第41話
仲間たちに転移のことのついて説明する。
俺の首にあるピンクの鱗に念じると俺のボスの所に転移することが出来る。
まだ試してないがPt状態で近いところに居れば一緒に転移できるらしい。
そう言うと
「その鱗の持ち主さん相当力のある方なんやないやろうか」
「あぁ仲間内だからばらしておくが、『常春の花乱れ咲く森の迷宮』のDMの鱗だからな」
ただ次回の予定は火竜のダンジョン攻略。
シュティーナの出番はなさそうである。
そのあいだレーラさんと一緒に採取とかしていてもらおう。
「かまへんで、ウチも行動にもある程度自由があると便利やしな」
まぁ留守番または単独自由行動かな。
目的地が合えば俺かチヒロさんのどちらか片方、または両方が付いて行ってもいいだろうけど。
転移すると念じ鱗に力を注ぎこむと、俺達は馬車ごと『常春の花乱れ咲く森の迷宮』に転移した。
無事にPtごと転移できたところでチヒロさんが辺りを見回し感歎する。
「ほぇ~いいところねぇ。空気がきれいで落ち着く感じ」
「で、あろぅ?」
「うわぁぃ!なになに?びっくりしたぁ」
突然出てきたらレンゼティアに声をかけられてシュティーナは驚いている。
「とはいえこやつの転移は妾のそばにしか出ないものぞ?
転移したら必ずここに出るようになっておる故」
確かにレンゼティアからすればいきなり俺たちが現れたと感じるだろう。
「え、これがトカゲさんの新しいご主人様?」
チヒロさんがレンゼティアを指して言った。
「『これ』ではない。
レンゼティアという。
以後見知りおくがよい」
「アタシはミサキ・チヒロ。
勇者よ。
アタシ達をもとの世界に戻せる方法を探しているの」
むん、と胸を張る姿が女子校生勇者っぽいチヒロさんである。
「なるほど、これが当代の勇者かぇ…
異世界から来たのもそうじゃがなにか妙じゃのう」
「ここまでみっしり祝福と加護で固めた勇者も珍しいのではなかろうか?」
「であろう。さすがのワシの数多在りし剣の主の内でも例がないのぅ」
「おぉ、お主は聖剣の人格霊ではないか、覚醒しているとは珍しい」
しげしげと『勇者ミサキ・チヒロ』を眺めてレンゼティアが呟く。
「ウェラエアの天位聖剣が霊ナビゲイルじゃ、初めましてじゃの。
この者は召喚された場所は草原、所持品は覚醒済の聖剣。
妙なことが多いのぅ」
「ふわわわわわわシュティーナといいます。
よろしくお願いします」
レンゼティアとチヒロさんはそれぞれ笑顔を浮かべて挨拶をしているのに、何か寒気が感じられた。
「トカゲさんの首に付いたあなたの鱗を外すにはどうすればいいのかしら?
トカゲさんの意思を無視してなんてやりすぎだし」
ん?実はチヒロさん、鱗の取り交わしが気に入っていなかったのか?
「勇者とはいえ妾にそのような口を利くとはさすがよのう。
まぁだまし討ちのようになったとしても妾の目的が優先されるに決まっておろう?
妾は神である故」
「それにな、こういっては何だが、一度取り換えた鱗を無理やり外すと外した方は死ぬるぞ。
そして外された方も死ぬ。
妾が死ぬと下手すればユートリアも死するぞ?」
「え?どういうこと?」
「え?」
「えっ?」
瞬間移動の時に明かされた鱗の交換についての隠された事実。
それに続いたちょっと聞いてませんけどパート2。
それどういう意味なんでしょうか?
おもい!おもいよ!
