6.村の女の子
埋める場所はすぐに見つからなかったけど、地面の樹表が凹んでん場所を見つけて砂をかき集めて動かないウサギを埋葬した。
何か要因が他にもあるのかもしれないのけど、ひとまず棘は壊しちゃ駄目だ。棘だけ除去する他の方法は無理やり引き抜くとか、電気とか? 電気なんてないけどさ。
もし、あれでうまく行けば隷属された村人を助けるとかできたけどこのプランは廃止。村人だけの救出は極力避けて、大蜘蛛の討伐か。
大蜘蛛討伐したところで、あの棘なんとかなるんだろうか。
考えてもしゃあない。
ダンカンが何か知ってるかもしれない、そっちが優先! これ考えるのは終わりにしよう。
簡素なお墓を背にして拠点に戻る。
ハーブはいなかった。
ミーシャがご飯は自分で捕ると言っていたから、多分そうしてるんだろう。一応、散策にでて、道具を作るための資材集めと合わせて探しに出た。
ふう、この仮拠点はこれでいいだろう。
拾った大きな麻布の下に乾燥した草を敷き詰めた。
それ以外にスペースを広げて、拾ってきた使えそうなもの物を並べる。
収穫品に杖も2つあった、綺麗なのと折れたの。
綺麗なのはミーシャから貰ったものと同じやつ。量産品なのかな? あとでリベンジしよう。
まずは盾をちゃんとしよう。一番使えそうなのはさっき壊されちゃったから、残った方でなんとか。
ノコギリ骨包丁もなんとか、ならないか。ノコギリじゃ、サバイバルナイフみたいに一瞬でダメージは作り出せない。
刃物が無理だから棍棒とかが現実的かな。
木製の棍棒って実際どうなんだろ? とりあえず暗くなったら作ってみよう。いやまて明かりないぞ。
急がなきゃ。
もし、マジで俺1人で大蜘蛛を討伐することになったら。どうするか。作戦を練ろう、幸い、水と果実があるからしばらくはもつ。
確実に勝てる方法を考えて練る。
そのためには大蛇、赤い鷲、どちらも対策しないといけない。あるのは盾、ロープ、木片、ノコギリ骨包丁、棍棒、弓は……やじりになるものがないな、もっと考えよう。
暗くなるとハーブは戻ってきた。
俺も特に指示もしてないと、空いたスペースにとぐろを巻いて休んでいた。
翌朝。
明るくなったらすぐに動き出す。
水くみと朝ごはん採り、それから散策。
昨日結構準備できたから、今日はさらに降りて大蜘蛛の棲家を確認したい。
もちろん、ダンカンとエルの捜索もしながら。
昨日見つけられなかった針と糸も見つけたい。
大蜘蛛の退治までに登山服は直したい。
今度はハーブを連れて歩いてる。
昨日ウサギに襲われた、多分まだああいうのいるだろう。
昨日引き返した地点で装備を再度整える。
板にロープ巻いて取手をつけた簡易盾。
端材棍棒、これは取手にロープ括り付けてるので投げつける事も出来る。木製とは言え重みあって結構強い、と思う。
ロープは一巻腰に巻いてある、何かしら使うだろう。
というかローブが結構見つかってよかった。麻製なのかな?よくわからないけど汎用が利いて助かる。
ロープワークの勉強はもっとやっとけばよかった。
足音が聞こえる。
村人? ハーブに待てをして周囲をみる。
いた、小柄な影が下る方向に走ってる。わりとゆっくり進んでた俺に追いついて来た感じだ。
首は? いや、何かに追われてる。
後ろからあのウサギが追尾してるようだ。その向こうにも誰かいる。
多分女の子とウサギどちらに棘が刺さってるかもだけど、見過ごせない。
「ハーブ、あのウサギを倒して」
ターゲットは流石にウサギ、仕留めてとは指示出せなかった。
俺も駆け出す。
やっぱり女の子だ、もしかしてヒビキ?
ハーブはっや。蛇ってそんな速度出る?
