第49話
~|Infiltration《潜入》 Mission~
~勝利条件:敵総大将の撃破もしくはダンジョンコアの破壊
敗北条件:潜入要員の撃破
DMステータス:AUTO
BGM:王城侵入
防御は皆に任せて俺は相手方に侵入してダンジョンボスの撃退か、ダンジョンコアの破壊を目的として逆侵攻する。
強力なユニットが侵入すればすぐにわかるが、スキルで強さを変えられる俺なら侵入されても気づかれない可能性が高い。
それにかけての侵入ミッションだ。
<鬼哭啾啾たる忘れられし王城>
<いつの時代か戦乱に飲み込まれ滅んだ王国の首都が異界化したダンジョン。
都市部分はほぼすでに土に帰っているが、一部は健在である。
城は残ってダンジョンと化している>
こっちの入り口が向うの出口、向こうの出口がこっちの入り口。
大型のゲートから侵入する。
こっそりと侵入するなら熱源を探知できるピット器官はかなり便利なはずなのだが、アンデッドは大体室温なんだよな、だけど強烈な腐臭を放っている奴が多いからその分嗅覚で敵を探知して、最低限の戦闘で攻略できたと思う、まぁ場内のほとんどは無人の城内で楽に進めたと思う。
だが途中で見つけたアレは放って置くわけにはいかない。
キリアのダンジョンは城だ、人が居なくなってずいぶん経つようではあるが。
俺を待ち受けるのは、俺のために用意されたかのようなボスだった。
グレード SSR
所属 キリア
名前 ??????
種族/Lv リザードマン・ゴルドー(ゾンビ)Lv18
職業/Lv ヘヴィアクスマスターLv05
階級 カンパニーコマンダー
HP/MaxHP 4848/4846
SP/MaxSP 124/124
スキル01 キリア流斧術Lv04+1
スキル02 盾術Lv03
スキル03 貪食Lv02
スキル04 体術Lv03
スキル05 聖属性弱点
スキル06 斧の才能
スキル07 死者への祝福
装備品① キリア騎士の斧-1
装備品② 重装将鎧Liz-1
装備品③ キリア騎士の盾
そうだな、こいつがいるなら俺が倒さないといけないだろう。
元はSRの金色の動く死体は鱗があちこち剥がれ、その下は皮どころか骨までむき出しになっている場所もある。
胸に開いた黒い大穴からは毒がしたたり落ち、地面に落ちたその雫はショウショウと紫の蒸気を上げている。
目は見えているのかいないのかフラリフラリとラリったようにこっちに近づいてくる。
濃い紫色の涎を垂らしながらヨロリヨロリと歩く様は、生前の堂々とした立ち居振る舞いは喪失している。
ただこいつに関わる時間も惜しいことは惜しい。
俺の横なぎの一撃がゴルドーの首を断ち、っておいぃぃ!
<リザードマン・ゴルドー(ポイズンゾンビ)Lv18
(Critical Hit!!)
0/4846>
只の棒でポカンと首を叩いただけのつもりがどうして致命傷になってるんだ?
俺にはアンデットを一撃で倒せるようなスキルはない。
ということはこの棒が怪しいのだが、棒を見ても
<木の棒
何の変哲もない木の棒。
ちょうどいい長さなので杖にしてみてもいいだろう>
とある。
どう考えてもこれにもそんな力は無さそうだが…
道々今まで杖のように使っていた木の棒はその先っちょを石だの砂だのにみがかれている。
その尖った生木の部分がゴルドーの首に当たったんじゃなかったか?
はっと気が付いて木の皮が付いたままの棒をメリメリ剥いてみる。
総生木仕立てとなり、奇麗な木目の棒を俺は見た。
<世界樹の枝
生命力あふれた幸運を司る棒であり持つものに活力を与える。
皮を剥かれたことにより本来の姿と力を取り戻した>
えぇーこれが世界樹の枝なんだ。
似たような枝は『常春の花乱れ咲く森の迷宮』にごろごろしていたような気がするけど、この一本が特別で俺が「これだ!」と感じたってことか。
生命力にあふれる棒で叩かれたら生命力がマイナスのアンデットにはてきめんに効くってことか。
ゴルドーゾンビの遺骸に蘇生回復薬をかけてやると灰になってサラサラと風に流れていく。
こいつも俺の因縁の一つだよなぁ。<玉座の間>
~Regular Battle~
~勝利条件:敵の戦闘不能または死亡
敗北条件:味方の戦闘不能または死亡
DMステータス:AUTO
BGM:ザ・ラストバトル
「あ~ら初めまして。
会うのは初めてよね?