「鱗を交換した相手とは魂がつながるでな、妾が死すればユートリアもまた死することになる。
逆もまた真なのじゃが、ただ妾は不老不死でなぁ。
妾の方が死ぬるは多分なかろう故、お互い死ぬというのは嘘になってしまうんじゃがのぅ。
鱗の交換はそういう意味がある行為じゃ。
あの時のユートリアの心身を癒すのはそこまでせんと治すことが出来んかったんじゃ、最後に入った大きな皹を治すのに妾の鱗を与えるという処置が必要であった、許せ」
「まぁ今の待遇はトカゲさんも悪くなさそうだからまぁいいか…むむ…仕方ないのか…むむむ」
「ほっほ、まぁ妾の者になったからには誰にも渡さぬえ?」
「いや同じ世界から来たっぽいし?アタシの運命の人よね?トカゲさん?」
「トカゲさんではないわ、こやつには妾が名付けたユートリアという名前があるわ」
「うーわ…だったら余計にトカゲさんって呼ぶわ」
そういうとチヒロさんは俺によじ登り鞍にまたがった。
「えーと、私もユートさんに命救ってもらった恩があるんやけど~」
「何を張り合ってるんだか…これから元の世界への手がかりを色々なDM|に会いに行くのに協力して貰うんだからな、喧嘩はダメだぞ。
大体、お前らが本気出したらここいらの森が吹っ飛ぶ」
二人で話をしていると、俺に肩車されるチヒロさんを見てレンゼティアが
「それ、良いのう、戻ってきたら妾にもしてもらおうぞ」
「私はどのように乗ればよろしいのでしょうかねぇ…」
「おんぶとか肩車ならいつでもしてやるよ…」
「って、うわぁいっぺんに全員は無理!」
「一人ずつひーとーりーずーつ、せめて二人までにしてくれ!」
全員がジリっと間合いを詰める気配を見せたので、慌ててけん制しなければならなかった。
そう言うとチヒロさんに代わってレンゼティアが肩に乗ろうとし、なぜかレーラさんも肩に巻き付く感じで乗ってきたのには驚いたが、その時前髪の隙間から彼女の満足そうな顔が見れたから良しとしようと思う。
チヒロさんになぜかぽこぽこ叩かれた…解せぬ。
「えーアタシの特権じゃダメなの~?」
「ええやないの肩車やおんぶ位、これから二人で洞窟探検なんやしユートはん独り占めやないですか、妬ましいのはこっちや」
「 まぁ今回は、ウチにはつての無い洞窟やし留守番してますう~
気を付けて行ってらっしゃーい」
「む~む~」
ミサキさんはなおも不満が収まっていないようだがナビゲイルさんがなだめて居るからそのうち機嫌も治るだろう。
「拗ねとるだけじゃ心配いらんわい」
「ナビちゃんは黙ってて」
またじゃれてる、仲のいいことだ。
「さて、無事勇者と合流したことじゃし、今度こそ火竜の洞窟の攻略じゃな。
戻ってきたらユートリアがどっちのものか決着つけるでな」
くるっと話を変える当り今のはほとんど冗談だったらしい。
チヒロさんが「ぐぬぬ」となってはいたが。
今までの言動を見るに、まぁ後を引くようなこともないだろう。
~Mein Mission~
~赤き炎と黒き大地の洞窟の攻略
~Mission Start!
勝利条件:最深部に到達してボスと接触しよう!目標物を手に入れよう!
敗北条件:ユニットの死亡
DMステータス:AUTO
BGM:Fire Element~熱き魂の道標
エレメント分布 火:A 水:D 地:B 雷:D 風:C~
ほぼ安全な旅とはいえダンジョン攻略には何があるかわからない。
戦闘の可能性も絶対にないとは言えないので、チヒロさんが強硬に俺の単独行に反対したおかげで今回のDM訪問は俺と彼女の二人が行くことになった。
レンゼティアとレーラは政務で忙しそうだし、滞在を許されたシュティーナはレア素材が山となった『常春の花乱れ咲く森の迷宮』の中に分け入って商品の仕入れに余念がない。
手の空いたチヒロさんが護衛してくれるということだ、うん。
俺も鍛錬やら何やらでだいぶ強くはなったと思うんだが、いかんせん俺の周りで俺より戦闘が出来ないのがシュティーナくらいのものだからサンプルが偏っているとしか思えない。
しかもシュティーナが弱いとは確定してないのである。
彼女はランクやレベルはそこそこのものなのだが、一人行の商人としても戦闘慣れしすぎている。
どんな隠し玉があるか分かったものではない。
有利な地形に誘い込まれたり罠なんかを使われたら多分相当の大物を喰える知識と技術がありそうな予感がする。
一応用心の為、俺はチヒロさんをまたがらせたままレーラさんが転移魔法を発動させる。
今度は動かないダンジョンの入り口付近、友好ダンジョンの転移目標ギリギリだったらしいが何事もなく成功したようだ。
熱気を噴き出す大地の裂け目が目の前に広がっている。
