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15日目

 あの王子から依頼の手紙をもらっていた。


「今日はまだ護衛はいいから、盗賊を討伐してくれ?生きどりだとなお良し、と。なるほど…」


 やっぱりあいつ王子じゃなくて商売人だよなぁ……。


「お人形さん、あの青年がやってたどこでもドアできる?」


『ああ』


 出現した扉を開き、指定された場所に着いた。


 盗賊…盗賊…お、いたいた。

 騒いでいる。


 ふふ……。今日の僕はひと味違う。

 あの王子から武器をもらっているのだ。


「スレイ!」


 僕に気づいたらしく、振り返ったやつの腕を切り落とす。


「スレイ、スレイ!」


 逃げられたら困るので足も切り落としておく。


「…治るの?それ」


 肩に乗っているワニさんが聞いてくる。


「まぁ、本には光の魔法を使えばくっつくって書いてあったし、治る…と思いたい」


「じゃあいいか…」


 ワニさんが微妙な顔をしている。

 いやでも盗賊だぞ?彼らはきっと腕切断どころでは無い悪行を繰り返してるだろ。それにほら、盗人の刑罰で昔あったらしいし。腕切断。確かに盗めなくはなるかもしれない。


「じゃ、これを…どこに転送すればいいんだ?」


『昨日のお屋敷とかどうだろう』


「いやあ、流石に王子ともあろう人のお屋敷を汚すのは駄目でしょう」


 本当にどうすればいいんだこれ。


「…僕が運ぶ」


 後ろから声は聞こえた。

 振り向くとこの前のピンク髪の青年がいた。


「僕も頼まれて来たが、もう終わってるとはな…。お前の活躍はしっかり話しておくよ、じゃあな」


 そう言って一瞬で消えた。


「じゃあ、…帰るか」


 

 ▫



「暮らすためのベッドがない」


 結構重大なことに気がついてしまった。部屋もないしベッドもない。

 そういえば昨日はあのお屋敷のベッドで寝たのだった。


「…ホームレス?」


 なんか嫌だなぁ。やはり拠点はあった方がいい。


『とりあえずあのお屋敷に1回帰ろう』


「そうだね」


 お屋敷へ戻ることにした。



 ▫



「ああ、別に言ってくれれば家くらい貸すよ。別荘なんていっぱい持ってるし」


 僕が、住むところがない、と訴えると王子はそう答えた。


「…いや、大きい家とかあっても持て余すんで、宿とか紹介してくれませんか?」


 家事と会話、あと人との取引が面倒で結局最終手段を頼ってしまったことを思い出す。

 ……もう一度ドレイと契約したところでな。また同じことを繰り返しそうな気がした。おじさん怒ってるかなぁ……失望してるかもしれない。だって僕が付き添いにいるから大丈夫なんて約束してしまったのだから。


「…。あ、この屋敷の1部屋貸してやろうか?ベッドはいくついる?サイズは?」


「マジですか、ありがとうございます。1つでお願いします。…いえ、シングルで充分です」


 1つと言うと、ニンマリと相手の口角が歪んだ。要らぬ勘繰りをされそうだった。

 ……僕のお人形さんはそういうものじゃない。

 幸いワニさんはまだ肩乗りワニ形態なのでそこまでは勘違いされてないが。


 前から思っていたが、ワニさんの変身魔法は、質量保存とかどうなってるんだろうな?

 異世界だから関係ない?……どうだろう。


 そういうわけで、部屋を無償で借りれることになった。


 

 ▫



「あの青年はどういう取引をしたんだろうか」


 少し不思議だ。

 僕の火力とお人形さんの防御力の高さを考えると、あのピンク髪の青年まで護衛にされているとは考えがたい。必要ないというか過剰戦力だ。まぁ向こうの方が馴染みではありそうだったので、過剰なのは僕達の方かもしれないけれど。


『暦に近日武闘大会が開かれると書いてあった』


「おそらく今回の主催国はこの国」


『そうして、毎回各国の戦力を潰しに攻撃しに来るやつが出てくる。…各国の猛者たちは強いとは言え、無敵ではない』


「なるほど、そう考えるとあいつは大会の警備の強化要員か」


『だろうな』


 警備の1人にするには僕は火力が高すぎるし(周りを巻き込みかねないという意味で)、お人形さんはコスパが悪すぎる。


「僕、出たい!」


 肩のワニさんが目をきらきらさせている。


「…そういや、君の戦闘能力ってどれくらいか知らないな」


「強いよ!僕つよつよだよ!」


「じゃあ行ってみるか…」


 相変わらずワニさんは可愛いな。

 しかし、どこに行けば参加できるんだ。


「お人形さん分かる?」


『ここの近くの冒険者ギルドに行くのがいいだろうな…冒険者になったんだからな』


「へえ。じゃあ、行こうか」


「うん!」


 ワニさんはそう頷くと、くるっと回って、少年の姿になった。

 

 ▫



「大会の登録ですね」


 前、受付であった少年だった。


「大会の処理で各国のギルド職員が収集されているんです。はぁ、忙しい…」


「…自分が前会った、あの水…金髪のお姉さんもいると」


「あぁ、あの人は…いませんよ。いろいろ立場があるんで」


「へえ」


 強そうだし、こういうのも好きそうだと思ったんだけどな。身分が高いのだろうか。

 そうすると冒険者ギルドの受付をやっていたことが矛盾するが、貴族の道楽とかそういうことか?


「大会は明日です。きちんとこの時間に、あそこに見える大きい建物で受付をすませてくださいね」


 ギルド職員の少年は、そうワニさんを見ながら言った。


 ……ああ、そういえば日程を確認していなかったけど、明日なのか。


 

 ▫



「そういえばワニさんは人型で大会に出るんですか?」


「もちろんだよ!人間の文化を知りたくて大会に出るっていうのに、人型じゃなかったら、やっぱり味気ないよ」


「へえ、そういうもんか」


 魔族は人間……異世界人とは違うっていうのによくやるよ、本当に。

 魔族は人型の魔物であると本には書かれていた。

 まぁ、人間も言ってみれば、人型の動物だ。そんなもんだろうが。


 根本的にものが違うのだ。

 幸いお互いそれなりに仲良くやってるらしいが……。


 お姫様が言っていた、魔王というのは魔物の王であり、人間に敵対するとかなんとか。

 風の魔道士の日記にいずれ来る災厄…みたいなもの、と書かれていた。


 ……眠くなってきた。

 もう夜も遅い、寝よう。


 おやすみ


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