第44話
ミッションの成功で一休みする間もなく俺は次の目的地、『名もなき森と川の平原の洞窟』の訪問の準備にかかった。
レーラさん曰く、今回は穏健なDMで戦闘は発生しない見込みだとのことだがホントか?
ちょっと心配になってくるが信用するしかない。
今回もチヒロさんが一緒についていきたいと言っていたが、シュティーナが、
「今回はウチがついてってもいいかねぇ、知り合いがそこいるんよ」
と言ったので今回の連れは彼女になった。
俺は誰でもかまわないのだが、それでもシュティーナが志願してきたのは意外だった。
チヒロさんもダンジョンに知り合いがいるのが驚きだったようで、ならばと納得していたほどだ。
~Mein Mission~
~名もなき森と川の平原の攻略
~Mission Start!
勝利条件:最深部に到達してボスと接触、希少物品を入手!
敗北条件:ユニットの死亡
DMステータス:AUTO
BGM:Water Element~水と風の調べ
エレメント分布 火:D 水:A 地:B 雷:D 風:B~
種族は違うけど繁殖適齢期の個体の美しさは例えるのが難しいほどだと思う、それに欲情するかどうかは置いておいて。
特にシュテイーナは胎生らしく立派な乳房が双丘を成し、大きな動きをすると音を立てんばかりに揺らぐ程である。
こう、なんというか≪≪バイィィイン≫≫的な…
あまり身体を締め付けない程度に緩やかに仕立てられたシュティーナの衣装は何とも言えぬ色気を醸し出し俺を誘惑してくる。
俺はなるべく目に入らないように努力はしているが、彼女がニマニマしながら揺らしているあたりわざとらしい。
すれ違いざまスッと当ててくるあたりかなり露骨である。
交配可能な雌雄が2体だけで行動するとこういった問題が浮かび上がってくる。
ひどいのになると、好悪で態度がガラッと変わり、その裏側の顔を知ってる人間はひどく驚く程だ。
俺も店のシフトを考えるときトラブルになりそうな組み合わせはなるべく避けて組んできたつもりだが、やっぱり人間気分が悪い時に当たるのはどうしようもない。
…あの人と組むのイヤなんで、シフト変えてください!…
なめられているのか親しまれているのかよくわからないがとりあえず言えることは、
「お前は仕事をしにここに来たんじゃないのか?」
もちろん気の合う人間と仕事した方が能率が上がる場合が多いのだが、それでも悪い方に連携する場合もあって注意が必要な場合がある。
散々愚痴を聞いてやったあとでこういって追い返して、やっぱりなるべく配慮したシフトを組んだもんだ。
だから本部へのシフト提出も遅い方だったから評価は低かったなぁ。
そんなところの優劣を評定に入れて給料に反映させちゃうのはどうかと思うけどな、期日に間に合っているのであれば。
まぁ今回は良い方のイベント発生で良かったが。
<名もなき森と川の平原>
<森の中の小川をどんどんたどって奥に行くとたどり着く第1エリアと、湧き出る水が洞窟を作り出した本体といえる第2エリアの2段型ダンジョン>
ダンジョンの領域を前庭ともいえる森からそこを流れる小川の源泉が洞窟の入り口からその内部を領域とした2段型ダンジョンであるらしい。
戦闘はないとはいえ目的地までは歩いていくしかない訳で、
「とぅ!ちゃーく!」
「ここがそうなのか?ただの森に見えるが?
それはそうと嬉しそうだな?」
「そお?ま、久しぶりの実家やし。ちょぉっと浮かれてるのんは間違いないのかもなぁ。
この森を向けた奥に洞窟があるんよ、はよいこ、いこ」
「なんだ里帰りだったのか、もっと早く言ってくれれば土産物の一つでも買いに街に寄れたものを」
俺がそう言うと、
「いいんよ、いいんよ。一緒にここに来れたらそれで、土産は『常春の花乱れ咲く森の迷宮』でしこたま仕入れてきたし」
「殊勝なものの言い方に聞こえるが何か企んでるだろお前」
「えへへへへ、ばれたか、まぁウチの思った通りにはならんだろから心配はいらんて、まだ時期尚早っちゅうやつや」
自分の思った通りにならないのに何か仕掛けている?
今一つ解せないがここまで来たんだ、中に入ってボスのDMを目指していくしかない。
前庭の部分は俺達の本拠である『常春の花乱れ咲く森の迷宮』に似た構造である。
すなわち森が広がり渓流が流れている。
洞窟に入らないでさらに奥に行くと山脈に入るが、まぁ今回の目的はこの洞窟型ダンジョンの攻略にある。
シュティーナと俺で戦闘力はUC2体と何とも心細いが今回は彼女の伝とやらでで戦闘にはならないだろうと予想されていた。
シュティーナからの話である程度予想はしていたが、出会うのはリザードマンばかりで、皆白い体色をしていた。
そしてなぜか黒いリザードマンである俺に猛烈に威圧を放ち始めた。
しゃがんだ姿勢から立ち上がると下から睨みつけるように顔を近づけて、
「あ?」
「どこ窟よ?オマエ」
「なんか文句あんのか?あ?」
ヤ〇キーか!
