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章初めのプロローグ

「ここどこ」


 目が覚めたら、1回来たことのある異世界だった。

 あと、男になっていた。まぁこの世界のトイレは男女共用で全て個室なので支障はほぼないか。


 わけがわからない。


「あぁ、ここは木の賢者の家か」


 なんで?

 僕は異世界から帰ったあと、すっかり忘れて元の世界を楽しんでいたっていうのに。

 なんでまた異世界で、記憶があって、そして1人?


 地面がえぐれている。


「どういうことなんだこれ…」


 1人でいると、どうも独り言が多くなる。


 木の賢者の家って言うと、冒険者ギルドが近かったような気がする。行ってみるか。


 

 ▫



 道はもちろん覚えていなかったが、街を行く人達に教えてもらって着くことができた。


 前来た時と比べると、住人の服装が大分様変わりしている気がする。


 ギルドもずいぶん見た目が違う。

 扉を押し……じゃなかった。この異世界は何故か外開きが多いのだった。


「やあ、久しぶりだね」


 水色に反射する不思議な金髪をポニーテールにした

 少女が声をかけてきた。

 ……久しぶり?

 もしかして僕はまた何か大事なことを忘れているのだろうか。


「こんなに久しぶりだと、もう自分で決めた偽名も忘れてそうだねェ。名前は言えるかい?」


「あ…」


 芥川里香……じゃないよな、偽名だもんな。


「…アール・グレイ?」


 ジョークのつもりで言ってみた。


「よく分かってるじゃないか、安心したよ」


 合っていたらしい。

 僕が忘れっぽくても案外やっていけるのは、僕にこういうところがあるからだ。

 何年経っても一切考え方が変わらない。


「それで、冒険者ギルドになんの用だい?」


「いや…そういえば貴女はギルド長でいいんですか?あと、雷の魔法が使える?すごいですね…」


 雷の魔法…1回だけ見たことがある。

 一応分類としては光魔法だ。

 代償は重く、扱いも難しく、攻撃力も火魔法に劣る。

 正直使うやつなんて真性のマゾヒストくらいしかいないと思っていたけど……。


「…分かるかい?この国の伝説の女王シエルエッタ様が使っていた魔法だ。髪型も寄せている」


 嬉しそうだ。

 シエルエッタには全く似てないが…シエルエッタはサイドテールだったし。

 数十年やそこらで記録が消えるとも思えない。……今はいったい何年なんだ?

 まぁいいか。


「そうだなぁ。せっかく冒険者ギルドなんだし、冒険したいな」


「いいねェ。これとかどうだい?」


 紙を渡してきた。


「なになに…木の賢者の護衛?」


 いらないだろ……。


「というかこれ、僕への指名依頼じゃないか。白々しい」


 

 ▫



 現女王のいる御屋敷にいるらしかった。


「指名されていた風の魔道士のアール・グレイですよー」


 扉の前で言ってみた。


「…。お前思い出したのか」


 扉が開いて木の賢者が顔をのぞかせている。


「入っていい?」


「もちろんだ」


 木の賢者はじと目で頷いた。

 相変わらず奇妙な黒い髪だ。


「あれ?身長伸びた?」


「…。お前と比べたら伸びてないようなものだ」


 木の賢者は身長がほとんど伸びなくて悩んでいるところがあった。10年かかって1mmだっけか。それを思うと相当年月が経っているらしい。


「そういやさ、木の賢者。なんで自分が男になってるか分かる?なんかこういうわからないことあると、ちょっと気持ち悪いね」


「…。相変わらず俺の名前覚えてないんだな。…別に、いいけど。…。ええと、お前が男になった理由は、おおかたレイスカイトだろうな。うん、この魔法の使い方は絶対そうだ」


「…誰?」


「お前…」


 じと目がより強くなった気がする。呆れられている。仕方ないだろ、人を覚えるのが苦手なんだから。


「この国の王子…。ではもうないんだったな。金髪紫目の元首代理だったやつだ」


「あぁ…あの王子か。まだ生きてんの?」


「いや、…人間にしてはかなり長生きだったが、つい最近死んだ。異世界人を大量に召喚して。おそらくそれに巻き込まれたお前は、その時に何かされた」


「全く覚えてないなぁ」


 木の賢者が長生きと言うなんてどれくらいなのか。200年くらい?いや、彼は結構基準が正確だ。人間としては、としているのだから、それ相応だろう。ってことは150年とかそこらか。思ったよりは時が経っていないようだ。

 ってことは木の賢者は単純に成長期が来てるんだな?


「しかし、よく自分だって分かったね…あれ、今自分の顔ってどうなってんの?」


「昔と同じ、自身満ち溢れたイケ…ではないな、雰囲気イケメンだ」


 前と同じ評価だ。いや、前は女子中学生に雰囲気イケメンという評価はどうなんだ、とは思ったが、翻訳のあやだろう。


「やったぜ。そう言う木の賢者は相変わらずかわいいねぇ」


「…。適当なこと言いやがって」


 木の賢者がじと目に死んだ目を追加した。

 まぁ実際、僕には人の美醜なんて分からない。

 しかし皆がそう言ってるからには、木の賢者は美少年なんだろう。


「…。だけど、なんでわざわざお前を男にしたんだろうな。…。確かに、お前は男の方が、正しい、という感じがする。…。俺はお前と違って、木魔法以外には詳しくないから自信はないけど。したいことは、風の魔道士の強化…。なんで?」


 ブツブツ言っている。


「で、どうして自分を呼んだんです?護衛ってわけじゃないだろ。そもそも護衛いらないよね」


「…。俺そのものは貧弱な少年だ。…。そういうことは明日話そう。今日は休め」


 遅いから。

 そう言った。


 日記も新しくもらって、ベッドも貸してもらった。


 おやすみ。


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