第37話
「あの…レーラさん質問が!相手が武器を持っていた場合どうしたらいいでしょうか?」
「う~ん、そうですね、ユート様は刃物を扱うということに対して根本的な理解が足りないようですし…
腰より少し…そうですね、そのくらいの棒を持つのは悪くないと思います。あとはどこかで扱いやすい盾を持つのがよろしいかと思われます」
盾に棒を装備した人は俺の居た世界にもいた気がする…
しかし、その辺にあった手ごろの長さの棒を拾った瞬間「やっぱりこれだ!」と閃いたのが予感していたのに悔しかった。
「辛うじて位階は一番下ではないので、徹底的に鍛えて体の使い方で相手を上回るのが手っ取り早いでしょうか…」
「あれ?私は最下層グレードのはずでは?」
「いいえ、姫様と鱗を交わしたことによって位階は上がっているはずですよ?」
「そうなんですか!全く実感がないのですが…」
「それはそうです。
貴方の位階が1つや2つ上がったところで、私には大した違いはございませんもの」
「あー…そうなんですねやっぱり…」
しばらく感慨にふけったが、そう言えば前のダンジョンに居たころに持っていたのもこんな棒だった気がするなぁ。
あれ、一応適正見て支給されていたんだなぁ…
棒で。
棒で…
本気か!本気で俺はこれからこの棒で戦うのか!
よし、どこかで良い盾を手に入れよう。
そんな一日だった。
翌日帰ってきたレンゼティアだったが、ちょっと様子がおかしい。
「おかえりなさい姫様、打ち合わせで何かありましたか?」
聞いてみると、本来の話題そっちのけで彼女の首の鱗の件が話題になって大騒ぎになったらしい。
「そういう訳なのでな、お使いに行って欲しいのじゃ」
という訳で、近々俺のお披露目というか、品定め的なことをやることになった。
「はぁそれは構いませんが…
どこに何をしに行くので」
「うむ、妾の所属しているダンジョン連合の幹部のところにちょーっとな」
レンゼティアの話を聞いていると、レーラさんさんがなにか言いたそうにこっちを見ている。
アイコンタクトが取れたところで
「…まぁ…殺されはしないでしょう…」
ボソリと囁くように言っているが、ちゃんと聞こえてますからね?
ちょっとレーラさんさんそれどういう意味でしょうか。
俺と目を合わせてもう一回言って貰えませんかねぇ。
さ…早速特訓の成果を出す機会が巡って来たってことでしょうか?
お披露目ついでに俺の元居た世界の神を探す旅に出ることにしたのだった。
ただ膨大な数のダンジョンマスター1柱ずつ回っても時間が相当かかる。
DMのギルドのまとめ役に連絡をとって、あちこち回らなくても何カ所かに集めてくれるそうだ、お披露目ついでに。
ランキングの高いダンジョンを周ってどんな運営をしているか調べる役目だ、お披露目ついでに。
ついでにお使いしてきてくれって、お披露目ついでに。
お披露目とかなんでやらなくちゃいけないかわからないし!
気が進まないことおびただしいものがある。
そして何故お披露目に一人で行かねばならないのか。
レンゼティアは俺の看護とDMの集まりで滞った業務を片付けているし、ほかに一緒に行ってくれるような知り合いもない。
ただ他のダンジョンマスターに会う機会があるならば、その前に俺にはやることがある。
共に行こうと約束した、勇者ミサキ チヒロとの合流だ。
元の世界に戻るときには一緒に行こうと交わした約束がある訳だし、出来れば先に勇者ミサキ チヒロを探したい。
そのことをレンゼティアに伝えると、
「当代の勇者は女と聞いておるぞよ?妬ける事じゃ。
まぁ構わんが、どのあたりにおるかわかるのかの?」
と彼女は笑いながら答えた。
「約束なのです。
元の世界に帰る方法を探す時は、一緒に行こうと…
一度会っただけですが、約束は約束、果たしたいと思います」
「最後に会ったのはノスティディアの王都バサルトン、そのあと彼女は私を迎えにアルスークの古迷宮を訪ねると言っていました」
「ただこうなってしまった現状、彼女がどのような行動を取っているのかそれは分かりません」
あの行動力の塊が一つ所にじっとしているとはどうしても思えない俺だった。
そしてもう一つ気になること、
「私は元の世界に帰ってもよいのですか?」
「あぁ、それな。
別に構わんじゃろ。
元々の世界で生きたいという欲求には抗えまいよ。
世界にとっては誰が居なくなったからといってそう大きく変わりゃせん」
「誰か一人の影響で世界のすべてが変わるとしたらその者は神の一種じゃ。
まぁ此処は神の遊技場であるからして、神なんぞ見習いも含めてゴロゴロしておるがのぅ」
ここにピンクのオオトカゲがゴロゴロしていますしな。
「呼び集めるDM連中もそうじゃが神とその端くれにとって時間なぞ大した意味がある訳でもなし、のんびり行ってくるがよいぞ」
まぶたを閉じ何事かぶつぶつとつぶやいていたレーラさんがしばらくすると
「わかりました。多分この反応でしょう」
「お探しの勇者はアルスークの山岳地帯にいるようです」
「ただ移動しているらしく直近に正確に転移できるわけではなさそうです、申し訳ありません」
「おぉそうか、では大体でいいから転送してやろうかのぅ」
「はい、ではよろしくお願いします…」
「戻るときは首元のホレ、妾の鱗に願うとよいぞ」
なんだか口をはさむ余裕もないままポンポンと段取りが決まっていくが、転移で移動ならば身につけていいるものそのままでさっさと出発だ。
元々の合流予定だったダンジョン吹っ飛ばしちゃったからチヒロさん心配してるかな。
早く合流できると良いな。
そう思いながらレーラさんが構築し、レンゼティアが魔力を込めた転移の陣に俺は入っていった。
「あ、ちょ」
待てよ!
