚ろな感じ、さっきの宣言をした人間と同じと思えない、きっと説得は通じない、多分限界を迎え、棘に逆らえないのだろう。

とにかく、他の奴らが来る前におさえつける!


杖を手放してくれていたことは幸運だ、あれで召喚獣を呼ばれない。


ん!?


片手に持ってるの、指揮棒みたいなやつ、杖っ!そんなんあんの!? させるか!!


避けられ、


あぐっ!


何が起きたか分からなかった。

強く踏み込んで感じるはずの衝撃はなく、代わりに視界が暗転、盾は手放さなかったが、お尻を滑らし尻もちついている。

首が痛い。


ラリアッ、そんなこと考えてる暇ない!


すぐに立ち上がって、再び駆け出す。

腰につけていた武器も取り出す。

木片にロープをつけたやつ、すでに離されたこの距離はダック府じゃ間に合わないし、いなされる。


「ふんっ」


まず振り回してロープの張りと回転を安定させる、少し練習してるからここまでは良い。

あたれ!!


3メートルくらいが射程。真っすぐ飛んでいったが、最少で避けられた、指揮棒が何かの形に振られる。

阻止する!!

そのまま突進あるのみ!

なんとしても態勢を崩させる!


「ハーブ!」


今のうちに援軍を呼ぶ。俺だけじゃ力の差も技術の差もあって拘束できる気がしない。


あと5歩の距離、マクセルさんからとでもない量の煙が爆発的に吹き出す。

構えていた盾が防いでくれた、大蛇が出てくる。

怯むな、その前に! 抑えつれば!

前が見えない、向こうも同じはず!


衝撃。


元々体当たりを想定してしっかり握ってたから手が盾が離れる事はなく、むしろ盾が俺に衝突する。そのまま、地面が足から離された。

要するに弾き飛ばされた。


地面を転がって止まる。

マジで全身痛い、立ち上がらないと。

召喚時の煙から弾き出されている。


普通の雲は光を遮るものだから内側が灰色に暗くなる。

でも、召喚時の雲はそれ自体が少し発光しているらしく、奥の方も暗くならず白いまま。そして雲が薄くなるとその輪郭が浮き彫りになる。


大きな蛇、あの時と同じやつ。


「ヒビキ! ハーブ! 撤退!!」


この状況はもう無理だ。

マクセルさんはこの向こうにいるが、確保は難しすぎる。

その前に撤退できるか?


煙が晴れる前に逃げ出す


「でも!」

「ごめん! 俺じゃここが限界!」


ちらりと大蛇を見る。

もしダンカンなら、もう少しやれたかな。

まだ、マクセルさんは死ぬわけじゃない。

態勢を整えてリベンジだってできる。今は逃げるべきだ。


「やだ!」

「そんな余裕ないっ」


父親の方へ走りだそうとするヒビキをかろうじて、つかみ止める。約束したでしょうに!


「ヒビキのお父さんは、今まともじゃない! わかって!」

「でも、でも!」


無理やり引き寄せる。

抱えられるか?

足を払い、崩れたところを持ち上げる。

盾を捨てて、肩越しに抱えた。まさかこれをやるかとは思ってなかった。そんな事考えてる余裕ないっつの!


「いくよ!」


走り出す。

が、すでに村人が1人来ていた。

召喚士じゃないなら俺でも突破できるか?

大蛇に追いつかれる前に!

赤い鷲が来る前に!


そういうわけにはいかなかった。

早すぎない? ハーブもだけど、蛇ってそんなに足速いの?

これじゃ真っ当に逃げ切れない、どうする?


視界に入るのは建物だけ、中に逃げろ!

ドア半壊してる、蹴破れ!


「まずい、逃げ時ないぞ」

「お父さん……」

「お父さんは大丈夫! なんとかなる!」

「だって」

「大丈夫!!」


ヒビキのだってを塗りつぶす。


うわ、蛇こっち来た!

入ってくんのかよ!


いや、チャンス!


「ヒビキそこの部屋に!」


椅子で殴ってやる。

狭い室内なら、動きは制限されるはず、盾があればなお良かった。


下がりながら、椅子を構える。

おらっぁ!

あたら、うわっ!


避けられた上に、すぐにかみついてきた。

椅子がまだ、俺とあいつの直線上にあったから上手くかみつけないでくれたけど、思う。反射速度で絶対にかなわない。


逃げる一択。


「やっぱ逃げるよ!」


ヒビキのいる部屋に入り、そのまま窓からから一緒に飛び出す。

もしやと思ってた待ってたら、大蛇が窓からにょって出てきた。


今だ!


