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樹登りは命懸け〜@異世界〜  作者: ぼここ
2.崩れ落ちた枝の
12/20

1.村の跡

説明を聞きながら落ちた大枝へ登り始めた。

この枝はもっと上方にあったはずの枝で、人が住んでいる村がある枝だという。

この枝に乗り込んだ場所は枝の裂けた部分。幹と繋がっていたはずの部分である。


村の残骸はすぐに見つかった。

人の営みの痕跡、きっと落ちた時の衝撃で転げ落ちたのだろう。つぶれ吹き飛んだ建物がそこかしこにあった。


ダンカンがすぐにその周囲を探す。

人を探すと言った。


ダンカンはこの枝の村を知っている、ここに住む人とも知り合いは何人もいる。数百人は住んでいたはずという。

どういう経緯で落ちたのかはわからないが、俺も避難が済んでればいいなと思った。

誰も見つからないだろうと願った。


でも、あった。


それは一軒目を過ぎて3軒ほど傾きつぶれた家の中からはみ出していた。


俺は思わず目を背け、立ってられなくなった。

この状態になって、生きたままか死んでからはわからない。野生動物に荒らされていた。


エルは何も言わずにダンカンの後についていくだけ。


見たものがちらつく。

見るんじゃなかった。

少ない会話が、更に減る。


踏み固められた道はすごく歩きやすい。

ただ傾斜がきつくてしんどい。汗かいてる。野生動物が少なくて助かる。

その後もいくつか崩れた建物、遺体と続く。

心のなかで冥福を祈る。


「何かいる」


ダンカンが警戒する。

潰れかけた建物。その中からだ。

俺にだけ待っていろと言い、エルを連れて建物に忍び寄る。

俺も音を立てないように隠れる場所を探す。何が出ても対応出来るだろう2人と違い俺は無茶をするべきでないと思った。

でも少し、置いてかれた事はさみしくもあった。


一応ナイフだけ出しておく。

それから物陰に身体を楽にしてしゃがみ、2人の様子をうかがう。

建物の大きさ的に部屋は少なくとも4つ以上はあるだろう。

2階は何かがかすめたのか、つぶれるとかではなくなくなっていた。


2人は静かに入っていく。


「ねぇキミ?」


えっ?

背後から声をかけられる。

ダンカンとは違い木綿っぽい藁色の服を上下きている人間だった。


「えっ、あっ! 生きてる人!」


早くダンカン達に伝えなきゃ。


ビューーーーッ


指笛? 初めて見た。そんな音出せるんだ。

ただ、なんで吹いた? なんか嫌な感じがする。多分、その人の目線がおかしいんだ。

俺は状況から、ここに生きている人は救助を待つであろう生き残りしかいないと思っていた。だか、そいつは同じ人を見る目じゃない。

そいつは足元に落ちていた棒切を拾った。

丁度殴るのに良さそうな。


バンッと背後で炸裂音がする。


振り返ると2人の入った家の窓が吹き飛んだ。

爆発だ。


まずい!


すぐに振り返り戻る。

同時に腕で頭を守る。


ただの棒で良かった。痛いで済んだ。

すぐに下がる。ナイフの刃先をを相手に向ける。

しっかり握る。


「なにするんだ!」

「ああぁ」


再び叩きつけてくる。

俺的にみっともない感じに後ろに逃げる。

目をつぶってしまう。見なきゃいけないのに。


足音がいくつか聞こえてくる。

絶対、さっきの指笛で呼んだ仲間じゃん。

話の出来るやつよ、来てくれ……ないか。


どうする?

話通じない人怖すぎる。

逃げる一択。2人と合流せねば。


だけどやばい、3人来てる。囲まれる。2人の様子は?!

中から出てこない。助けなきゃ。

だけど、やばい、俺がそれどころじゃない!