なんかトカゲ語でも程度の低い挑発をされているのがちょっと面白い。
音的には鼻息荒くシャギャシャギャ言ってるだけだからなぁ。
店長相手に突然ヤン語になるバイトもいないことはないからなぁ…
まぁこんなのでいちいちビビッていられないよなぁ。
「なんじゃ汝達、ウチの連れになんか文句でもあるんかい?おぅ?」
そうそう、今のシュティーナのようにって、おいぃ!
今のはなまっていたわけじゃなくて故意に口調を変えたんだよな?
「そんな…!シュティーナの姐さんのお知り合いとはつゆ知らず失礼いたしました!」
と、なんだか変な異名でもつけられていそうな迫力を出すシュティーナ。
そして、それをみてがらりと態度を変えてへりくだって白いトカゲ男たちは一目散に逃げて行った。
胡乱な眼でシュティーナを見ると、
「あら、ワタクシとしたことが失礼いたしました、おほほほ」
聞いてみたら、話し言葉も普段話す言葉の他におしとやかに演じることもできるらしい、俺にはやっぱりシャギャシャギャとしか聞こえないんだが…
彼女は普段は猫をかぶってることが判明。
怖い怖い…
イヤ色々な仮面がかぶれる女性だってことかな?
そして俺の貞操の危機ますます高まるってところかな…
いやホントやめてくれよ?
30代くらいまではそっち方面がっついている奴がまだいるけど40も過ぎて女関係でヤンチャしてたらみっともないだけだし信用失うからな。
いまだに金で若い女性を囲う人もいるけどさ。
勢いで突き動かされるのも若い時はそれでいい、むしろそうあるべきだと思うけど。
ちゃんと筋を通しなさいってところですかねぇ。
筋を通して生きていければなと思うけど、なかなか難しいねぇ男女の感情は。
40も過ぎたおじさんだって恋はしていいんだとは思うさ。
お互い成人して、独身なら法的には何の問題もない訳だし。
鱗人のシュティーナとリザードマンの俺は、ランク的には一番釣り合いが取れているともいえるんだが…
それはまた別の話だろう。
元の世界のことも含めて踏み込めないよなぁ、相手がそれを望んでいたとしても。
などとぐちぐち考えているうちに洞窟の奥に到着した。
気楽な様子で歩くシュティーナの後ろをついて行ったらいつの間にかって感じだ。
彼女自身は岩陰から知り合いの姿でも見えるのか軽く手を振ってみたりして余裕の行程だったようだ。
「おぉ友なる者よ、久方ぶりである。
また人の世の珍味なるものを持って来しや?
リザードマンは我が眷属にも居ることだしあまり口に合わぬのだが?」
まてぃ!俺は捧げものになった覚えはないぞ。
「いえ、今回私は『春の花乱れ咲く森の迷宮』よりの使者として参りました。詳しくはこちらに」
「ふぉーふぉーふぉー」
「冗談に決まっておろうが、我が愛し子に想われし者よ、どれ親書があるな渡すがよいぞ?」
俺は封をされた書物を手近な側近の手に渡すと一歩下がり、『名もなき森と川の平原』の主を『観た』。
グレード DM
所属
名前 カティエレン
種族/Lv レヴィアタン
職業/Lv 水竜神??????
階級 ダンジョンマスター
HP/MaxHP ??????
SP/MaxSP ??????
スキル01 ??????
スキル02 ??????
スキル03 ??????
スキル04 ??????
スキル05 ??????
スキル06 ??????
スキル07 ??????
スキル08 ??????
スキル09 ??????
スキル10 ??????
スキル11 ??????
スキル12 ??????
やはり神のステータスは俺の能力では覗けないようだ。
名前となんの権能を司る神かくらいしかわからない。
「彼の方から事情は受けたまわっておるゆえ、依頼の品が準備ができるまでしばし待つがよかろう」
「我はDMではあるが昇格保留してずいぶんになる。
それから今までの間我がダンジョンは繁栄したようにも思う。
眷属達も大分と増えて小さな国並みの数となった」
そういうと今度は少し砕けた口調になって、
「まぁ何が言いたいかというとな、昇格を望めばいつでも神成れる立場なのよ、儂」
それって実際神の座(限定)ってことですかねぇ。
電ど…殿堂入りダンジョンのDMかぁ近隣のDMのまとめ役にちょうどいいなぁ。
「さてさてこれからも繁栄するかそれとも衰退の途をたどるか判りはせんがのう」
「そろそろ儂は昇神してこのダンジョンのまとめ役として跡目を誰かに継がせようとしたんじゃがな。
あーだこーだと話し合う中で男衆も女衆も連れ合いを連れてきて披露することになったんじゃ」
「そこへシュティーナがお主を連れてきたわけじゃ」
「候補者として有力、と見なされている者ほど心静かには居れんわい。
別に連れ合いがここのダンジョンに所属していないとならないとは言うておらんからのう」
「儂としては自分のダンジョンに出入りのあるものが繁殖の機会を得ているのは喜ばしいと思うぞ?」
なにか繁殖OKの印でもあるのかこの民族は?
あいにく対象でありながら異種族ということで部外者な俺にはさっぱりわからないのだが。
メンタリティは普通の人間だからな、トカゲとか蛇に欲情する性癖もないし。
それにしても魔族だ亜人間だとか差別しあっているように見える仲なのに、個人では異種族同士で子を儲け、家庭と呼べるような関係を作ったりするほど親密な関係もあるのか。
異種族の習慣はなかなか奥が深いことであるなぁ、と感心しきりであった。




