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回帰する未来②

「1人で良いと言ったのだけれどね」


 そうぼやく。


「一体で魔物を倒せる精霊なんて聞いたことねえぞ」


 同行者にそう言われる。

 どうやら魔物は魔物呼びのままらしい。


「いかにも知っている精霊が少なそうな発言…と、そもそも精霊は珍しいんだったか。前はまぞk…人間よりも多く、繁栄していたのがなぁ。この1000年で何があったんだろうな」


「そんなこと俺が知るかよ」


「ああ、別に君には聞いていない。それじゃあ、依頼の場所に行こうか」


「……」


 

 ▫



「へえ、これが1000年後の魔物か」


 全体的に強くなっているように見受けられる。

 理由は不明だ。

 そもそも僕はこういうのに詳しいわけではない。

 木の賢者……まだ生きているなら、会いに行くべきだろうか?


 1000年前の僕は大罪人だったから殺されていたかもしれない。しかし、今の僕は水の魔法で罪の精算をしたので、会いに行っても問題は無いのかもしれない。その代償がこれなんだから、なんにも嬉しくないが。

 木の賢者には会えるなら会いたいところだ。どんな風に会話をするか脳内でシミュレーションしてみる。



 ───────



「……俺の勘が今すぐお前を始末しろと言っている」


「」


 そして僕の意識は消えた。



 ───────



 …………やっぱ無しで。


「スパチーム・フレカース」


 魔物相手に魔法を放つ。

 どうやら僕の魔法も弱体化しているらしい。

 結構な大魔法を使ったはずだが、魔物の首を360°回転させただけで終わった。


「スパチーム・プリーワートム」


 血しぶきがこちらにかからないようにする。


「うわっ」


「なんだ君、ベテランという割には血しぶきすら避けられないのか」


「うるさいな…まさか瞬殺だとは思わなかったんだよ!そういうお前は返り血がついてないな?ああ、精霊だからか。ってお前、俺にもかからないようにできただろ」


「ふん」


 そりゃあ僕にかかればできるに決まっている。

 しなかった理由はさっき言ったので、弁解はしない。

 避けられない自分の技量を恨むんだな。


「依頼はこれで終わりか?随分楽だったな」


「ま、初級だからな」


 初級。

 初心者用のモンスターってことなんだろう。

 初心者にやらせるのはだいたい薬草とりだと思っていたが……確かに目覚めてから1度も草らしいものを見ていない。

 なければ、採取することもできないと。


「ふむ、大分状況が把握できてきたぞ」


 こういう時は図書館にでも行った方がいいのかもしれないが、僕に今使われている文字が読めるとも限らないし、何より僕は本というものを一切信用していないのだった。

 こうやって地道に情報を集める方が僕に合っている。


「僕が今受けられる依頼の上限はどのくらいなんだろうな?」


「別にどのくらいでも受けれるだろ、この感じだったら」


 昇級試験のようなものはないらしい。

 ……これが試験だったのかもしれないが。



 ▫



「お、精霊様」


「精霊様?」


 行く場所もないので、宿から近いギルドにまたなんとなく訪れていると、昨日の冒険に同行してきた男が僕に話しかけてきた。何やらニヤつきながら近づいてくる。


「聞いたぞ、お前上位精霊なんだろ?道理で魔物を倒せるわけだ!」


「ああ、……今更おだてても契約はしてやらんぞ」


「するか!!」


 慌てたように否定するが、顔が焦りで強ばっている。図星らしい。相変わらず魔族は表情が分かりやすいようだ。


「……まーいいか、ちょうどいい。おすすめの依頼はあるか?できるだけ難易度が高い物で頼む」


「……お前なぁ。これはどうだ?ドラゴン退治だ」


「ふむ」


 文字は予想していた通り全く読めない。

 要はこれが本当に難易度が高いものなのか僕には分かりかねるということだ。


「受付さん、1番難易度が高い依頼はどれか教えていただけますか?」


「ええと、そうですね……これでしょうか?」


「ちなみにこの依頼は?」


 さっき見せられた依頼を見せた。


「ワイバーン退治ですね。Bランク依頼なのでエリースさんなら問題なくこなせると思います」


 僕の後ろを見た後、受付嬢……おそらく女だと思う、は表情を消してそう言ってきた。魔族の性別は分かりにくいな。性差で魔力に違いがあまり見受けられない。女の方がちょっと魔力量が多いかな?というくらいだ。


 しかし、深刻そうな顔だな。何かあるのだろうか。まーどうでもいいことか。


「じゃあ僕はこの1番難易度が高い依頼をもらっていく。それで内容を説明してほしいのですが……残念ながら僕は文字が読めなくて」


「これをですか!?え、ええ。分かりました。……これはかつて存在したと言われるフェンリル、その写し身に対する討伐依頼です。なんでも古代の魔法使いが再現しようとして失敗したとか」


「あー、ミッシリンドレンクの失敗作ウォルリフレストか。これがここのフェンシルブスなわけかよ」


 …………は?

 何を言っているかさっぱり分からないが、受付嬢の言った言葉ならよく分かる。つまり、彼女は最近の知識に疎い僕のために噛み砕いて説明してくれたわけか。


 薄々思っていたが魔物は1000年前より強くなっているようだ。

 なんだよフェンリルの写し身って。フェンリルってあれだろ?巨人を丸呑みにできる狼。そんなもんが出歩いているとかここはディストピアか?


 討伐依頼があるということは拘束されているオリジナルと違って普通に出歩いていそうだ。さすがにオリジナルよりは弱いと信じたいが……。


「この辺りで1番頭が良い奴を教えてくれ」


 実践派の僕ではあるが、いろいろ心配になってきたので、学者よりの人間を頼ることにした。


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