また荷物を捨てるしかない。

1人に投げつける。その時そいつらの1人の首の後ろになにか刺さってるのがみえた。黒い模様もだ。


ふと俺の首にも同じようにされたことを思い出した。


「ダンカン! エルっ!」


聞こえるかわからないけども、呼ぶ。それから期待せずにむしろ助けに行く覚悟を決める。

ぶっちゃけて、人をこのナイフで切りつける度胸はない。

2人のもとに突っ込むこともままならない。

なら鬼ごっこしてやる。


幸い足場も悪くないし、適度に回り込んだり出来る障害物だらけだ。

振り付けられた角材を避け、そのまま走り出す。

基本的にトロいから容易く距離を置けた。あの建物を半周もすればそれとなく2人の様子だって分かるはずだ。


途中に白い大きな玉があった。体育座りしたくらいの大きさ、もちろん身を隠せるものでないが異質に感じる。綿? フェルト? いや、それどころじゃないって。


「ダンカン!」


建物を半周するとはえぐり取られて屋上となった建物の2階に2人の姿を見つける。

もう2人誰かいて、2人とも足蹴に拘束していた。

俺に気づいてないら見てるのは俺の向こう。足蹴にしてる人達にも意識が既に向いていない。


「エル!」


俺も振り返る。

あとから追いかけてきてた3人が足を止めている。


俺の背後、建物の反対がの雲の幕があける。

そこにいたのはでかい蜘蛛だ。


白地に緑や赤の斑をまとい、テカリを持った甲殻。ところどころに突起がある、角みたいだ。


でかい。


高さは俺よりでかい。

何でも大きければいいってもんじゃ……、やばい一番近いの俺じゃん。

ゆっくり、後退る準備をする。

幸いに後ろが下り坂だ。


目が沢山、毛もみっしり気持ち悪い。

顎もでかい、口の脇に腕がある、蜘蛛って脚は4対じゃなかったっけ?

絶対ヤバいヤツじゃん!!

どうすりゃいいんだこれ。


めっちゃ時間感じる。

俺の逃げ場は2人のいる建物に入って、2人と合流して…

動いた!!


行動練る暇がない。

巨大蜘蛛が突っ込んでくる。逃げろ!


後ろに逃げて建物に入れば、入った!

そのまま2人は?!


諦めただろうことを確認しようとしたところで、建物の入り口を突き破って突っ込んで来やがった。

パワフル過ぎる!階段探してる暇もない。


ひとまず突き抜けろ!

外に1人、すり抜けられる!


建物を出る直前に、再び建物が炸裂した。

俺は衝撃で弾き出される。


すぐに立ち上がる。

ケガはない。


建物があった場所に白い煙が立ちこめる。

煙じゃない、これは召喚の時にでる霧だ。

異世界と繋げた時のエネルギーの一部が光の粒子になるらしい。俺が来た時も、赤い鳥を出したときもあった。


2人の状況が全くわからない。

でかい湾曲した10メートル程の影が白い煙の中に。

ダンカンが出したのか?


長い、イタチみたいな? 違う蛇か。

仮にダンカンが出したんじゃなくて、奴らだった場合は?

というか、ダンカンは赤い鳥しか召喚獣を持ってないって言ってた!


やば!

逃げろ!

でも、2人はどうする?

まだ、大蛇はこっちに気づいてない。


うわっ!

忘れてた! 虚ろな目のこいつ!

素人くさく振りかざして来やがって!

邪魔だ!


角材を腕で防いで止める。判ってたら対して痛くない、このままタックル!

そのまま馬乗りになって、こいつをどうしてやるか正当防衛だ!つってもなにする?


すぐに周囲をみる。

状況確認の癖がついてきた気がする、おかげでこっちに顔を向けた大蛇に気づけた。

まずいっ!

飛び退く。


あっ


大蛇が馬乗りにされてたやつを咥える。

そのまま飲み込むかと思ったが放り投げた。

ホッとしたが、あの高さと勢いじゃ無事じゃない。

でもそんな心配してる余裕なんてない。


もう一度食いつくかと思ったら、霧の方へ向き直す。


ホッとしたが、それはつまり2人が狙われるということ。

というか2人は無事なのか?!

