捨
青空のもと、ある男は言った
俺に必要な物など何もないと
最高の笑顔と、最高の憤怒をもってして
世に大雨と天災がもたらされた時、
まるでそこだけ切り取られたかのように、
男の姿は無くなっていた
でもきっと、男は存在していた
していたし、きっと、今もしている
場面に我を捨て続ける
場面に我を捨て続けることは、まさに、それこそが、
真性の、場面に我を示し続けること、そのものであった
そのことから、どうしても逃れられなかった
だから、男は、常に後悔した
後悔し続けた
泣いた
常にやり切れず、また、我を捨て続けた
髪は腐り、皮膚は爛れ、関節は固まり、
男は、段々と、思うように体を動かせなくなっていった
動かす術と、動かそうという思考を、失くしていった
示し続け、捨て続け、示し続け、捨て、
みんなが男のことを覚え、
みんなが男のことを忘れていった
みんな、男のことを知っていた
確かに、知っていた
なんとなあく、それとなしに、どことなあく、
完璧に把握していた
男も、みんなのことを知っていた
なんとなあく、決して、忘れ得なかった
でも、実は、全然知らなかった
男は捨て続けて、だから、表面上は、
みんなのことを全く知らないことにされてしまっていた
男は、ふと、鼻を鳴らした
畏れる心を捨て、恥じる心を捨て、繕う心を捨て、妬む心を捨て、蔑む心を捨て、憎む心を捨て、敬う心を捨てた
そして、それらを、完全な形で持っていた
曖昧だった時の流れと合致して、、、
青空のもと、ある男は言った
俺に必要な物など何もない、と
最高の笑顔と、最高の憤怒をもってして




