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希望

「エリースくん、さては君、考えるのをやめたね?」


「ああ」


「同意されるとは」


 国父?今、目の前の青年は国父と言ったか。

 レイスカイト……国父……駄目だ分からない。


「リカもさ!いい加減覚えよう?私の名前!」


 シエルロッテの見た目をした誰かが、銀髪のサイドテールを揺らしながら憤る。


「君が王子とかジジイとか好き放題呼んでる男だよ!」


「なるほど」


 情報魔法の使い手らしい王子様か。僕にこのローブをくれた人でもある。まぁ好感度はプラマイゼロかな。僕のことを逐一監視している節もあるし。


「全くさ、逆にシエルロッテだけ名前を覚えてるのはなんで?」


「彼女は名前を覚えないから」


「ああ〜」


 シエルロッテは制作された時点で、固有名詞が覚えられないようになっていた。つまり僕の名前も覚えられない。だから僕も、自身が相手に覚えられないように名前を忘れる必要もないということである。


「シエルロッテはルーフレアの娘みたいなものでね。ルーフレアは私の叔母だからシエルロッテは従兄妹ってことになるのかな。だから私自身の肉体に近いし、こうして使わせてもらってるんだよ」


「…………。で、僕の発言のどこに反対だって?」


 ピンク髪の青年が気を取り直したようにそう言った。


 ルーフレア……王子様の叔母ってことは、土の錬金術師か?


 確かに彼女とシエルロッテの顔はちょっとだけ似ていた。自身の魔力を一定量の割合で直接入れ込んでいるってことかな。クローン体みたいな感じになるのだろうか。いや、少し違うな。ライティとシエルロッテの遺伝子構成は同じかと言うとそんなことは無いだろう。まぁ異世界人に遺伝子なんてないが。比喩である。


「あまりにも現実的じゃなさすぎる」


「お前がそれを言うのか……いいだろう。詳しく説明しろ」


「そもそも魔法って言うのは、最初に理論を打ち立てた人間が1番使いやすいようにできているんだよ」


 まぁそれはそうだ。自分が1番使いやすい形で、誰だって魔法を使いたい。起こせる現象は製作者に決定権が委ねられるのだから余計にそうなる。


 いや、違うか。魔法とは世界との契約だ。これは世界の好みの話である。

 1番初めの契約者が世界との取引相手であり、後からその契約を扱う人達は最初の契約者に倣う……この場合は魔力を使って自身をそこに近づける……をすることによって、最初に設定された契約を用いることができるって話だ。


 つまりこの王子様が言いたいのは、時空間魔法を広めるとして、その劣化した魔法で宇宙人達に対して本当に攻撃できるのか、ということだろう。


「それは風の魔道士を見ていれば分かる。だが、僕は、軍部で目標とされていた魔法の1つを実用化させただけだ。目標も過程の理論も人のもんだ。途中で頓挫していた研究を金と時間がある僕が引き継いだ形になる。魔法を完成させ、水の迷宮を攻略してみせれば有用性を示せると考えていた。……結果はご存知の通りだ。だから今現状、時空間魔法は僕しか使えない。このまま過ごしていれば、未来も同様に」


「……時空間魔法使いの条件は?」


「ああ、条件は時間を含む4次元の干渉を受けており、その上で未来の変化を願っていること、だ。誰でも使えそうだろ?」


 青年はニンマリと笑う。


 なるほど、軍部が考えていた魔法だけあって、実用性に富んでいる。


「うん。少なくとも情報魔法の、全てを知りたいと思っていて、そうするだけの熱意があり、その上で秘匿性が高い、なんて条件よりは全然マシだよ。かなり希望が持てる内容だ」


 僕は少しだけ気分が晴れたので、賛同した。

 情報魔法の条件はなんだ?1人しか使えないようにしているとしか思えない。特に秘匿性の部分は、その魔法を広めるうえで、障害になりすぎる。


「……。待って、もしかしてさ。条件以外に結構大きいハードルがあるな?」


 王子様が言う。


 まぁそうだろう。本当に誰でも使えるんだったら有用性以前に、本人達が使って試してみればいいだけなのだ。

 僕の直感も、その魔法を使うのは難易度が高いことを示している。


「……気づくか。そうだな、この魔法は一定レベルの知能が要求される。具体的に言うと、モジュラー形式を理解できるくらいの頭がないといけない……」


 ……おいおい。思わず僕も顔を歪める。

 思ったよりも高いハードルだ。そりゃあ軍部も懐疑的になるだろう。訳の分からない理論で訳の分からない現象を成立させてるんだから。


 モジュラー形式の詳細は書いているとキリがないので省く。元の世界なら分かりやすい画像とかあるんだが、僕にそれは再現できない。

 翻訳によって多少のズレがある可能性もあるにはあるが、文脈からすると地球の方と似たような難易度なんだろう。

 地球より教育水準が低そうなこの星でそれはあまりにも。


「ほらみろ、現実的じゃない」


 少し素が出てきた王子を横目で見つつ、僕は考える。


 そういえば自分は王侯貴族の子供達を代償として確保しているんだった。

 彼らは高い水準の教育を受けてきただろうし、教えさえすれば時空間魔法を扱える子供もいるのではないか?


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