プロローグ
前回と同じように書き溜めたものを一気に投稿させていただく形にしました。今後は短編や違った世界観も内容で書いてみたいと考えていますが、実際にはどうなるかはわからないのが正直なところです。
カキン!
俺が頭に振り下ろしたはずの剣を、彼女は逆手に持った短剣で受け止めて一気にはじき上げた。その力はいくら獣人とはいえ140㎝ほどの体から出るとは思えない力であり、甲高い金属音と金属のこすれる音が兜をしているにも関わらず俺の耳に響く。
ブン!
しかし、すかさず次の攻撃が繰り出される。風を切りながら彼女のもう一本の短剣が、剣をはじかれてがら空きになった俺の腹めがけて突き出された。俺が何とかそれを避けると彼女は俺のわきの下をくぐるようにしながら通り過ぎていく。
このままいけば俺と彼女は背中合わせになる。いかに早く背後を取るか、それが勝負を決めることになるだろう。そう考えた俺は、無理をしつつではあるが、避けたときの流れのまま背後を取ろうと、体の正面を彼女に向けつつ体を回転させる。しかし・・・。
「うぐっ!」
それは完全な失敗だった。突き出して外した短剣を逆手に持ち替えるのが見えた瞬間、俺の腹に衝撃が走った。なんと彼女は俺のわきの下をくぐり終える直前、裏拳のごとく俺の腹に短剣を突き刺したのだ。相手の背後を取ることばかり考えていて、相手を見ずに相手の行きつく先しか見ていなかった。完全な油断である。
刺された瞬間こそ俺は歯を食いしばって耐えていたが、腕を鞭のようにして突き刺した短剣は深く刺さり、彼女はその短剣を支えにして俺のほうに向きなおる。腕の力を使う分振り向くのも早いが、横に加わる力に俺の腹には激痛が走る。しかし、それのほんの一瞬だった。
俺に向きなおった彼女はすぐさま俺の首に短剣を突き刺した。兜と首輪の隙間に入り込んだ短剣は完全に俺の力を奪い地面へと倒れさせる。
「うおおおぉぉぉぉ!」
辺りにとんでもなく大音量の歓声が沸き起こる。薄れゆく意識の中、周りを見渡せば闘技場の観客たちは総立ち状態である。そして、彼女は俺に歩み寄ると深々と刺さった短剣を引き抜いた。