俺が指示出しきる前にあっという間にウサギの元に接近していき、ウザギ進路の先でとぐろを巻いたかとおもったら、巻き付く回転そのまま尻尾の先を叩きつけて吹き飛ばした。
「こっちきて!!」
「だれ!?!」
一瞬俺のことを観察した感じしてた、まともな感じ、棘刺さってないな?!素早く首をみせてやる。
「俺も棘ない!」
安堵の表情を見せた。
「私、まだ追われてる! 男が2人!」
ハーブが戻ってきた。のどが少し膨らんでる。
女の子がヒッと小さな悲鳴をあげる。
味方だと伝える。
「隠れるよ、そっちだ。ハーブ、引きつけるだけ引きつけて戻ってこれる?」
複雑な指示だけどダメ元の囮役。
と思ったたら、ハーブは進んでいった。分かったのかな?どちらにせよ今のうちだ。
畑の中に入って2人でかがむ。
「もしかして名前はヒビキ?」
「えっなんで?」
「ミーシャさんに見つけたら保護するように言われてて」
「お母さん!! 生きてるの?!」
掴みかかられた。
少し離れた廃屋で助けてもらったことだけ伝える。
涙をその場で流し始めた。顔を赤くつつも声を上げないのはきっと、状況がわかってるからだろう。
ホントはもっとちゃんと伝えなきゃいけないのだけど、それは今ここじゃ駄目だと思った、いや絶対に駄目だろう、まずはここを離れないと。
「お母さんが生きてて良かった、でもまだなの」
俯いたまま小さい声で話を始める。
「お父さんが捕まってるの、早くしないと」
お父さん?
勝手な推測でミーシャさんに聞けなかったけど、小屋に一番近いお墓ってミーシャさんの夫さんのものと思ってた。ちがうの?
捕まってるって、大蜘蛛にでいいかの?
「昨日、お父さんが生きてるって教えてもらって、いてもたっていられなくて」
「そっか」
そりゃ父親に会いたいわな。小学3年生くらいの女の子、ミーシャさんの子どもって言われれば納得する。金髪蒼眼。少し考えてミーシャさん含め女版ダンカンではないな。
細かく思えば輪郭からして似てない。
当然、ヒビキを安全なところに連れていきたいんだけど。
「昨日聞いたの。村の大倉庫の辺りにいるって! だから行くの!」
これ、多分、俺説得できる気がしない。
一応言うだけ、でも、距離感の調節しつつ。
「昨日みんなの所にいたの?」
「うん。教えてもらって、ホントは絶対に行っちゃ駄目って言われてて……、でもねっ! お父さん助けなきゃいけないの!」
ハーブがさっきの2人をうまく引きはせてれば、駄目って言っていても無理やり引っ張って、他にも残ってるっぽいまともな人達の所に連れてくんだけど。
そうしたら絶対に泣き叫ぶよね。
そりゃ泣くわ。今だって泣かない限界にしか見えない。
「わかったよ、俺もここ降りた所に用があるから一緒に行ってもいい」
「いいの!?!」
「その代わり約束できるなら、いいよ」
「うん」
「俺の言う事は聞いてね」
「うん」
「途中で引き返すって言っても?」
「……」
悲しそうに俺を見てくる。
でも駄目だ、俺がちゃんとしなきゃ。
「それが約束できないなら、俺は君を連れてけない。俺は何でもできるわけじゃなくて、やれることに限界があるんだ。だから危険だと思ったら引き返さないといけない 」
まだじっと見てる。
「俺だって、人を探してるから下に行くんだけど、俺が、君が死んじゃったら行った意味がなくなっちゃう。君のお父さんが生きてるのに、自分を助けにきて君が死んじゃったらお父さんはどう思う?」
なかばヤケになってこの世界に飛んだ自分に刺さる。あいつもこんな感じで俺を説得したかったのかな。言い返せないでいる、多分このままなら説得しきれる。
「危ないと思ったらそこまで、それは絶対。いい?」
「……うん」
約束は取り付けた。
ミーシャさんに申し訳がたたなくなるから、ヒビキは死守する。申し訳たっても放置なんかできないけどね。
「今はまだ動けないから、少しお話をしよう」




