第30話
何…だ…?
このタイミングで新スキル?
しかもExスキルとか…
<Exスキル カンパニーマンLiz
失われた仲間たちの能力を引き継ぎその力を得る。
発動条件が特に厳しい伝説的種族特性スキル。
自らの肉を捧げることによって仲間に力を継がせ、
そして死して尚、力を捧げた仲間と共に在らんとする絆。
結んだ仲間たちの献身は、このスキルを持つ存在のみならず、在りし日の捧げし仲間の力をもまた共に成長させる。
段階が上がるごとによってシンボルが大きくなり効果も高くなる>
右手に燃える炎のようなリストバンドのような赤い文様が現れている。
<Exスキル カンパニーマン発動!
猛々しき赤炎!剛力発動!>
「アタラシイ、タタカイタクナイ、テキガキタ」
今度は金、銀姫、シロのPtが相手だ。
金、銀姫、シロのPt、前衛、物理遠距離魔術、支援回復。
それぞれの役割がうまくかみ合えば俺とアオの2人など抵抗の間もなく打倒されてしまうだろう。
「くそ、すっげぇやりづらい相手が来やがったな…
といってもまともにやったら勝ち目なんてない…か…」
「今更言うことではないガァァァッ!
お前は吾が倒すガァァァッ!」
「貴方とは敵同士でお会いしたくはなかったでございますが…」
「……」
シロはこちらを見ているのかどうか判らないよどんだ眼をして何も語らない。
ただ精霊を呼び出して銀姫と金の2体に支援をしてはいるようだった。
まだ相手のコンビネーションには隙があるように見える。
そこをつくことによってなんとか生き延びるしかない。
向こうのアタッカーは金と銀姫の2体、俺とアオの2人にそれぞれ当たって自力で上回られている。
クロケン軍曹の時のように数の有利で戦うことが出来ない、むしろ数的有利は向こうのものだ。
シロからのバフと銀姫と金のエンゲージブースターが強化のオーラとなって2体の体を覆っている。
俺の持久力とカンパニーマンのスキル効果でアカの剛力を合わせて戦っても決定的な一撃をもらわないように立ち回ることしかできない。
大体にして俺と相対しているのは金。
リザードマン部隊で最強を誇るユニットだ。
お互いたまにスイッチして、相手は入れ替わっているが大体そうだ。
銀姫の槍に対抗するアオも押しまくられ防御もなかなか苦労だ。
だが、アオの両手武器スキルもLv05、そう銀姫に後れを取ることもない。
持久力の低いアオがばててきた。このままアオが戦闘不能になればもう勝ち目はないだろう。
でも、まだ、まだやられるわけにはいかない。
新しい力に開眼し、何とか戦えるようになった。
そう思ってはいても勝機が見えない。銀姫と金のエンゲージブースター、それにシロの支援魔法が底上げしている分、銀姫の槍、金の斧両方を相手する俺達は大分不利だ。
「サンダースピア!」
銀姫の持つ槍の先端に雷の魔法がこもり辛うじて避けたがダメージが防ぎきれない。
防御のために銀姫の槍を凌いだが、力を逸らすことに失敗した俺の体のバランスが大きく崩される。
防御に専念し、かつ相手より小回りの利く武器を持っていても、技量が圧倒的に違う。
大きく武器が弾き飛ばされた隙にガションという音と共に穂先が変形し止めを刺されそうになる。
マズい!
俺がそう思ったとき、大きな隙を作った俺の襟首を掴み、身を入れ替えるようにアオが割り込んできた。
銀姫の魔法と物理攻撃はアオの左肩から斜めに大きく割いた。
アオは左手をちぎり、俺に渡しながら、
「共にある、黒の力に、なるのなら、我が身を捧ぐ、ためらいはなし」
こう言った。
確かに、他からのバフがないアオが一番早く脱落するのは自明かもしれない。
だが、俺をかばって致命の一撃を受けることは考えてなかった。
俺は何かの激しい感情とともに、俺の代わりに銀の攻撃をくらったアオの左手を食った。
<スキル03 貪食が発動!
HP、SPを回復!>
<アオ
HP 9/147→0/147>
アオが死んだ。
カンパニーマンが発動してグレードが上がったせいか、言葉もなんか流暢になっていた。
俺は良いリーダーだったはずはないぞ。
自分の目的のためにお前らを利用しただけだ。
<Exスキル カンパニーマンLiz
新条件解放!>
<Exスキル カンパニーマンLiz
第2段階開放!>
<スキル解放に伴いHP、SPを回復!
一時的にグレードが上昇します!>
左手首から流れる水のような青い文様が現れた。
<Exスキル カンパニーマン発動!
静謐たる蒼水!俊敏発動!>
銀姫はカンパニーマンの発動したその隙に俺を攻撃しようとしたが、俺が持っている袋を見て攻撃をためらってしまった。
「貴方はまだその様なものを持っていたんでございますか」
これは俺が初めて銀姫と出会ったとき彼女から貰った袋、あの時のレーションが入っていた袋だ。
彼女が今、あの時の食いかすも入っていないただのゴミ袋を目にしたとき、なにか想起したかはわからない。
ともかく、銀姫は金の行動に不信を募らせ、金箔は彼女の嫉妬に不快を覚え、2体の信頼度は限界まで下がっていた。
そして今、止めに銀姫が俺に対して心を揺らがせてしまい、金から銀姫への信頼度すら低下してしまう。
限界を超えた信頼度の低下にエンゲージブースターが不具合を起こす。
そしてそれは俺にとって絶対に外すことのできない隙としてしか映ることはなかった。
<リザードマン・ジルバ
スキル07 エンゲージブースター Error!>
銀姫の身体を覆っていた身体強化のオーラに細かいスパークのようなノイズが走る。
急速に後退をして俺の攻撃範囲から離れる銀姫。
それは相互契約関係にある金メッキのスキルにも影響を与える。
<リザードマン・ゴルドー
スキル07 エンゲージブースター Error!>
突然のスキルの不具合に銀姫はよろめいた。
俺を攻撃しようと投石の体勢に入ったシロに、意図せず銀姫が射線を妨害して体当たりする形となってしまう。
バランスを崩したシロのスリングから投射された石はヘロヘロ弾で、俺はそれを赤く燃える右手でつかみ取るようにして捕えた。
そして、そのまま燃え盛る炎の手で握りしめた石くれで金メッキのドタマをカチ割るようにぶん殴る。
「ヌガァァァッ!
