49日目
1ヶ月たった。
特段書くこともなかったから、日記はおやすみだった。
さて
「あ、おはようございます…国外脱出します?」
「もう昼だよ…。でも国外脱出するなら今が1番いいだろうな」
「ぼくになにか言うことないの?」
ワニさんがきらきらした目でこちらを見ている。
「あ、3位おめでとう」
何回言わせるんだ……。
「言うほどでもないよ、えへへ」
▫
ということで、隣国に帰って来た。
王子とその同胞の妹と弟はお姫様のお屋敷で歓迎されていた。
良かった良かった。
「…帰るとこどうしよう…」
一応小屋に1回帰るか……。
おじさんは家から出れない契約だし、食材も尽きてきている頃だ。
「じゃあお人形さんよろしく」
▫
「久しぶり」
「…手紙が届いていますよ」
「ありがとう」
手紙ねえ。日付は三日前だ。
封を破った。
お姫様からだ。
契約を果たせ?まぁいいけど……。
凍りついた町にいたこともバレている。
いや、バレているというか、おじさんが手紙を送ったみたいだ。他人事のようだがとてもいい仕事をしていると言わざるを得ない。
ええと、それでお屋敷に行けばいいのか。
「じゃあ、お人形さんよろしく」
ああ、魔石をリークリスト火山で補給するんだよ……。
▫
「お久しぶりです」
「ええ」
とくに変わった様子はない。
「要件というのは?」
「どうやら隣国の革命に呼応して、この国に革命をしようという動きが出ているのですわ。…応戦してくれませんか?」
「いいですよ」
僕がいれば勝ったも同然だろう。
全て消し飛ばしてくれる。
「隣国とは関係を良くしようと動いていたところだったんですけどね…。難しいものですわ」
お姫様がため息をついている。
「…自分は広範囲殲滅役であろうから関係ないとは思いますけど、首謀者は誰なんですか?」
「…殲滅しないで捕えてくれると嬉しいですわ。そうですね、首謀者は、貴方のクラスメイトです」
その後に名前は聞いたが、誰か分からなかった。
そうか…クラスメイト……。
なんで革命?関係ない気がする。
…チェ・ゲバラ的な感じなんだろうか。チェ・ゲバラって顔がかっこいいよな。何をしたかは、実はよく知らない。
「ちなみにそいつはかっこいいですか?」
「…その質問はどう意味ですか」
呆れられた。そのまま続けて、
「そうですね、かっこいいほうではあると思います」
「それはまずいですね…」
「どういうことなんですか…」
かっこいい男にはやっぱり求心力あるからなぁ。
失敗しても、革命家として顔が印刷されたTシャツなんかが出て、お姫様が悪者にされかねない。
……革命って失敗したら暴動の扱いになるんだっけか。
「じゃあ小屋に帰ります」
▫
「さて、凍りついた人達だが…」
放置していたが、考えないといけない。
あれは完全に死んでいる。ファンタジーよろしく生きたまま凍っていたりはしていなかった。
風の魔道士の日記によれば、水魔法でそういうこともできなくはないらしいが。
……鍵が死んで小屋の扉はもう開かないから、記憶を辿るしかないが。
彼女らの死体はそのまま残っている。
そういう意味では止まっているのかもしれなかった。
そうして蘇生となると、
光魔法…は難しいだろう。あれは、誰でも使える魔法とはいえ、代償が重すぎる。そもそも光の聖女クラスがそういてたまるか。
水魔法…これは1番よく分からない魔法だ。内容は罪の精算…らしい。
これを使うと、動かせはするだろうが、それだけだ。ゾンビみたいなものだな。これは水の迷宮という塔に行けば、世界一の水魔法の使い方が上手いやつに協力をしてもらえるらしい。隣国の図書館に置いてある本に書いてあった。
隣国の図書館は大きくてとても楽しかった。
魔法に対する造詣も深まった。
1ヶ月ずっとあそこに籠っていた。
……あの黒い少年はその、迷宮の水魔法の使い手ってことなんだろうな。
火魔法と風魔法…論外である。氷ごと消し飛ばして終わりだ。
木魔法…契約の魔法。生と死が契約である以上蘇生は契約違反にあたるので使えない。
世界にとって生き返ることが大切であると判断されれば使えるのかもしれない。
土魔法…これも今回は使えない。…土っていうか金魔法のような気もする。翻訳の都合か。そもそも生物には使えないし。
闇魔法…これは精神干渉魔法だ。とはいえ使えたのは旧代の魔王だけだから詳細がわからないとかなんとか。風の魔道士の日記にもほとんど記載がなかった。代償を前払いする魔法ではないかという推測のみだ。
間違いなくあの襲撃者は闇魔法使いだろうが…。
どっちにしろ今回は使えない。
時空魔法…正直これが一番目がある気がする。
あの青年が使っていた魔法だ。
頼んではみたが、無理と言われた。
時空魔法はかなり難しいらしく、使い手がほぼいない。
僕も一応使えるが、魔力要求量が多いので、あまり使いたくない。魔力要求量はその人がその属性に対しどれだけの適正があるかで決まる。適正が高いほど魔力要求量は多い。
つまり僕の風魔法適正はとても高いってことだ。適正を数値で表すと100らしい。もちろん100点満点で。
……。結果として、蘇生するのは異世界パワーを持ってしても無理そうである。
元の世界よりはまだ可能性はあるんだけどね。
『風の魔道士の日記は?』
…情報魔法。風の魔道士の日記に書いてあった魔法。
図書館のどこを探してものっていなかった。
当時のこの国の王子が使えたらしいが…詳細は不明。
しかし、この魔法を使えば、代償を踏み倒しながら魔法が自由に使える。
「でも使い手いないしなぁ」
……とりあえず、今日はここで終わり。
おやすみ




