441●戦争映画としての『風の谷のナウシカ』⑧平和を脅かすペジテゲリラ、“替え玉さん”の美少女ぶり! 観たいね“学園ナウシカ”。
441●戦争映画としての『風の谷のナウシカ』⑧平和を脅かすペジテゲリラ、“替え玉さん”の美少女ぶり! 観たいね“学園ナウシカ”。
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●ペジテの残党、テロ組織化と暗殺集団。
クシャナが率いるトルメキア軍が去ったのち……
風の谷の実質的な国家元首として地域を統治するナウシカ。
恐れていた通り、彼女の心の平和を乱す、獅子身中の虫というべき疫病神が台頭してきます。
ペジテの残党たち。
後年、“ペジテゲリラ”として世界の黒歴史に暗躍することになるアサシン集団。
もともとはクシャナのトルメキア帝国軍によってペジテ市が滅亡に追い込まれた際に、数隻のブリッグに分乗して空中避難で生き延びた千人ほどのペジテ王族と貴族たちでした。
彼等の頭目であるペジテ市長は、風の谷に仕掛けた“王蟲暴走作戦”をナウシカが止めてくれた事で、トルメキアに対する戦闘をやめ、“ペジテ避難民”となりました。
彼らの半数は、風の谷の村人と同化して、共に働くようになります。
村の片隅に寓居して、その仕事に参加。
水源地を守っていた森を焼いてしまったので、風の谷は深刻な水不足に陥ります。
飲料水は確保しても、腐海の胞子や瘴気に汚染された水は農業用水にも使えません。新たな井戸の掘削が急務となります。
アスベルをリーダーに、風車井戸の櫓を建設する場面があり、また、風の谷の村人とペジテ人が、子供たちを中心に一緒になって、焼け跡の森に植林する場面も映されます。
村の年寄りたちは腐海に出かけて、王蟲の殻などを手に入れ、さまざまな道具や工業製品に加工します。
腐海に若者でなくもっぱら年寄りが出向くのは、身体が化石化してゆく“腐海の病”が原因ですね。
まだ罹患していない健康な若者はできるだけ空気の綺麗な村で仕事させ、病に取り憑かれた高齢者が、罹患リスクの高い、腐海での仕事に回っていくようです。
腐海の病魔と隣り合わせの、哀しい現実がそこに。
それでも村は少しずつですが、平和に復興していくようですね。
一方、ペジテ避難民の残り半数は、ペジテ市長をリーダーとして、酸の湖の西岸のほとり、星船の残骸の近くに難民キャンプを設営するに至りました。
かれらは風の谷に同化するのではなく、残されたブリッグや飛行ガメを稼働して、滅びたペジテ市に遺骨埋葬と資源回収の調査隊を繰返し派遣します。
ペジテ市から腐海の胞子に汚染されていない先史文明の機械類を発掘し、街全体が腐海に呑み込まれる前に可能な限り資源回収をはかって、工業都市国家であったペジテの技術を温存しつつ、その技術と製品を、風の谷の人々へ売り渡すビジネスを育てていきました。
機械類の多くは合成セラミックでできており、その修理には王蟲の殻を用います。
セラミックも王蟲の殻も、酸の湖の湖水で溶解することは無いので、その水で洗浄すれば、有害な胞子を溶かして除去することができました。
そして、さまざまなメカを修理し、再利用するのです。
こうしてペジテ避難民は、風の谷でもっぱら農業に従事するグループと、酸の湖の西岸で工業に従事するグループに分かれてゆきました。
いずれも風の谷の住民とは友好関係を築き、互いにウインウインのコミュニティを形成してゆくのですが……
そこに、不穏な第三勢力が台頭してきます。
ペジテ市長を非公式のボスとする、秘密のマフィア組織。
俗にペジテゲリラと呼ばれることになる暗殺者の集団。
その目標はただひとつ、“クシャナ殺害”。
ペジテ市を滅ぼし、市民のほとんどを虐殺した、憎むべきトルメキア帝国の極悪人、クシャナに復讐を誓った人々です。
まだ組織は百人に満たない規模ですが、かれらは身分を偽って武器を隠し持つと、 村々を巡る行商人に変装して、クシャナが指揮するトルメキア辺境派遣軍のあとを追い、暗殺テロのツアーに出かけて行くようになります。