私はキリア、ここの神よ。
もぅこの部屋に敵が入りこんだからアナタを倒さないと逃げられないじゃない」
「まぁアナタもここから出られないしぃ?
アナタを倒してしまえばいいんだけどね」
ついに、ついにここまでやってきた。
奥にある玉座に腰を下ろしてこちらをしてくる派手な格好の女。
目の前にいるのが俺をここまで連れてきた神(笑)。
どんなステータスをしていようが関係ない。
お前をぶん殴るのが俺のお前に対する落とし前だ。
褐色の華奢な体をしているが、この声の持ち主に何度翻弄されたか。
「ん~~?貴方は元ウチのユニットだったリザードマンじゃない?
へぇ~こんな強く育つならトレ-ドなんて出すんじゃなかったわ~
ねね、戻っていらっしゃいな,良い待遇で雇うわよ~?」
「ふざけるな!誰がいまさらお前に従うものか!」
「あーらら振られちゃった。
まぁしょうがないわね、ワタシも敵ユニットからのダイレクトアタックなんて初めてだから興奮しちゃう~。
やりすぎちゃったらごめんなさいねぇ」
「でもこれダンジョンコアだからやられる訳にもいかないのぅ」
余裕の含み笑いをしながら、よく整った爪の生えた指を俺に突き付けるとクイと曲げ挑発してくる。
ああ、やってやるさ、コア一体型アバターならそのままお前を消滅させられるってことだろ。
「いくぞキリア!」
「神に呼びかけるんなら様を付けるものだしぃ~?
アンコモンユニットごときに声なぞ掛けられるのは不快の極めだっけ、なんだっけ?とりあえず邪魔」
ファーストアタック、棒を奴の顔面に叩きつける。
「お前なんか神(笑)で十分だ!」
防御も回避もしないキリアの顔面をしたたかに打った世界樹の枝はバチィィン!と火花かスパークかに例えるような音を立てた。
SSRにあがったゴルドーゾンビを一撃で葬ったその打撃はしかし、一向にダメージが通っているような感じがしない。
確かに俺の攻撃が当たったはずだが…
<キリア
HP ??????→??????>
「ふ~ん、厄介な武器持ってるじゃない。
ただワタシの防御を抜くには足りないみたいねぇ」
「この厚化粧が…!」
「化粧は女の武装よ!手を抜くなんてありえないってのぉ~~」
キリアは無手で攻撃してくる。
いや違う、あのどす黒い爪、なにか滴り落ちるかのように濡れている。
毒手か!
聖銀の丸盾で受け止めるが、ギャリギャリと音を立てて盾表面に傷が走る。
盾での防御も限界があるようだ。
それまでに何とか打開策を見つけないと。
俺自身か、それとも武器か、足りないのはどちらだったとしても、奴を倒すには俺自身が今ここで能力を上げるしかないってことだ。
レーラさんやチヒロさんとしたパワーレベリングで俺のLvも普通じゃあり得ないくらい高くなったとしても、元々のグレードが勇者に届いた訳じゃない。
俺はあくまでCのリザードマンが無理やりグレードやらLvを上げてHPとか各種ステータスを無理やり上げた存在だ。
本人の実力が伴っている訳じゃあない。
それでも、
チヒロさん、ありがとう。
君と出会えてこうしてDMと打ち合える。
君との特訓は理不尽な強さの相手にどうやって付け込んでいくか、考える戦い方を俺に教えてくれた。
<カンパニーマンLv04発動!>
<一時的にグレードが上昇します!>
<Lv70にリミットレベルが引き上げられます!>
<能力値が上昇します!>
手加減なんてしてる余裕はない、全開で強化スキルを発動した俺に、
「あーっはっはっはー!
いいねいいね神殺しに挑むのにふさわしい力になって来たわよ、でもまだまだ倒されてはあげられないねぇ」
キリアは人を小ばかにした笑いを上げると俺の身体を蹴り上げてくる。
盾で受け止めたが激しい衝撃が俺の腕に伝わってくる。
レーラさんありがとう。
アナタとの特訓が戦いの最中でも冷静さを失わないことが大事だと教えてくれた。
アナタのその奇抜ともいえる攻撃は、そんな時でもどんな方向からでも攻撃が届く可能性を俺に教えてくれた。
「いっやー、その右手随分熱いみたいだけどぉ~
私は暑いのが大っ嫌いだしぃ」
「その燃えている腕ぐらいは切り落とさせてもらおうかしらねぇ」
にこりと笑みを浮かべると何処かから大鎌を召喚して構えを取る。
その構えは魔術を得意とする者とは思えないほど堂に入ったもので、DMが神の見習いであることの証左である多芸多才ぶりだった。




