表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/39

回帰する未来の顛末②

 竜と人間と神、これらで交わす新しい契約の詳細を話そうと口を開くと、目の前のワニが遮るように言葉を発した。


「……ドラゴンは義理堅いから新しい契約なんて結ばないよ」


「まあ待てよ。僕がさっきの提案をすると、銀髪の少女……リーシアが言った。あの水面をよく見てみたか?って。なんかもう1人薄く映っていたらしいんだよ」


 赤いワニがなんとなく興味を持った顔をしたので、僕も得意気になってシリアスな顔を作る。


「それは誰なんだと僕が聞くと、なんということでしょう。僕の英雄譚第3章の────」


「そういうのいいから」


「……。ほら、過去の技術に関する知識を渡すために学者もどきに会っただろ?ノアといっしょに映っていたのは彼女だったらしい」


 さすがに驚いた。

 しかし、言われてみると確かにノアと似ている。

 ケインに聞くと、彼女も伯爵の知り合いだったそうで、そういう意味でも納得だ。


 それで僕も魔物や魔族を研究していたこともあるので、魔族の遺伝関係も準備さえすれば調べられる。そこでノアとの血縁関係を調べたところ、彼女はノアの姉であるということが分かった。


「その女……レイチェルは王位に乗り気でな。ノアが自ら王位を降りて、その姉である彼女が女王になるというのは道理が通っている。だろ?」


「確かに、パパ達もそれなら納得するかも……」


 ……パパ?ワニの父親がドラゴンってことか?

 僕は考えるのをやめた。


「問題だったのは神の方だな。あいつらはルールに厳しいからな。ノアが自ら降りたという部分に納得がいかなかったらしい」


 いろいろ話してみたのだが、取り付く島もなかった。

 悪魔が攻めて来た時も、この星の危機だって言うのに静観してたらしいやつらだ、最初からそういう生き物なのかもしれない。


「そうやっていろいろ動いていたら、伯爵が僕に、申し訳なさそうに話しかけてきてな……どうやらアイツは神の子だったらしい。ハーフってやつだ、分かるよな?」


 神と魔族はどうやら生殖が可能らしいと、僕もそこで初めて知り、驚愕した。

 生殖が可能ということは、つまり同種ということだ。神はどうやら魔族の形態の1つらしい。


「それで、仲介役なら自分がやると、言ってきてな……こりゃあいい、と、話を進めた」


「うん」


「もちろん今までの国王は怒ってきてな、そりゃあそうだ。まーソイツ本体は大したことなかったんだが、ソイツと仲良くしていた竜種がちょっと面倒なやつでな。まだ幼体だったとかで、そんなに強くはなかったんだが、器用でやりにくいやつだった。なかなか苦労させられたが、僕達はどうにか勝利をおさめた。それでその竜種も国王もなんとか説き伏せて、レイチェルを女王にしたんだ」


 なぜ殺さなかったって、その方が国政を建て直すのが早まりそうだったからだ。国王はドラゴン達から見放されてはいたが、臣下達からは慕われていた。それを利用した方が、文明レベルを上げる作業も早く進められそうだと考えたってわけ。


 ま、ちょっと僕に都合が良すぎる結果だな?


「それで50年くらい経ってインフラも整って教育水準も上がり、文明レベルも無事上がって、僕は帰ることができたってわけ」


「それでこっちに帰って来て街を1つ滅ぼしてもらったの?」


「そうだな」


 なんだかんだ、僕は迷宮を攻略していたことになっていたみたいで、こっちに帰って来ると、僕の氷像とともに迷宮主に迎えられた。僕が言えたことでもないが、悪趣味すぎやしないか。

 そのため、当初考えていた通り、願い事として街の壊滅を望び、結果的に風の魔道士と交戦することになった。


 …………ん?なんでこのワニはそのことを知っているんだ?

 結局僕の功績は証拠がないとかでイマイチ認められず、僕はこうしてダラダラと暇を持て余している。そのことを知っているのは僕が報告した軍の上層部くらいじゃないか?目撃者は全員始末したし。

 少し気にはなったが、とりあえず気にしないことにした。


 ……あそこまで頑張ったのになぁ。まー何かが欲しくてやったわけじゃないからいいんだけど。


 姪っ子に養われながら、こうして怠惰に過ごすのも存外悪くはない。


「……罪悪感とかないの?」


「あるぞ」


 あるけどあんまり気にならないんだよな。思考を分割してしまえているというかそんな感じか。他人事みたいに感じるのだ。

 だからこそ僕は、腰掛けで入った軍部で、研究者としてそこそこの業績を成し遂げることができた。

 時空間魔法を成立させるために、何人犠牲にしたと思っている?特にワープの実験の時なんて酷いもんだった。いちいち気にしてなんていられない。


「僕は時空間魔法を誰でも運用できるように研究を進めている。結果論にはなるが、悪魔にも対処できるぞ?僕の魔法は」


「それって本当!?」


 目の前の赤いワニが目を輝かせたと思ったら、人型になった。

 ……何も考えたくないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