何、俺もう転移陣入っちゃったんですけどその不穏な発声はどういうこと?
何があったか判らないが、発動が始まってしまってもう間に合わない。
このまま運を天に任せてよっぽど変なところに転移しないことを祈ろう。
ざぶ~~ん!
ばしゃばしゃ~!
こんにちは、俺です。
遊んでるわけではありません。
生きて行くためには、ご飯を食べないといけないだけです。
倒して食べて寝る。
泥抜きもしてない魚はあまりうまいものではないが、俺はこれよりまずいものを日常的に喰っていたから平気だ!
アレに比べればどうということはない。
嘘ですおいしいものが食べたいです。
沼地で腹ばいになって泳いでいるとワニっぽいな。
っていうかリザードマンって大きさ含めて考えるとそのままワニだよなぁ。
黒い大型のトカゲが泥の中ってカモフラージュばっちりだ。
おっと泥だらけだから元々の色はあんまり関係なかったか。
ただ何も考えないで泥の中でボーーっとしてると小さい肉食魚に食らいつかれますけどね。
蚊みたいにぺチンとするだけで倒せるので一口おつまみみたいに頂いていましたが。
肉食魚ばっかりの沼地でエサを取る、と取った魚含めて肉食ですけどね。
まぁ俺の行動も肉食なので問題なし。
ただ全部泥まみれなのがなんとも言えないものがある。
生物は『適者生存』だよ、ウン。
『弱肉強食』だったら今俺がここにいる訳がない。
さて、この旅に出る前にマスターにネームドにしてもらったわけだが。
俺の能力値を確認してみよう。
グレード UC
所属 レンゼティア
名前 ユートリア
種族/Lv リザードマン・オブシディアンLv30
職業/Lv D戦士Lv06+5
階級 None
HP/MaxHP 384/384
SP/MaxSP 171/171
スキル01 片手武器Lv06+5
スキル02 持久力04+5
スキル03 貪食Lv04+5
スキル04 体術Lv05+5
スキル05 創造神の伴侶
Exスキル01 神託
Exスキル02 カンパニーマンLiz
Exスキル03 蟲毒の勝者
Exスキル04 TheLastOneOfLot
装備品① 棒
装備品② バックキャリア
装備品③ 誓いの虹の鱗
ねんがんのグレードアップをはたしたぞ!
これで種族のみで十把一絡げにされないってことだろうか。
いやちょっと戦えるようになったモブでしかないな。
名前はあんまり呼ばれた記憶がないけどさ。
ただねぇ…どう思う?
いや、確かに見違えるほどの成長をしてはいるよ、うん。
スキルレベルも上がって、この世界に来てやっと安心して外を歩ける強さになったといえるし。
この世界で生きているほとんどの生き物のLvは越えてるし。
HP100もあれば人間はじめ普通の生物は一人前と呼ばれる部類らしい。
それは分かってるけど、もう少し何とかならなかったのかねぇ…
具体的には一般スキルを上位のスキルに変えることなく構わず成長させてる。
上位スキルへの変更条件なんて知らないし。
誰か知ってる人を探すしかないだろう。
レンゼティアに聞くのが一番早いんだろうけどな…
ちょっと強い相手に当たるとあっさり負けそうだ。
普通に行動するならこれで十分なんですけどね。
強い相手に向かっていくなんてばからしいけどな、面子のために命を懸けるなんてほんとにくだらない…
でもやることが出来たんだ。
まともにやっても絶対に勝てない相手にケンカを売ることにしたんだ。
そのための第一歩、仲間集めだ。
幸い今のDMとは好意的な関係が結ばれているから、所属組織として上には今不安が少ない状況ではある。
ただランクが上がってスキル枠が増えたはいいけど速攻で埋まってしまっている。
これなに?
<スキル05 創造神の伴侶
創造神と契りを交わし命ある限りお互いに不利になる行動を取らない。
病める時も健やかなときもお互いが支えあう誓いのスキル>
これどういうことよ?と思うがやっぱりなとも思う。
…多分これがスキルレベルがぐっと補正掛かった正体だろう。
というか伴侶って片方が了承してなくても成立するものか?
まぁ恩恵だけを見てマイナス面は考えないことにしよう。
目的達成優先。