紐付き木片を投げかける。

蛇の視界がどんなものか知らなかったが、真下の方は見えなかったらしい。

大蛇の首を一周して戻ってきた木片をつかみ、ローブでループを作り首輪を作る。

大蛇が逃げる前に首をかけてやった。何されてるのか分かってないのか大蛇はすぐに動かなかった。

ロープの反対側を持って、少し浮いた横に伸びる基礎の木材に紐を結びつけようとする。


「ヒビキ!、軒下に隠れて!!」


流石に悠長に結んでる暇はなかったが、基礎の木の反対画に逃げてたから突進は食らわずに済んだ。ヒビキも指示に従ってくれた。


もう一度、今だ!


ロープを強く引く。

不意打ちのようなものが決まったっぽい。頭を木片に打ち付けた。


追撃!


ローブを持って基礎の木を踏み台にし、跳んで大蛇を飛び越える。都合がいい、落ちた衝撃で基礎は持ち上がって、潜れるくらいになっている。大蛇は基礎に沿ってロープに引っかかり、すぐに動けないでいた。

再び木の基礎をくぐりもう一度、大蛇を飛び越える。


引き抜かれないように強く絞る。


蛇の頭を固定してやった!


「ヒビキ!」


まさか、なんとかなった。油断せずここは逃げるに徹する!



やば。

もう来てる。

50メートルほど上空、赤い鷲が雲の中から飛び出して来た。

背には男がいる。


「ヒビキやっぱ、そこで隠れてて! なんとかするまで!」


ここからは雲に、建物に、木々に隠れながら逃げる!

そんな余裕はくれない、一直線にこっち来てる。

1難去ってまた1難。

一度部屋に撤退してる暇すらない。


まずは盾!

今度はあの赤い鷲を落とす!!

背後に壁がある、突っ込むにしても失速するはず。

そのチャンスで逃げて、盾を拾いにいく!


予想通り、失速した。この機は逃さない!

横に飛び出し、そのまま走る。

盾のところに戻りつつも、大鷲の動向を確認しておく。


あ、やべ。

そらそうか。


赤い鷲は俺に突っ込んできたんじゃない、俺のいたとこ、大蛇に取りついたんだ。


大鷲に乗る男と目が合う。

虚ろさを感じない、ロックオンされるような感覚。

無意識に足が止まってしまった。


大鷲はそのまま赤い翼を力強くはばかせると、ぐんと大蛇ごともちあがる。一瞬の間にロープは切り落とされ、建物の窓から引っき抜かれる出される。

同時にマクセルさんがゆっくり建物を回り込んで来て

少しの高さから落とされ、首を持ち上げた大蛇の横に立つ。


ヒビキはまだ、建物の下の陰に隠れられている。


状況整理だ。

召喚士2人、大蛇と赤い鷲。数人の虚ろな村人に囲われてる。

ヒビキは隠れてるから、狙いは俺だけ。

俺だけ逃げ切れれば、多分ヒビキは後からこっそり逃げられるだろう。


ハーブは? こっちに来てない、なんかあったのか?


建物に隠れたいけど、大型2匹の攻撃で建物が崩れなくても傾きでもしたらヒビキがどうなるか分からない。


考える暇もない。

直感だけで、しのぐ。


止まっていた足を動かすタイミングを計る。

緊張感が高まってるのか、場の空気感みたいのを感じる。

今じゃない、もう少し、焦点は合わせずぼんやりとした見方で周囲を確認する。


羽ばたきの音がした瞬間、俺は飛び出した。


逃げる一択!!


大蛇がとんでくるのがわかる。赤い鷲は大きな羽ばたきが足枷だ。羽ばたいた直後の動けないすきで距離を稼ぐ。


飛び込んで1メートルくらいの角材を拾う、盾代わりだ!

前転して飛び込み、転がりながら拾い上げ持ち上げる。

俺の最短でだした細い壁に大蛇が突進をあてた。


衝撃を逃がしつつ再び転がりながら、足を出して止まり、もう一度板切れを壁にする。すぐに角材の持ち方を変える。


角材たべてろ!


今度は口を開けている。

ハーブには毒はない、ミーシャさんから聞いている。だから牙に刺されても最悪ではない。


口の上下の圧力は俺に来ず、差し出した縦向きの角材に加わる。ヒビが縦に入る。

それだけの力を端材の鋭い両端から受けた大蛇は大きく怯む。

幸いまだ角材は落ちている。


次!


脇に赤い鷲が低く滑空してきた。

考えていた赤い鷲対策にアレンジして敢行する!