ただでやられるような2人じゃないだろうけど。

霧が消えるまで待つか? いや突っ込んでやる。

2人置いて逃げるのはない!


白い煙に走り込む。


「カワセミっ!! 撤退しろ!!」


叫び声。ダンカンのものだ。


「ダンカン! でもっ!」

「早くしろ! もう一体くる!」


えっ!

辺りを見回す。

霧の中からか?

違う、もういる。


頭上の雲の中を赤い何かが時折姿を現す。

赤い鷲、あれってダンカンのじゃないのか?

というよりかダンカンのよりでかい。


大蛇が霧の中で動く。

多分大蜘蛛も動いてる。反対側からエルが飛び出てくる。

合流しな、くっ!


赤い鷲がこっちに狙いをつけたらしい。

エルの方行ったら間違いなく捕捉される。

どこでやり過ごす?


いや、ちゃんと見ろ。あの巨体だ。

キリンのときみたいに避けれるはず!


ナイフを持ったまま、登山服上着のチャックを外す。せめて確率を上げる手段はとらねば。


突っ込んでくる。

爪で捉えるために減速し、腹をみせてくる。

左右、あと屈んで前、どれがいけるか?


腰を落としてナイフと脱いだ上着を握る。

左!


と見せかけて右!

フェイトに引っかかり、赤い鷲の巨体が左にそれる。

服を赤い鷲の方にに投げて、右に精いっぱい飛び込む。

赤い鷲も気づいたのか、進行方向は修正できずとも姿勢を崩して爪脚を伸ばしてくる。


上着が隠れ蓑になる。

だが、それを分かってか大雑把に大きく伸ばして来てる。

もう少し!


ドサ!


太ももを斬られた。

だが、凌いだ。ざっくり裂かれた上着を片手で手繰り寄せ立ち上がりそのまま痛みを気にせずに走り出す。


赤い鷲は無理な体勢を取ったためバランスを崩していたが、凄まじく羽ばたいて姿勢をただし既に旋回軌道に入ってる。背中に人がいる、ダンカンではない。知らないやつ、間違いなく敵だろう。


流血が気になるくらいには怪我してるの全く気にならない、すぐに立ち上がり走る。最低限物陰に入ってる赤い鷲の強襲から隠れないといけない。

それから、2人だ。


傾いた木の根元にたどり着く。

追いついて周囲を見渡す。

大蜘蛛、大蛇、赤い鷲、やばいな全部敵。怪獣バトルかよ。

3匹ともダンカンが休息時に教えてくれた正しい召喚獣だろう。

本来なら俺とエルじゃなくて大型の生き物を召喚する予定だったらしい。何らかのミスで俺とエルが来た。

俺は別に呼ばれたからこの世界に来たわけじゃないんだけど、飛び込んだのと呼び込んだのが噛み合ったらしい。

エルも多分そう。

まあ、事故だ。

でも、多分ここに来たのは間違ってないはず、牛型が俺の高校でのあだ名知ってるのが証拠だ。


さて、証拠があっても生きてここを突破しなけりゃ意味がない。流血はあんまり無視しきれないけど、とにかく2人だ。


男女のペアがやってくる。もちろん武器を持ってだ。

1人は角材、1人はなんか装飾された杖みたいの持ってる。ダンカンが持ってるやつに似てる。


俺にだけ見えない遠隔攻撃か。

でも弾速が遅いのと、振りで十分避けられる。


俺のミッションは2人を回収して撤退することだ!

向こうの方で大蛇が動いた。

尾の薙ぎ払いで崩れた建物が更地にされる。


突撃!!


まず2人!