クシャナに侵略されて戦う、各地の“反トルメキア勢力”と手を結び、クシャナの間近にせまって、彼女を暗殺する。
それも、最大限に残虐な方法で。
クシャナの軍勢にペジテ市を焼かれただけでなく、家族友人を皆殺しにされた怨みです。
ナウシカがどれほど「もう殺さないで!」と説得しても、敵の首魁であるクシャナだけは許せない。
市中引き回しの上、磔獄門で釜ゆでとノコギリ轢きに車裂きを重ねてアイアンメイデンに挟んでからギロチンして首を晒しても飽き足らないほどの怨念です。
クシャナから何度となく返り討ちに遭っても、ペジテゲリラはあきらめず、彼女を追い求めてゆきます。
ペジテゲリラへの対応にナウシカは頭を痛めますが、彼等には同情する余地がありすぎるうえ、非合法の暗殺活動は“風の谷”の法律が及ばない国外で行われるので、取り締まりもできません。
もしもペジテゲリラを処罰すれば、「ナウシカはクシャナの飼い犬、トルメキアのポチだ、トル犬だ!」と、逆に指弾されてしまいます。
そもそもクシャナの横暴が招いた自業自得。
いくら何でも、彼女は殺しすぎたのです。
さすがにナウシカも、手をこまぬいてしまいます。
それに、もとより地下に潜った秘密活動。
実体をつかむだけでも容易ではありません。
ペジテ市長は何食わぬ顔で、ナウシカに愛想よく従ってくれますし。
それにペジテ市民の工業技術は、風の谷に大きく貢献してくれています。
王蟲に壊されたガンシップの再生、そしてメーヴェ新型機の量産。
それが絶対に必要なのです。
だから一蓮托生、袂を分かつ事はできません。
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●“ルイーゼロッテ嬢”でナウシカを元気に!
ペジテゲリラは悩みの種。
アスベルがユパに同行して腐海探検に出向くようになってから、ナウシカは心労でやつれるようになっていきました。
大ババ様は床にふせり、村人が交替で面倒をみてくれていますが、もう長くはなさそうに見えます。
そこで介護に協力してくれるようになったのが、ペジテのブリッグで、ナウシカの身代わりになってくれた少女。
お名前はうかがっておりませんが、見事に入れ替わったので、ケストナー先生にあやかって“ルイーゼロッテ嬢”と仮称させて戴きます。
美少女ですね! こう言っては何ですが、ナウシカ本人よりも典型的な美少女系の、本作ピカイチの綺麗綺麗さんではないでしょうか。
やはりペジテの貴族の子女、ペジテ市街地の見た目は“キューポラのある街”とはいえ、ビル街の都会育ちに変わりありません。
ナウシカがハイジなら、彼女こそピチピチに健康なクララですよ!
ナウシカが赤毛のアンなら、彼女こそピチピチに元気いっぱいのダイアナ!
ナウシカが根暗の杏奈なら、彼女こそピチピチの根明マーニー!
ナウシカと“明るい百合関係”を育んでゆく“ルイーゼロッテ嬢”の登場で、風の谷の物語は外伝へと大きく展開していくことでしょう。
もちろんこの“ルイーゼロッテ嬢”、あの悲惨な死を遂げたラステルの幼馴染だったかもしれず、クシャナへの憎しみはメラメラの恨み骨髄、実はペジテゲリラのアサシンガールだったりするのです。
しかも“ルイーゼロッテ嬢”は、その演技力で、“田舎育ちの芋姉ちゃん”であるナウシカに化けることは造作もなく、適宜、入れ替わりオッケーのフレキシブル人材!
赤毛ウィッグ着用で、メーヴェに乗って空を飛んだら、もう誰にも見分けがつきません。
二人一役になることでナウシカの業務負担を減らし、流行の働き方改革にも一役買います。
ということで、公開後42年が過ぎ去ってしまいましたが、ぜひとも「映画版ナウシカの続編を!」。
だって、ペジテ残党の難民化とゲリラ化は、中東史を見るまでも無く歴史の必然でしょうし、クシャナが再び出てくるまでもなく、風の谷を狙う新たなる脅威が立ち現れることは、十分に考えられるでしょう。
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●ふしぎの海のナウシカ
その脅威はどこからやってくるのか?
