別れ
闘技場の中にある大きな多目的の部屋。中には賞品として外に飾られていた品物が中に運び込まれており、そこにはリヨンと囚われていたリナがいた。出場する際に金を借りていたチンピラに金を返して戻ってきたところ二人はお互いのことを抱擁しつつレナのほうは泣いてる。
俺に気付くと完全に油断しきっていたのか尻尾をピンッ!と動かしてびっくりしていたようだが、恥ずかしさを隠すかのように二人は本題に入ることにしたらしい。
リナやリヨン達の村はとある山のふもとにあったそうだ。しかし、ある日から突然としてその村が襲われるようになったのだという。相手は盗賊や傭兵の集団、領主である男爵に行っても何もしてはくれない。
繰り返し行われる奇襲に対して獣人たちは守勢に回ることしかできない。しかし、こちらから襲い返すことができればそれなりの被害を与えることができるだろうと考え、レナはそれを探るために襲撃後の集団をつけていたのだという。しかし、途中で見つかってしまい囚われてここに連れてこられてしまい今に至るのだという。
「そうだったのか。ここからだったら村までは三日もかからない。動けるか?」
「大丈夫です。」
「お前ひとりが行ったところでどうにかなる問題でもないだろう。」
「なんだと。」
リヨンは俺の言葉に毛を逆立てるがお互いの強さはわかっている。俺への敵意を押し込めるようにリヨンは引き下がる、リヨンとしては村にいる仲間たちのためにすぐに向かいたいというのはわかるが、二人とも大事なことを忘れているようだ。
「もともと、ここにあるものすべてはこの国の貴族たちが出したものだろう。帳簿を見ると男爵が出品者になってるぞ。」
しばらくの沈黙のあと、リナが口を開く。
「男爵が相手って、それじゃあ・・・。」
「黒幕なんだろうな。」
しばらく沈黙が続くが、リヨンの遺志は変わらないらしい。
「・・・だったら、今すぐ村に戻って襲ってくる奴らを斬って斬って斬って来なくなるまでったかい続けるだけだ。」
「帝国に自浄作用はないのか。」
「絶対に手出しをできない存在。それが貴族なんだ。私達にはそうするしかないんだ。」
・・・・・
俺は椅子に座りながら置いてあるものを見渡す。金貨や銀貨、宝石のほか貴金属の装飾品と小さいが価値の高いものばかりだ。すべてをまとめれば人一人でもなんとか持ち歩くことができる量だが、俺は頭の片隅で先ほどの出来事を思い出す。
「いまま世話になったな。私はリナと村に戻る。」
「向こうがあきらめて襲わなくなるまで戦い続けるのか。」
「ああ、貴族を殺せばどんな理由だろうと村ごと処罰される。だからそうするしかない。」
そういって姿を消したリヨンの姿を思い出す。
「うまくいくわけないよな。」
本来俺にはかかわりのないことだ。しかし、今までかかわってきたリヨンを見捨てるほどの決心を持てないでもいた。だが、俺がリヨンのあとを追っても何も変わらない。結局何をするわけでもなく、街に家を買い、闘技場での戦いに明け暮れていた。