第48話
久しぶりにシステム音声が俺の耳に聞こえた。
<ギルドウォーが宣言されました。
DMキリアの本拠『鬼哭啾啾たる忘れられし王城』
Vs
DMレンゼティアの本拠『常春の花乱れ咲く森の迷宮』
各陣営に所属するユニットは速やかに本拠点に帰還してください。
ダンジョンゲート開通までまで 719分57秒>
~BGM:Battle04 いつか来るこの日~
「チヒロさん、『常春の花乱れ咲く森の迷宮』が攻撃を受けるようだ。
急いで帰ろう」
対戦相手はキリア…
未だに名前を耳にするだけで腹が煮える思いがする因縁の相手。
負けるわけにはいかない戦いがそこにある。
最後のお使いイベントだということで2人そろってDMとの謁見をしていた俺達は急ぎ必要なものを手に入れ挨拶もそこそこに帰還することになった。
もっともあちら側もダンジョンバトルの対象となっているらしく、慌ただしくも返礼してくれ、お互いの健闘を誓った。
そして俺達は『常春の花乱れ咲く森の迷宮』に転移した。
ダンジョンから他のダンジョンに攻め込む行為をダンジョンバトルというらしい。
攻めてきたのはキリア…個人的に因縁がある相手だ。
~Dungeons Vs Dungeons (ギルド対抗大規模戦争イベント)~
~勝利条件:敵拠点の抵抗力喪失
敵総大将ユニットの撃破または戦闘不能
敗北条件:自軍総大将ユニットの撃破または戦闘不能
敵拠点の抵抗力が残っている時の撤退
戦況:戦闘準備中
初期攻撃側
『鬼哭啾啾たる忘れられし王城』
総大将:DMキリア
単独攻撃ユニット:筆頭配下ルトール
単独攻撃ユニット:グランドレイク(ゾンビ)Lv15
部隊/指揮官:混成Gob歩兵旅団/オーガロード 5,000
部隊/指揮官:混成Udd歩兵旅団/スケルトン・ジェネラル 7,500
部隊/指揮官:混成Udd歩兵旅団/スケルトン・ジェネラル 7,500
Vs
初期防御側
『常春の花乱れ咲く森の迷宮』
総大将:DMレンゼティア
単独ユニット:筆頭配下レーア
単独ユニット:ミサキ・チヒロ
単独ユニット:シュティーナ
単独ユニット:ユートリア
部隊/指揮官:混成Gob歩兵大隊/グァガ(オーガロード) 500
DMステータス:Manual(DM参戦による)
BGM:下着から履き替えて~
歴然とした戦力差がありながら余裕の態度を崩さない彼女たちを不思議に思って。
「戦力差は40倍以上あるけど大丈夫なのかこれ?」
「元の世界を思い出して言ってるのかのぅ?
この防御態勢で高々40倍やそこらで妾を倒せるわけがなかろうに」
「守る方はアタシとレーラで十分だからトカゲさんささっと向こうに乗り込んで片づけてきて~」
「ウチは役に立たんよって、隅っこにしとりまーす。
あ、持ってきてもらった薬の材料、レンゼティア様が加工しとりますので~」
「守りは我らに任せて敵の大将の素っ首もぎ取ってきて頂けますか」
「オガ?姐さんたちが取りこぼした分は任せて欲しいオガ。
心置きなく先陣切って欲しいオガ」
普段は泉に近づいてこないし、森の中の集落をまとめる仕事でいそがしくてあんまり顔を見せない、ゴリゴリに盛り上がった筋肉の持ち主オーガロードのグァガ族長もこっちに来ている。
鱗族語のオーガなまりという珍妙な話し方をするが、これで居てオーガとは思えないほどの細やかな気配りの男だ。
しかも、2人の奥さんがいるんだそうだ。
2人?と思ったが、ここいらじゃそれが普通らしかったりもする。
むしろ力のある人間が多くの伴侶を抱えるのは男女ともに推奨されているそうだ。
文化が違うといえばそれまでだが、恐ろしい未来しか思い浮かばないのでいったん封印とする。
グレード SSR
所属 レンゼティア
名前 グァガ
種族/Lv オーガロードLv42
職業/Lv グランマスター
階級 トライブリーダー
HP/MaxHP 8942/8942
SP/MaxSP 1423/1423
