6日目
せっかく出立の直前なんだ、朝食を食べて行こうと、久しぶりに大部屋へ向かった。
「こんなところにいられるか!」
クラスメイト達が騒いでいる。
「どうしたの?」
気になったので、クラスメイトの1人に聞いてみる。
「……1人、消えたんだよ。帰る方法も見つからない。もう皆ここから出たいんだってさ」
「へえ、なるほどなあ」
「他人事だね」
「そりゃあ、その問題は自分には全く関係ないものだからね。…しかし、城を出ていくのは自由だと女王様は言っていた。自分もじきに出ていくつもりだよ」
実のところ、帰る方法は既に検討がついているのである。
だからもう本当に僕には関係が無い。
……等価交換、簡単な話だ。
案外、お姫様は気づけないかもしれない。
「はー、相変わらず君ちょっとめんどくさいな。じゃあ私が仲介してあげるから、あいつらと一緒に行きなよ」
そんなつもりは本当に無かったが、どうやら僕が他の人達と一緒に行きたいと遠回しに言った、と思われたらしい。
しかし確かにそう勘違いされても仕方の無い物言いだったかもしれない。僕はまれにそういうところがある。
……そういえば、この娘は部活も同じでそれなりに仲良くはしてるとは言え、ここまで明け透けに話す感じではなかったような記憶があるのだが、そこまで配慮できないくらい疲れているんだろうか。
僕は勝手に自身を納得させて頷いた。
「…よろしく。火力は多分誰にも負けないから、頼りにならないこともない…と思いたいです」
それなりに歓迎してくれた。
数合わせでも仲間が増えて少しは嬉しく感じてくれているのかもしれない。
それで、
「もう出ていくメンバーは決めたのかね?」
「多分?」
……多分?
「まぁ、女王様は好きに出て行っていいと言っていたし、どうどうと正面から出よう。思いたったが吉日とも言う。…さっそく行こうぜ!」
不安になったので、とりあえずまくしたてておく。
もともと集まっていた、城を出たいメンバーが話し合いをしている。
別にコソコソ話とかではないので普通に聞こえる。
……中学校の時の配慮にかける同級生達と比べてなんて良い奴らなんだろうか。
疎外感を一切感じない。
僕は基本誰に対しても合わせない雑対応のぼっち野郎だっていうのに……。
「1つ、聞いていい?」
なんだろうか?頷く。
「その隣にいる、男の人?…誰?」
ああ、……お人形さんを見上げる。
まぁ背が高いから男だと勘違いするのも無理はないか。
「お人形さんだ。この屋敷で見つけた。木の賢者に使用許可を取りに、外へ行きたいんだ」
▫
城の門の前に着いた。
ここから先に進めない。
……ううむ。
「ウィンド!」
試しに魔法を撃ったら門が崩壊した。
……これやばいか?器物損壊の罪に問われないか?少し自問する。
「…あ、そうだ。お人形さんはこれ修理可能?」
お人形さんは頷いた。
うんうん。
「じゃあ、行こう!門番も幸いいないみたいだし、門も直る、何も問題は無い」
そういえば、あの御屋敷には使用人がパッと見全くいなかった。
僕に見えなかっただけで、実はいたのかもしれない。プロは目にも止まらない、みたいな話で。
……そもそもあのお姫様の魔法があれば使用人も、護衛も門番もいらないのだろうか。
クラスメイト達が困惑しながらついてくる。
門の破片を全員が踏み越えてきた。
お人形さんが手をかざすとまるで逆再生みたいに門が直っていく。
この現象は以前も見たが、大きい建造物だとより凄い。本当に魔法みたいだ。
まぁ実際魔法なんだろうけども、と1人で少し笑う。
「じゃあ、また」
手を振って皆と別れた。
ここから街まで結構遠い。そもそも日本の城の近くに城下町っていうのがおかしいんだけど。
しかし、これからこの世界で暮らしていくんなら、街を使うことも考慮にいれないとな。
……クラスメイト達が向かって行く先は地図に載っている街とは別の方向だが、何か目的があるんだろうと考え、言及するのはやめておいた。
「じゃ、歩いて行こうか」
『おんぶしてやろうか?』
「え、いいの?頼むよ」
『いや、別に構わないが…』
おんぶされながら日課である日記を書く。
ううむ、字がゆがむ。
だんだん眠くなってきた。
まだ昼だが……おやすみ。