09●『未来少年コナン』(8)一杯の紅茶から……怪物ヒロインの下剋上
09●『未来少年コナン』(8)一杯の紅茶から……怪物ヒロインの下剋上
で、『未来少年コナン』の最上美味は、なによりもモンスリーが味わう“ハイハーバーの紅茶”に尽きるでしょう。
じつのところ、あの一口で、彼女はググッとハイハーバー側へ転んだと、筆者はみているのですが。原始的な本能もひとからげで人間性そのものを一気に惹き寄せ、あっちとこっちの境目の分水嶺をチョコッと超えさせる力、それが一杯の紅茶に象徴されているようです。
美味いものは、強い。
ハイハーバーの紅茶はモンスリーを20年前の記憶の世界へと誘い入れ、自分にとっての真の幸せを再考させる契機となります。
あの頃の自分は、今の自分じゃなかった……と。
そんな、根源的な気付きまで、させてくれたはずです。
一杯の紅茶が、まさに魔法の妙薬となったわけです。
それにしても、庭のベンチで憩う彼女が幻視する20年前のモンスリーちゃんの美少女ぶり。
アスカ・ラングレーが超絶シアワセになったみたいな……。
第19話のこの場面、全編を通じて最も重要なターニングポイントでありますね。
なんとなれば……
この瞬間、モンスリーがラナの人気をガブリと食ってしまったから……なのです。
それまでのヒロインは、明らかにラナでした。
可憐にしてひたむきで健気、コナン君を救うためにバラクーダ号の搭載艇を操り、口移しで酸素を運ぶなど、その行動力と献身ぶりは満点のヒロイン。文句なしです。
しかしここに、怪物的なライバルがのしてきました。
過去の自分に激しいトラウマを持つ、かつての……いや現在もお美しいモンスリー女史。
本当は善良で愛らしい女の子だったのに、“大変動”で真逆に変えられてしまった、悲劇の美少女。
新たなるヒロインとして貫禄十分です。
この場面をもってして、『未来少年コナン』の看板は掛け代えられたのです。
『未来美女モンスリー』の物語に。
“大変動”の地磁気ポールシフトに匹敵する、コペルニクス的転回です
ヒロイン下剋上。
そう、運命的なまでのヒロイン交代劇です。
なんとなれば……
その後のラナは、ギガントが滅ぶまでの間、活躍が封印されるのです。
あれほど熱望してインダストリアへ戻ったものの、地下世界の人々を救うためにみずからをレプカに差し出してしまい、人質になっただけ。
ピンチをさらなるピンチに差し替えてしまったのです。
そのため、ダイスやモンスリーに地下住民とラナとラオ博士の救援のため、大暴れする動機を与えてしまったのでした。
そうやってライバルヒロインに、大舞台の花道を譲ってしまったのです。
ここに、宮崎監督の絵コンテの超狡猾……と申しますか、恐るべき伏線力と言いますか……
“そうなのです、じつは、これは全編、モンスリーちゃんのお話だったのですよ、ワッハッハ”
と、オトナのアニメファンに暴露しておられるのだ……と筆者は確信するのです。
だってね。
最終話『大団円』の後半部で、まるで少女のように朗らかに駆けて、《《一番最後に》》バラクーダ号に乗り込んで、すなわち《《一番最後に》》ハイハーバーに別れを告げたのは、モンスリーなんですから。
直前の婚礼シーンに加えて、最後の最後でトリを取って、さりげに目立っているのです。
フフフ……、センターはこのあたしよ! と。