スキル01 双斧術
スキル02 持久力
スキル03 剛力
スキル04 武器防御
スキル05 投擲
スキル06 恐慌の咆哮
スキル07 格闘
スキル08 レンゼティアの祝福
装備品① 二丁手斧
装備品② オルタベアの毛皮
装備品③ 雷駿の指金
大体作戦と言っていいのか、敵の侵入ゲートの真ん前に陣取ってレーラさんとチヒロさんが侵入してくる敵を薙ぎ払ってあらかた片付けてしまい、あとはゴブリン、オーガ、オーク合わせて500の混成集団をグァガさんが指揮してが取りこぼした分を片付けるそうだ。
で、手の空いた俺は迂回して敵陣に単騎突入して敵DMを撃破する手はずらしい。
大丈夫か?この作戦、勝敗のカギを俺が握ることになるんだが、かなりおおざっぱな気がする。
「このダンジョンが生産特化型だと思って舐めてかかっておるのぅ。
まぁ防衛は過剰防衛になるかもしれんが攻撃要員が足りん」
「相手はアンデッドが多いようじゃからさっき取ってきた材料が間に合ってよかった。
この蘇生回復薬はアンデッドが回復するのを阻害することが出来るのじゃ。
本来は死んだばかりの者を復活させるものじゃがな、割と貴重な薬種を使っておる。
手ごわいアンデッドが居たらかけてみたり倒した後の復活待ち状態になったら、かけてやるとよいぞ」
「さぁさぁ皆戦闘開始までもう間もなくじゃ、ぬかりなくの」
~バトルスタート~
レーラは瞼を閉じ少し気持ちを落ち着けるために考え事をすることにした。
この『常春の花乱れ咲く森の迷宮』ダンジョンが軍団規模で攻められたのはいつぶりだろう。
昔、そう自分たちがまた多くもなくダンジョンの規模もそう大きくないときは、手ごろな生産拠点ダンジョンと思われて何度も軍隊規模の敵軍に挑戦されたものだ。
そのすべてを撃退したからこそ、今ここに自分は在る。
何故ならばこのダンジョンの最強戦力たる自分は、事あれば常に先陣を切ってきたからである。
敵の気配を感じ瞼を開ける。
目の前のゲートは今にも敵をこちらに送り込んできそうだ。
先陣は何が来るか、有象無象の物量戦か、それとも、
「ふはははははー
わが名はルトール!主の命により先陣仕った!
我と思わんものは掛かって参れ!
我が剣の錆にしてくれようぞ!」
有力ユニットの先陣と雑魚共の同時侵攻!
あのアンデッド戦士もそれなりの腕のようだし、相手をしている間は下級モンスターには入り込み放題の状態になる。
だがそれも順番に倒していけばいいだけの話。
有象無象ならば任せられるものが何体も思い当たる。
共にこのダンジョンを守ってきた仲間たち…
そう考えたレーラの脳裏に、ちょっと間抜けな顔だが愛嬌のある黒いリザードマンのことが頭に浮かんだ。
フフと思わずこぼれた笑みに頭を軽く振って声に出して自分に活を入れる。
「こんな時に男のことなど!」
照れ隠しに槍から衝撃波を飛ばすと何体ものグールやスケルトン・ソルジャーなどが吹き飛んだ。
あの時は槍が木製だったから込められた気力に耐え切れず槍が崩壊してしまったが今度は違う。
この得物ならば余すところなく気力を込めて本来の威力が出せる。
では、まずは侵入した大物を倒すことから始めよう。
「なんという威力!なんという技量!我が相手に相応しい、いざ一手仕らん!」
先ほどの攻撃が挑発になったようで身の長い細剣を抜いて向かってくる。
構え、足さばき、容易ならざる相手と見える。
久しぶりに全力で戦えそうだ。
レーラはニヤリと耳まで裂けた口で笑うと対手に向かっていった。
「食らうが良い!『悪霊溶岩弾』!!」
苦しむ人面が表面に浮かぶ火球が襲ってくる。避けたところにあの細身の剣が襲ってくるのだろう。
「絶倒魔神斬」
実体でも霊体でも切れる技で全て切り伏せればいい。
飛び道具で決着がつかないとお互い見たのだろう、
「「いざ参る!」」
後は残った本体と切り結び打ち倒すのみである。




