護衛の内容
「おはよう」
「おはよう。…昼だけどな」
「いつものことだね」
前は冷夏ちゃんの方が起きるの遅かったけどね……。
いや、今も12時過ぎても寝てるのが冷夏ちゃんだ。まぁ僕と違って、寝るのもめちゃくちゃ遅いんだが。夜型なんだろうな。
そういえば、冷夏ちゃんは異世界においてきたために心配だったが、思い返すと普通に中学校にいたから大丈夫だったんだろう。
結果的には帰れはしたんだろうが、今この異世界にはいないのだろうか。
「いや、本当に久しぶりだね。こういうときは昔のことを思い出す」
───────
僕と冷夏ちゃんは異世界に突然連れてこられ、戸惑っていた。
目の前には女の人の■■が落ちていて……。
昏い、しかしきらきらとした、不思議な場所だった。
「…あれ?」
人が近づいてきた。
長いふわふわの金髪を持つ女の人だ。
「なんでここに人が…。やっぱり見回りに来ていて良かった。ね、兄さん」
「…。知るか」
後ろからたくさんの色を混ぜたような黒髪を持つ、少年が現れた。
ずいぶん小さい。
───────
「そういえば、妹さんは元気にしてる?」
「…。もう死んだ、寿命でな」
木の賢者とその妹は、それぞれ別のタイプの魔族のハーフ……というかキメラだ。木の賢者はこのとおり長生きする魔族側の形質が強く出ているが、妹は僕の元いた世界にいた人間にかなり近かった。そういうこともあるだろう。
「へえ。そんなに時間が経ったんだねぇ」
「…。お前はそういうやつだったな」
木の賢者は懐かしそうに遠い目をした。
「で、結局昨日言ってた護衛ってなんなのさ」
「…。この国の女王の暗殺未遂に関わったと見られるギルド長を捕縛しに行くんだ」
「ギルド長?昨日会ったけど」
水色に反射する金髪を思い出す。
そういえば紫色の目をしていたな……。女王の親戚かな?
確かにあの少女相手なら木の賢者と言えども護衛も必要だろう。
「…。相変わらずお前はタイミングが微妙に良くないな」
「そういえば、街の人に聞いたから着けたけど女王のお住いがこのお屋敷なんて…お城はどうしたんだい?」
前は木の賢者が作ったらしい立派なお城があった気がしたけど。
「…。そのギルド長に破壊されたんだ。…。若干12歳で。数多くいた王族も3人を残して全員殺された」
12歳……あぁ、異世界人も寿命同じくらいだったっけ。じゃあ相当幼いな。
「処刑されないんだねぇ」
「…。もう2人しか残っていない、王族の1人だからな」
少なくなった1人は……。ああ、あの王子か。いや、もう王子じゃないんだったっけ。
「しかし、王族って言ったって王の血をひくものは結構いただろ?目が使えるのは希少だろうが、全くいないわけでも…」
「全員殺された…。隣国の杜撰な革命なんて比じゃないくらい徹底的に。統制の取れた集団で」
なるほど?
「今の女王はかなり継承権が低い子供だった…。賢く、強い。だけど、人格面に大きな問題があった」
「そういえばこのお屋敷血まみれだったね」
「…。俺の家なんだけどな…。いや、気にしてない、うん。貸したのは俺だから。気にしてない」
木の賢者が死んだ目になっている。
こいつは昔から表情がない割に結構分かりやすい。
……だから、安心して接せられる。
「…。最近物騒だからって、御屋敷を改造させられていた。少し前に全て終わった。…。終わりきる前に襲撃があったけどな…」
僕のタイミングの悪さをよく揶揄する割に、大概木の賢者も間が悪い不憫なやつなのだった。懐かしいな。
「ギルド長はもう支部にいなさそうだね」
「…。だろうな、明日行くか。そういえば、お前のクラスメイト?らしき人達がいるが、会いにいくか?」
クラスメイト……ってことは冷夏ちゃんはいなさそうだな。
「いや、いいや」
どうせ僕は友達のいない人間なので。
まぁボッチって言ったって、教室の真ん中で堂々と飯の食えるタイプの完全無欠ボッチなんだが。何を言っているか分からなくなってきたな。
「せっかくなら、昔のパーティメンバー集めたいね」
「…今生きてるのは、…連絡とれるのは何人いるか…」
今日はこれくらい。
おやすみ




