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7日目②

 冒険者ギルドの支部はかなり大きな建物だった。


「無くなるどころか結構繁盛しているように見えるね…」


『そうだな、それに前見た時とは様子が違う』


 趣深い傷や応急処置なんかでボロボロになっている押して扉を開け……外開きの扉だった。

 そういえば西洋は外開きが主流なんだったか。


 ふむふむ。

 中を見渡す。いろいろ家の中を散策してたせいでもう夕方になっているが、それなりに人がいる。


「それでお人形さん、ここからどうすればいいんだい?」


『…前とは様子が違いすぎてさっぱりだ。だが、あそこのカウンターでとりあえず聞けばいいんじゃないか』


 カウンター?

 ……確かにスーパーのサービスカウンターみたいなものがある。

 反射すると水色に光る不思議な金髪をポニーテールにした少女が紫色の目を伏せながら机に肘をついて座っている。


「…すみません。魔石が欲しいんですが…まず相場を教えてくれませんか?」


 聞いてみる。


「ああ、…魔石、魔石ね。ありゃ今は商人ギルドに行った方がいいよ。もうこの国じゃ取れるところはほとんどありやしない。今は隣国からの輸出に頼っているから、ま、ここで買えないこともないが、向こうより高くつく」


「はあ、そうなんですね。…しかし、迷惑でなければ両方の相場を教えてくれませんか?」


「…しかし惜しいね、お客さん。つい最近この国はその隣国とも仲が悪くなったとかで、魔石の値段も高騰続きだ。前年比の30倍までいきそうだ。冒険者ギルドだとそれの1.1倍ってとこだねエ」


 そこまで聞いて、そういえば僕はこの国のお金の単位すら怪しいことを思い出した。

 御屋敷の図書館にあるのを見る限り、金貨、銀貨は確認できたが…。

 一応賢者の家の金庫には銅貨も置いてあったけど。

 金庫はお人形さんが目の中に持っていた文字と照合して開いた。手で閉めると鍵はしまった。

 ちなみに、金貨3枚でちょうどこのギルドくらいの場所と大きさの土地が買えるといったところだったはず。


「前年比…。まぁいいです、別に売るつもりは無いですが、貴女から見てこの魔石はいくらくらいに見えますか?」


 ローブの魔石を見せる。


「ウーンあんまり大きくは無い魔石だねェ。ま、雑に見繕って今だと金貨5枚くらいか」


 ……無理そう。


 そもそも家から金貨10枚分くらいを借りてきたとはいえ僕は1文無しだし。

 いや、10枚で足りると思うじゃん?

 もちろん、今はお人形さんに預けてある。いくら火力があるとは言え、隙だらけの僕が持ってたんじゃすぐ盗まれてしまうだろう。


「はあ、もうこれは隣国の方に行った方が良さそうですね」


「隣国?今国境は危ないよ。ああそうだ、護衛とかどうだい?あそこに座っているミドルムガンドとか」


 ミドルムガンド?北欧神話の大蛇の名前に少し似ている。思わず指を刺している方向を振り返る。


 ……あんまり蛇っぽくない。僕は勝手にがっかりした。


「護衛はいらないと思います。このお人形さんはなかなか器用だし、僕も結構強い魔法使いなので!」


「へえ…オーイ、ミドルムガンドー!1発こいつらを攻撃してみてくれ!」


 ……。

 突然ナイフが飛んで来て身構えたが、お人形さんの前でカツンという音ともに、はじきかえされた。

 お人形さんの方をじーっと見ると、軽く頷かれた。

 そんなことまでできるのか。


「フーム、なかなか堅いね。いいんじゃないかい?…おお、そういえば!そんなに腕っ節に自信がありそうなら、近くのリークリスト火山に行ってみるのもいいかもしれないねェ」


「リークリスト火山?」


「ああ、そこにはたくさん魔物がいて魔石も取り放題だ」


 なんて僕にとって都合のいい場所だ。

 しかし、なんでそんな場所が放置されているのか。

 誰でも分かる。怪しい。


「怪しいって思うだろう。……あの山はねえ、ドラゴンが出るんだよ。魔物を一体でも狩ろうとしたら、ドラゴンが追いかけて来て殺しに来るんだ。最近の挑戦者は皆…フクク、ま、失敗したってやつだねェ」


 ニヤニヤしている。


「はあ、じゃあまぁ明日行ってみるだけ行ってみますよ。挑戦するかは明日決めればいい話です」


「そうかい、そうかい。イヤー、将来有望な若者が死地に向かうなんて悲しいねェ、くくく。……コホン。さあ、そういうことならカードを作ろうか」


「…通行許可証みたいな物ですか?なんでそんな物を」


「通行許可証か…。ま、確かに火の巫女様に身分を証明する目的だから正しいのかねェ。…リークリスト火山の道の前に火の巫女様がいるんだ。ギルドで配られるカードを見せ無いと入れてくれないのさ」


 一般人を死地に行かせないため働くボランティアみたいなものか、と推測してひとまず頷く。

 ……まぁカードを発行する側がこんなにガバガバじゃあんまり意味も無さそうだが。


「さあ、偽名でもいいから名前を教えるんだ。カードに記載しないといけないからね」


「ああ、自分はあ…アール・グレイです」


 本名を言う勇気は無かった。

 僕はチキン野郎です……。


「グレイ伯爵?随分奇妙な偽名だねェ」


「偽名前提ですか…」


「偽名だろ?」


「いや、まぁそうですが…」


「そっちのは?」


 お人形さんを指さす。


「……人形にまで証明書なんているんですか?」


「!イヤイヤ、怒らないでくれよ、火の巫女様は気が短いんだ、見た目が人間なら間違いなくカードを見せることを要求してくる。火の巫女様と戦うのはオススメしないよ?」


「…はあ、そういうもんですか。いや、別に自分は怒ってはいませんが…。そうか、名前か…」


 お人形さんをちらりと見る。

 名前が必要……しかし、高校生になったような人間が、人形に名前をつけるなんて痛々しさの極みじゃないだろうか。

 ……いや、これからも長く付き合っていくつもりなんだ、大事にするという決意も込めて名前はつけておくべきだろう。

 ……。名前ねえ。ミドルムガンドを横目で見る。


「フヴェ…いや、ロプトでどうだろう?」


 お人形さんに振り向いて言う。こういうのはフィーリングだろう。北欧神話にあやかってロプトでいく。


『…。別にいいが…』


 そこまで聞いて、そういえばお人形さんはここに来たことがあると言っていたことを思い出す。

 昔にもあったのかは定かではないが……この流れからするに、カードとやらを持っていても不思議ではない。


「もしかして、カードもう持ってた?」


『安心しろ、持ってない』


「じゃ、まぁそういうことで」


「ハイハイ」


 もう暗くなって来たので、リークリスト火山の地図をもらって今日はそのまま帰ることにした。


 ふふふ、明日が楽しみだなあ。


 おやすみ


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