もう一度距離をとるため、丁度よい凹凸と端材のため、その場からさらに飛び込む。

悟られないように、転がりながら落ちている木材の位置を一度だけ蹴り調整する。

そして立ち上がり左右に飛び込めるように中腰になる。

この前と違い、囮になる服とかはない。

突撃姿勢になって背の男の視線が切れるまで堪える。


心の中でカウンドダウン。


今だ、後ろに跳ぶ。

小さめの家に使わられていたような太めの家具材の片側を持ち上げ、くっそ重いっ!

間に合え!


地面に残った方の断面が地面の、大枝の樹表の凹凸にガチンと引っかかる。

大きな爪が俺の目の前をかすめていく。

殆ど俺は赤い鷲に包まれたような感じに、視界は全て朱色に覆われる。

そして赤い景色は上に飛ばされた。


角材を用いた巴投げが決まる。


少し離れた後ろに赤い鷲が墜落した。

それを尻目に確認して、再びくる大蛇を見据える。


昨日の考えた対、大蛇、赤い鷲の対応策は尽きた。

同時に襲われる事は想定してなかったから、怯んだ時にやるつもりだった追撃ができない。


大蛇に巴投げ決まる訳ないよな。

せめて、まだ武器は拾う。


短めの棒切を両手で構える。

つぎのプラン考えなければ。

さっきの普通に痛いわな、めっちゃ怒ってるように見える。


隙ついて眼球突けないか?

どうするか、悩んでる暇ないな、トップスピード出される前に俺から突っ込んでしまえ!

さっきのあるから、俺が僕持ってるだけで、ビビってんな!

さっきから俺にやられっぱなしだったもんな!


オラついてみたものの、劣勢も劣勢。

マクセルさんの指示が飛んでくりゃ、ひねられるのが目に見えてる。召喚獣は1人3体、召喚士2人で残り4匹出てくる。

開戦直後だからなんとかなってるけど、援軍投入されたらやばい。


一気にこの後が不透明、暗黒になった。選ぶ筋がみつからない、筋をかけるすき間が見つからない。

でもなにかしたら筋が、俺の生存ルートがみえてくるかもしれない!


やけくそっ!


大蛇のもたげる根元にしがみつく! なんとかなれ!なにかおきれ! 一瞬、大蛇が硬直する。ビビってんだ。

おなか側の柔らかい部分ある?!

ないっ!

木片刺してやろうと思ったけど手持ちは細く小さすぎる。


上から、肉肉しい口内が落ちてくる。

やばい、この木材じゃ小さくてそのままさっきのできない。

なら俺は


来ない。


大蛇が振り返っている。

俺も即座に離れて、様子を伺う。

ヒビキがいつの間にか、軒下をでてマクセルさんにしがみついていた。

直後顔面に拳、容赦なく弾き飛ばされヒビキが横たわる。


「ヒビキ!」


一発殴りつけたく、突っ込む。そのままヒビキを回収せねば

しかしマクセルさんは虚ろにも冷静に俺に杖を振るう。

真っすぐに飛んでくるのを、見極める。

弾自体が見えなくても、歪みのようにそれば認識できる。


直後身体が軋むような衝撃を受ける。

腕を挟み込まれた、足が浮いた。


しまった! 弾は俺の注意を引くフェイントか!


口が大きいゆえに、牙はあたってないが肩を引きちぎるられそうだ。高さがすでにまずい。投げられるだけで俺は多分アウトだ。

腰に手を当てる、ベルトに差してある包丁サイズの木の杭。

顔がすぐそこだ、刺されっ!

咥えられた肩口を支点に身体を翻し、木の杭を叩きつける。


ぺき。


鼻先の鱗で止まる。木の杭のさきっちょだけが、小さく折れる。鋭さも勢いも強度も足りない。


大蛇の片目だけが見える。

何も考えてなさそう。


肩の圧力が抜けて一瞬落ちる感覚、それから口内がまた迫る。

睨見つける。


口内が横にずれる。

白い影に玉突きのように弾き飛ばされてた。

俺はそのまま落ち続ける。


「エル!!」



このときのカワセミの装備。

【木の盾】:上下の両端は割れたときのままで鋭くしてある縦長の盾、長い縦方向に1メートル位ある。これを大蛇に噛ませるつもり。歪な板状の端材に無理やりロープ巻いて手に持てるようにしてある。

【ロープ付き木片】:漬物石くらいの木の端材を見つけて、ロープを巻いた紐付きハンマー。

【ノコギリ骨包丁】:木で包丁の形を作り、刃の部分にノコギリのように細かい何かの刃が並んだもの。

【木の杭】:片手で持てる包丁サイズ。先端を地面でやすり、鋭くしたもの。使ってない。

【ロープ】:何かの植物の繊維質でよってある。柔らかさはあまりないが結構強靭。

【腕輪】金属っぽい小手のような装飾のない腕輪。4本の傷だけある。盾代わり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