まずは、海ですね。
『風の谷のナウシカ』では、その世界の海洋について描写がありません。
海の腐海と言えば幻のサルガッソーかもしれませんが、ともあれ海洋生物の世界は全然描かれていないのです。
そして、千年かけて進行中の“腐海による世界の浄化”は、海洋の生態系にどのような影響をあらわしているのか、未知のままですね。
海洋も腐海化が進んで、全てが死に絶えてゆくのか?
それとも、陸上とは別に、独特の浄化が先行して進んでいるのか。
だとしたら、地上の腐海とは異なる、より壮大な、あるいは奇怪な生態系が誕生しようとしているのか?
一方で、差し迫った状況に、ナウシカは直面しているはずです。
風の谷の食糧危機。
侵攻したクシャナ隊と、その後の騒乱で、耕作地は大被害を受けております。
迫りくる飢餓の危機。
それを解決する方策として、谷の西側に広がる塩水の海は、新たなるフロンティアとなるはず。
王蟲の殻で“潜らない半水没船”ともいえる気密性の高い船舶を建造し、滑らかな甲板と流線型の司令塔で瘴気と胞子を洗い流しながら、進め我らの ゼー・ノーティラス号!
そして海底の都市遺跡に横たわる恐怖の遺物を発見するのです。
復活させてはならない、世界滅亡の毒蛾ギガントの残骸を……
海洋に舞台を移した『風の谷のナウシカ2 王蟲貝の海物語』を観たいものですねえ。
ナウシカ姫の水着姿も?
いや、わりと真面目です。
海洋生態系には、まだ手を付けられていないドラマが秘められているはずです。
地球表面の七割を占める海洋の浄化と再生なくして、ナウシカの世界を完全に語ることはできないのですから。
クライマックスシーンは、豪雨です。
『風の谷のナウシカ』の空には雲が湧いていますが、おそらく瘴気の成分や古代の汚染物を黄砂よりも濃い目に含んだ、毒雲でしょう。
雨はほとんど降らず、降ってもその水は濁って悪臭を放ち、飲めない。
しかし海洋が浄化されれば、蒸発した水蒸気は純粋な水に近く、それが厚い雲となって雨を降らせます。
不純物の含まれていない、真水の雨。
それが地球再生の到来を示すでしょう。
ナウシカの船が探し求めるのは、黄金にも優る、真水の雨なのです。
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●学園ナウシカ
それともう一つ別なお話で。
風の谷の学校は、寺子屋方式で済むでしょうが……
トルメキア首都では、ちゃんとしたお嬢様学園があるはずでして。
例えばアスベルがトルメキア首都で失踪し、彼を捜索するために、身分を隠したナウシカと“ルイーゼロッテ嬢”がトルメキア首都の名門女子高の寄宿生として裏口入学し、二人一役でてんやわんやの……もとい、あの間諜家族もビックリのチョイ魔法系超能力サスペンスフル・ドッキリドラマを展開していただいてもよろしいかと。
ナウシカの“学園もの”は、年齢設定的にも成立しますので。
もちろん基本的に、ギャグでなくマジなドラマですよ。
そして謎は深まり、トルメキア高原の湖の島にひっそりとたたずむ古城、ハイリゲンシュタット中高一貫魔法学園の闇社会を仕切る、“腐海のあしながおじさん”の正体とは?
そして城内に幽閉された美少女マリアンヌは何者なのか。
男子部に潜入したアスベルはマリアンヌを救出できるのか?
ベタベタする二人にムカムカするナウシカのカミナリは、どこに落とされるのか?
萩尾望都先生のあの名作漫画『トーマの心臓』の舞台、シュロッターベッツ校とその原典らしき『11月のギムナジウム』のヒュールリン校。そして『ポーの一族(フラワーコミックス③)』では1959年の設定で描かれた、川の中州のガブリエルスイスギムナジウム。これら“モーさま三大ギムナジウム”を匂わせる伝説的なヨーロッパ映画が 『わが青春のマリアンヌ』(1956)ですね。
あ、『思い出のマーニー』(2014)もテイストが似ていますね。主人公の少年を少女化しただけかもしれませんよ。
『わが青春のマリアンヌ』はストーリー的にすこぶる未完ですので、やはりどなたかが、ホント、マジに続編をおつくり戴きたいと思うのです。
“学園ナウシカ”、観たいなあ。
【次章へ続きます】




