8日目
リークリスト火山に着いた。
「貴女が火の巫女様ですか?」
10歳くらいに見える少女が火山の前でぼーっとしていた。
話しかけたが、聞こえていないようだ。
仕方ない……。
めんどくさいからもう火山に行こう。
「しかし、この火山でかくね?」
リークリスト大火山に改名して欲しい。
「どうしたものか」
魔物を一体でも倒そうとすると駄目らしいが。
……とりあえず頂上まで登って見るか?
一応入ったら攻撃される、とは言われてないよな。
それに探掘でも魔石は手に入る。
そんな魔物だらけの未踏の地だったら、魔石はたくさん埋まってるのでは?
ドラゴンと会話できるなら、取り引きに持ち込むことも可能かもしれない。
「自分をおんぶしつつ、昨日の無敵防御?みたいな物を張りながら、あの山の頂上まで登れる?」
お人形さんに頼んでみる。
ドラゴンが頂上にいるとも限らないが、まぁ上まで行けば見えてくることもあるだろう。
『…余裕だな』
「じゃ、よろしく」
昨日はたくさん動いたので、眠くなってきた。
▫
ここが山の頂上らしい。
洞窟のようなものがある。
覗くとドラゴンと目が合った。
………。
「こ、こんにちは〜」
僕は挨拶のできる日本人。
『こんにちは』
どうやら会話はできるらしい。
「魔石、欲しいんですけど〜」
『…』
駄目そうである。
億劫そうに口を開いて火を吐かれた。
お人形さんの無敵防御(暫定)に阻まれたが。
これが……ドラゴンブレスってやつか!かっこいい!!威力高い!僕もやりたい!
……という欲求に支配される。
やはりドラゴンはかっこいい。
手を狐のジェスチャーの形に持っていく。
そうして口の部分を開けて、
「ドラゴンブレス!」
ドラゴンに向けようとして、……思ったより威力がやばそうなので少し横にずらして洞窟に向けて放った───────
▫
「……申し訳ないです…」
結果、リークリスト火山が削れた。
ドラゴンの家らしき洞窟ももちろん木っ端微塵だ。
とはいえお人形さんのエネルギーも無闇に使いたくないし……。
『…我から攻撃したからな、不問だ不問』
ここに住んでいた魔物はやばいと察知したドラゴンの咆哮により、僕のドラゴンブレスの射程外に避難させたらしい。
……冷静に考えたら、ドラゴンブレスじゃなくてフォックスブレスかもしれない。
ドラゴンのジェスチャーってなんだ。
思いつかないからもうフォックスブレスでいいか。
『しかし、その風魔法、ローブ、風の魔道士か?お前…随分とイメチェン?だったか?…したんだな?盗掘されるかと思って攻撃したが、そう最初から言ってくれれば魔石の融通くらいはしたんだがなあ』
「いや、違い…そうです」
もうそういうことでいいか……。
魔石も欲しいし。
『魔石はいくらでもくれてやる。一応別の場所に保管してあるからな。綺麗で見応えがあったものは収集しているんだ』
ドラゴンっぽいな、と感じた。
ドラゴンは金にがめつい貴族の代替として物語に悪役にされることも多かった……んだったっけか。
「条件は?」
『…相変わらず風の魔道士はせっかちで頭の回転が速くなんでも分かるのは良い。良い、が、他人に対する配慮がどうしようもなくずれているし、間違えていたってどうせ忘れてなかったことにする。まるで趣というものを吐き捨てる勢いだな。…ワニ!来い!』
なんかすごく悪口を言われた気がする。
忘れようか記憶しておこうか迷ったが、頭の回転が速いと褒められたのは嬉しいので、記憶しておくことに決めた。
……ドラゴンの隣に赤いワニがいる。
「へえ、女の子か。可愛いね」
『…なんか既に不安になってきたが、この娘が人間に会いたがっている。修行の意も込めて、しばらく付き添いをやってくれないか。その代わり、魔石は欲しい時に好きなだけくれてやる』
「あれ?契約書とかいらないんですか?」
『風の魔道士は木の賢者未満の木魔法なんて簡単に破棄できるだろうしな…。それに風の魔道士は、絶対に契約を破らないことで有名だぞ』
「へえ。まぁもちろん受けますが…ワニを街に連れて行って大丈夫かなぁ」
『そこは心配するな、ほら』
ワニがクルッと回って人型になった。
結構幼い。服も着ている。どういう仕組みなんだろうか。
「よろしく!」
ピースしてきた。可愛い。
「すごい…。あ、手乗りワニとかにもなれるの?」
「なれるよ。なる?」
「いや、今はいいや」
こうして、ワニさんに自己紹介もしつつ、お人形さんのエネルギー問題が概ね解決し、本当やることが無くなったので、今日は帰って眠ることにした。
おやすみ




