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第8話 体調不良

 彼がいなくなった家は、

ろうそくの火を灯さない誕生日ケーキ、

チャーシューがないチャーシュー麵、

シロップをかけないかき氷みたいだ。

物足りないどころではない。

主演俳優が急に降板したドラマのように、つまらない。


「とま子、ひさしぶりに家族で朝食食べるんだから、

いつものように楽しそうに食べなさいよ」


「母さん、とま子は身体の調子が悪いんじゃないかね」


「その卵焼き、姉ちゃんが食べないなら、俺にくれ」


「祐樹! なんですか! はしたない」


わたしは、何しても楽しくないし、何もやる気がしなかった。

ご飯を口に入れても、味がしない。


「いいわよ、全部祐樹にあげる。ごちそうさまでした」


「やったー! ラッキー」


父と母は心配そうなまなざしでわたしを見ている。


「母さんも父さんも、心配しないで。わたし、たぶん生きてる…と思う」


「とま子、自分の部屋でずっと仕事してたから、疲れているんじゃないの?」


「なんだか、新しい電子レンジがあった時の方が、

とま子は活き活きとしていたなぁ。

新しい電子レンジのおかげで、

家庭円満、無病息災、五穀豊穣だったような気がするが」


父さんのドンピシャの言葉に、わたしは彼を思い出して泣き崩れた。


「急にどうしたのよ。嫌なことがあったら母さんにいいなさい。

無理して、会社に行くことないんだから」


今までこらえていた分、涙が堰を切って流れ出して止まらない。


「こんな精神状態じゃ、出社は無理じゃね? 

姉ちゃん今日ぐらい休めばいいじゃん」


「そうしなさい。父さんも会社を休む」


「俺も学校休む」


「あんたたちは行きなさい! 

あんたたちまで家にいられたら、ゆっくりできないじゃないの、母さんは」


「はーい」


わたしは母に支えられて階段を上り、自分の部屋に戻った。


会社に連絡を入れる。


「はい、すみません。ちょっと熱があって・・・今日はお休みさせていただきます」



数時間後、ベッドに横になっていると携帯が鳴った。

ブー、ブー、ブー

総務部のお局様からだった。

わたしが休んだことが気に入らないのかしら。

嫌味の一言でも言ってやらないと、気持ちがおさまらないのだろう。


「はい、赤井です」


「とまちゃん、お体大丈夫?」


「はいすみません。大丈夫です。明日には行けるかと・・・」


「来なくていいわよ」


「は? わたしクビですか?」


「そうじゃないわよ。

商品開発部の研究室から連絡があって、無事に新商品は返却されました。

モニターどうもありがとうございましたって」


彼を思い出して、胸が詰まった。

無事に研究室に戻れたのね。


「それでね、モニター後のアンケートをとらないといけないんだって?」


「ああ、そんなことを言われたような気がします」


「本人は体調不良で休んでいますと言ったら、慌てちゃってね。

明日の会議までに結果を報告しなくちゃいけないんだって」


「なんでまた、そんな急なんですか」


「スケジュール前倒しなんてよくあることよ。

で、アンケートがどうしても必要だから、

とま子の家までアンケート用紙を持って行くって言うのよ」


「そんな、わざわざ…………ファックスかメールでいいのに」


「それがね、開発中の商品は社内秘密だから、メールで送ると社内規定に違反するって言うのよ」


「まあそうでしょうね」


「だから、とま子の家にどうしても行かなければって言うの。

わたしは、住所は個人情報につき教えられませんって断ったのよ。

ところが、電子レンジを送るときに本人に書いてもらった送付状の控えがありますって言うじゃない。

それを持ってそちらに向かいますと言ってきかないのよ。」


「母が対応すると思いますが、それで構わなければ」


「いいの? 具合が悪いんだから、ダメなら断っていいのよ。

じゃ、研究室には本人が承知したって言っておくわ。

あとはよろしくー」


「あの、何時頃に………」


坪井さんからの電話は切れた。


あいかわらず、テキパキ仕事をこなし長電話は決してしない人だ。

けれど、たまに大事なことが抜ける。

それをフォローして抜けが無いようにするのが、わたしの仕事だ。

今、坪井さんの取りこぼしをフォローするわたしがいないと、このように肝心なことがぬける。

得意先の苦労がよくわかった。


何時ごろに来るのかわからないと、うかうか寝てもいられないなぁ。

とりあえず、パジャマはまずい。

着替えておくか。




「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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正直に感じた気持ちでちろん結構です!


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