このアバズレガァァァッ!
邪魔するだけではなく奴を手助けするとは許せんガァァァッ!
ガァァァッ!お前とのエンゲージブースターを破棄するガァァァッ!!」
<リザードマン・ゴルドー
スキル07 エンゲージブースター Discarded!!>
<リザードマン・ジルバ
スキル07 エンゲージブースター Discarded!!>
エラーによって発生したスパークが止まった銀姫は槍の石突を地面にたたきつけるように突き刺さすと叫びかえした。
「このようなものは断じてエンゲージではございません!
私は貴方様のパートナーのはずなのに、これではスレイブではございませんか!」
「貴方様は私と共にあるという契約を結んでおきながら、私を放ってそこの白いのにのぼせ上っているでございませんか!」
「それでは私の立場がございません!
私はこの白いのが憎うございます!」
「だから、だから私が上だと貴方様にもこの白いのにも、知らせたかったのでございます。
貴方様に私のことを、私との関係を思い出して欲しかったのでございます」
「黙るガァァァッ!」
「私はあの白いのに死んで欲しかったでございます!
むしろこの手で殺してやりたかったでございます!」
女性の怒りの面相を般若というが、今彼女の表情がまさにそれかもしれない。
「でもできなかったのでございます!
それをすれば貴方様は私から遠ざかるでございましょう。
いいえ、むしろ私を憎みさえするでございましょう」
「黙れ!黙るガァァァッ!」
「貴方様は私の大事なパートナー、私は貴方様の邪魔をしたかった訳では断じてございません!」
金と銀姫の間に愛情はあったのだろうか?
結果的には、単に神(笑)が与えたエンゲージブースターに引きずられた銀姫とリザードマンの本能に忠実だった金の違いが出ただけかもしれない。
「まだ言うガァァァッ!
もう死ぬがいいガァァァッ!」
魂から絞り出す哀哭のような銀姫の訴えも金メッキには届かない。
激高した金は銀姫を斧で薙ぎ払い、それを受けた銀姫の身体は腹の部分を大きく砕かれ、胸部分から上と腰から下の二つに分かたれてしまった。
致命の傷だ、もはやこの場の者が持つ回復手段では、落命を回避することは不可能だろう。
「こ…このような…が…私の…ざ…まぁ…すか…
貴方は…」
最後の息を吐きだしながら銀姫は金メッキと俺の両方に視線を向けた気がした。
<リザードマン・ジルバ
HP 1526/1763→0/1763>
「許さぬ、吾に逆らうものガァァァッ!
お前は絶対に許さぬガァァァッ!」
相棒の銀姫とのエンゲージブースターを自分で破棄したくせにがむかついているのか?
それとも格下の俺に粘られているからか?
思った通りにならなくて、それが誰かに邪魔されているからだと思っているからか?
そしてそれが自分のものだと思っている女だったからか?
勝手なことを抜かして何を切れていやがる。
俺はとっくに切れているさ。
金メッキと銀姫のエンゲージブースターが切れても、シロが金メッキに掛けた強化は途切れていない。
俺と比べれば単純に地力で既に金メッキが圧倒している。
アオとアカが貸してくれる力を合わせても、まだSRの金メッキには確実に一歩、あと一歩届かない。
「ヌガァァァッ!
ちょこまかとうっとおしいガァァァッ!」
俺の攻撃が当たったとしても、やっとで与えたダメージはシロが回復してしまう。
暗い目をしたシロは的確に精霊を召喚し金のサポートをする。
あるかもわからないチャンスを待つしかない。
死の咢を開ける暴風のように金の斧が旋回する。
一瞬でも対応を誤れば俺の身体は砕け散るだろう。
処刑場の乱戦もほぼ決着がつき、後は生き残りを決めたRが何体か回復のために地獄から出て行くのが見えた。
こいつらは合格で試験終了ってか。
俺の試練は死ぬまで終わらないらしいが。
金の攻撃がよけきれなくなってきた。
徐々に俺の動きも金に捉えられ、よけきれなかった攻撃の細かい傷が徐々にHPを減らしていく。
<HP 82/456>
「しまっ…」
ズルゥリ…
地面に落ちた誰かの内容物か体液が、俺の足から重心を踏み外させる。
意図しない方向に傾く視界に、ニヤリと金色をした嫌らしい笑みが映る。
衝撃は額から胸に向かって抜けていった。
まともに攻撃を食らった俺は大きく吹き飛ばされ、頭から顔面を半分砕かれ視界は歪み、どこに何があるのか自分がどんな体勢で倒れているかさえ認識できない。
<HP 5/456>
いくらリザードマンの頭が前後に長いとはいえ、これは無理だ…
くっそ、ここまでか…
息が…