これからこのダンジョンのボスに会いに行くのである。
『赤き炎と黒き大地の洞窟』は溶岩の流れる洞窟である。
攻略者はまず敵性モンスターの討伐よりもその環境への対応が必要となる。
つまり黒い溶岩台地をトプトプと音を立てそうな粘度で溶岩が流れていく環境というものは一言でいうと暑い。
「あっつぅぃ…」
同じようにこっちは口に出したチヒロが、ペチペチと俺の首筋を叩いてくる。
LRの勇者でさえこの塩梅である。
この過酷な環境に阻まれた上に出現する敵性モンスターは獰猛で、敵性モンスターからドロップする素材、採掘によって得られる資源、いずれも有用でありながら、耐熱特化装備と強力な属性武器の両方を所持する熟練の冒険者が細々と攻略するダンジョンの中でも指折りの難所である、とは森の希少素材を大量ゲットしてホクホク顔のシュティーナが言っていた。
ダンジョンの攻略に内部への侵入を果たした俺達だったが、チヒロさんは俺の背中から降りる気配がなかった。
道案内はない、自力で踏破しなければならないだろう。
「こういうダンジョンに入った時は降りるものじゃないのか?」
「いや、ほら、はぐれないように!手を繋ぐわけにもいかないから!」
まぁまたがられたままでも大丈夫なくらいこの洞窟は広いわけだが。
洞窟の中は思った以上に広く、赤々と燃え流れる溶岩流が内部を照らしていた。
その気温は高く、普通の人間が対策もなしに踏み込めば、その熱で消耗の果てに干物になるだろう。
勇者であるミサキ・チヒロでさえブレザーの上着を脱ぎブラウスの袖をまくった上で胸元のボタンをいくつか外して外気を入れようとしたが、熱気にあふれる火炎洞窟でその行為は熱気を取り込むだけだった。
むしろ年齢の割に豊かな(17歳だったか?)胸部をチラリとのぞかせる彼女に、俺は慌てて視線を逸らさなくてはならなかった。
だが俺のこの身体はリザードマン。
視界は滅茶苦茶広い。
「なんかそっちに照れられるとこっちも恥ずかしくなっちゃう…普通にして普通に」
「俺の中身が人間の男だってことを忘れないでくれよ…?」
「いやあはは…ごめんなさい!」
「だからいつも恥じらいを持てというとるに」
「でもトカゲさん相手だと平気な気がするの、なんでかな?」
ナビさんの指摘にポリポリと頬を掻くチヒロさんを背に乗せ『赤き炎と黒き大地の洞窟』の探索を進める。
「しっかしこの熱気は耐えられない!こういう時は水魔法よね!」
「あ、」
「まてぃ」
俺と聖剣の宿神ナビゲイルが制止する間もなく、俺の周りから霧状の水が吹き上がる。
なるほど、水魔法で霧状の水を周りに発生させた訳だ。
これな、ビチョビチョに汗かいたのと同じなんだよな。
だからやった瞬間は爽快なんだけど。
外気が体温より高いとやった後に渇いて熱気が押し寄せる訳だ。
これサウナの原理じゃなかったか?
熱い暑いとこぼすチヒロさんが使った水魔法で涼しくなるどころか余計に蒸し暑くなってしまった。
「アツイ…
トカゲさん何とかならないの?」
ガックリと俺の背中というか後頭部?に突っ伏し熱気にめげながらチヒロさんがこぼす。
うん、まぁ出来なくもないだけどな。
しょうがないあれやるか、ちょっと予定より早いけどな。
「アツイ、ダルイ…アレ?トカゲさんの肌がひんやり冷たい…なんで…?」
「俺は体温調節が任意でできるからな」
暑い時に俺はアオのカンパニーマンを発動させれば快適でいられる。
さらにシロの風で循環させればこうかはばつぐんだ!
レーアさんとの特訓にヒントを得たこのスキルの使い方は何ら攻撃を発生できる訳でもないのでステータスに乗ることもない。
つまりこれは個体特徴としてカウントされているようだ。
しかも寒い時にはアオとは逆に、アカを活性化すれば暖かい訳だ。
この技は、日常を快適に過ごすことを目的として使えることが重要なのである。
我ながら便利だなと思うが相変わらず戦闘に有用なスキルを覚えないのは少しへこむ。
「えぇー凄くないそれ、冷暖房要らず、というかトカゲさんが冷暖房!」
「はっはっはっ、言い方」
そしらぬ顔して歩を進める俺に文句を言っていたチヒロさんだが、肩車された全身をもたれさせるように俺に身体をくっつけると、
「あ~もぅワタシトカゲさんとは離れられない身体になっちゃったわぁ」
「アホなこと言ってないで落ちないでちゃんとつかまってろよ…」
「油断はならぬぞ主」
この地形ではリザードマンの温度感知の索敵効果が弱く、索敵はチヒロさん任せになっている。
ところどころ溶岩流があるようなダンジョンだったとしても背中に乗せたチートの権化が散歩と変わらない難易度で進んでいく。