どっから飛んできたのかわからないけど、突然でエルが降ってきて2人を踏み倒す形で着地する。


「え、エル! 無事?!」

「帰れ! お前は要らない」

「え?」


エルが杖を持った人の首を踏みつける。関節が折れるような音。動かなくなる。

不意の音が頭に残る。


「お、おいっ」


緩くなった手から、杖を拾い取る。もう1人はすでに動いていない、マジかよ……。

杖の様子をみて、バトンのように片手で回す。


「要らない」


一瞬で俺との距離を詰めてハイキックがくる。

なんで、エルにも襲われなきゃいけないんだ!

防ぐ動作をいれ


「がっ」


肩口に1発目。防いだと思ったら、そのまま蹴り飛ばされた。

体重差もあるのに、俺が吹き飛ぶ。

痛みですぐに立てない。


エルがおかしくなった? 襲ってくる奴らはなにかおかしい、知性を感じないと言うか上の空のまま動いてるような感じ。エルも、なにかされた?


「どっかいけ」


それだけ言うとエルはどっか行ってた。


大蛇は先ほどまでとうって変わって、向こうで大人しく佇んでいる。赤い鳥も旋回して周囲を警戒してる。俺から標的は外れたらしい。

と思ったら、枝の向こう側に消えた。


「ダンカンは?」


向こうの戦闘が終わったのか? ダンカンは?

痛みでまだ呼吸が整わない。

這って物陰に移動する。


状況がのめない。

というか思いたくない。

ダンカンがやられて、エルが用無しとばかりに離れて去ろうとしてるのか?ついでに俺に蹴り入れて。


うそだろ?


状況がとんでもなく悪い。

あ、木の玉は?!

ポケットから取り出し、叩いてみる。


反応はない。


「うそだろ?」


確認しにいきたい、でも突っ込むだけの力なんてない。

まだ動けない、せめて走れるくらいに回復するまで、隠れてじっとしてるしかない。


どうする?

どうしたらいい?

1人で逃げて、1人で大樹を登る?


めまいがする。

出来る気がしない。


一呼吸、ふぅ、俺は多分大丈夫だ。

ダンカンは牛型の突進もしれっと避けてたし、エルもやっぱりなんかされたって感じよりも平常運転感あったと思う。

なら、どうするか、さっきは撤退しろって言われたんだ。従うのがいい、というかぶっちゃけそれしかできない。


痛む肩をさする。

多分あれ、ダンカンに指示されたことをエルなりにやった結果な、気がしてきた。

俺の知らんところでなんか話して取り決め決めてるみたいだし。じゃなきゃダンカンにあんなに従わない訳がない、気がする。


辺りをみて、この落ちて傾いた枝の入り口まで戻るしかない。余計な事は一旦置いておく。


身体の調子を整えて、走り出す。

下りでかなり傾斜がきつい、転びそうで全くスピード出せない。

ソリが欲しい。

しかし、しくじったかも。枝抜けるまでそこそこ距離ある。あいつらが何人いるのかもわからない、大蛇とか赤い鷲に見つかるかもわからない。

考えが足りてない!次隠れる場所あれば一度撤退作戦たてないと。


土の地面と違って、歩きならされているとは言え硬めの地面だ。木の破片っぽい軽い砂が沢山。つまり滑りやすい。


さっきの遺体があった建物!

あれに!


風切り音。まずい。


振り返ると雲に紛れながら赤い鳥がチラ見えする。

絶対見つかってる。


「こっち」



なんか聞こえた!

どっち?! だれ?! 女の人?!

ひだりてに雲の塊。 そこか!


振り返ってないけどまだ赤い鷲が突っ込んでくる。

雲に紛れれば逃げるチャンスがある。

全力疾走、というかほぼ飛び降りジャンプ。傾斜に合わせ走ると、そうなる。


コケるリスクを取った代わりにぐんと進む速度が伸びる。

風切り音がすぐ来てる。

振り返る余裕なんて取ってられない。

飛び込め!


「よくきたっ!」


雲の壁に突っ込ん瞬間、なにか太くしなる影が飛び込んで来た。

ここで記憶が途切れる。

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