第03話
ちょっとしためまいを感じたと思ったら風景が変わった。
色合い的には変わらない岩盤で覆われているが、通路のようになっているところに俺は居た。
ストックルームとやらから強制移動させられたらしい。
こっちの意思まるっきり関係ないとか強制力高すぎるな。
…~さぁランダムPtで4ユニットずつ配置したよー
ダンジョンの施設をめぐりながらモンスターと戦ってみようかー
施設の点検口から入って内部のゴミモンスター退治して経験上げて頂戴!
Pt組めば負けはしないでしょ!
じゃ配信の用意するから頑張ってねー~…
エレメント分布 火:D 水:B 地:C 雷:C 風:C
勝手な事を一方的に言って声は途切れた。
こちらから声は届かない一方的なものらしい。
周りには俺と同じリザードマンが3人?3匹?
俺が黒で、青、赤、白と色違いで分かりやすいといえばわかりやすい。
ちょっと落ち着こう、落ち着かなきゃだめだ。
どう考えても今の俺の扱いは物語のヒーローポジションじゃない。
雑魚の死はGAMEOVERだろう。
夢でもゲームでも現実でどうだったとしてもGAMEOVERが死とかだと現実と変わらない、リスクを考えるなら試すわけにはいかない。
状況と問題を確認しよう。
一つ目、目覚めると見覚えのない場所で俺は黒いリザードマンになっていた。
意識だけ転移して、モンスターになってるとか夢だと一蹴したいところだけど、感触やら何やらが夢っぽくない。
しかもマッパとか難易度高いスタートっぽい。
「上級者スタートっていうのもテンプレっすよ」
眼鏡のバイトの子がニヤニヤした顔をしているところが心に浮かんだが、これは違う方の上級者だろう。
しかも実際そうなると笑い事じゃないわ。
バイトの子たちが話していた(のが聞こえてきた限りだと)異世界転生ものとかだと神様とかからチートが貰えて大活躍する話が多いらしいんだけどな。
もうちょっと詳しく聞いておけばよかった。
オジサン昔のPCゲームとかTRPGをちょっと齧ったくらいなんだよ。
命がかかるなんて思わないものなぁ。
二つ目、ゲームっぽいステータス画面が見られる。
グレード C
所属 キリア
名前 ??????
種族/Lv リザードマン・オブシディアンLv01
職業/Lv 戦士Lv01
HP/MaxHP 24/24
SP/MaxSP 3/3
スキル01 ??????
スキル02 ??????
スキル03 貪食Lv01
スキル04 体術Lv01
Exスキル 神託
名なしのコモンユニット、リザードマン・オブシディアンLv01
これが今の俺の情報らしい。
各項目に意識を注ぐとさらに詳しい情報が表示された。
<グレード
ユニットのレアリティを区別したもの。
一般的に
C→UC→R→SR→SSR
の順番で希少かつ強力なユニットとなる>
名前は??????
なしってことか…?
なしってなんだと思ったときハタと気が付いた。
自分の名前が思い出せない!
中年のサラリーマンなのは覚えているけど自分の名前が出てこない。
嫁さんも子供も名前も誕生日も出てこない。
いやひょっとしたら元から居ないのかもしれないが。
一時的なものなのかそうでないのか色々考えられる。
夢要素とか、そういう世界なのかとかわからない。
夢と現実の判断要素の疑いもあるがいまは確認方法が思いつかない。
まぁ気にはなるから時間があるときちゃんと考えよう。
<種族
生物としての分類を表す>
うん、これはいいや、俺の常識と変わらない。
現実の常識ではなくゲーム知識の方だがな。
<リザードマン・オブシディアン
黒い鱗のリザードマン。
火山地帯・氷原・砂漠地帯・湿地と住む場所を選ばない。
環境適性が広く種族である。
雑食で多少腐っているものでも平気で食べる。
堅い鱗に覆われた身体と牙、爪で攻撃してくる。
凶暴で知能も高く、成長しレベルが上がると武装する場合がある>
そして俺の種族名だが…
リザードマンのオブシディアン種ってことか。
こんな種族は現実にはないだろう。
直立歩行するオオトカゲだぞ?
ファンタジー世界の生物種族では定番なんだろうけど。
大体そんなに強くないやられ役だよな。
自分がそうだと思うと心配になる。
黒い鉱石名は俺の記憶通り?
これが肌の色を表しているのか。
地球の呼び名と同じ名ところが作為がありそうな感じもするけど、ここも気にしても仕方ないところか。
鉄は鉄、水は水で通じるならそれでいいだろう。
それはいいんだが…
あれじゃない?
俺の種族説明の詳細が、弱くはないけどあんまりイメージが良くない感じ。
なんでも食べるのはいいとして、腐ってても平気とか…
ハイエナとかと同じですか…
自然界に必要なのもわかりますが。
おいしいものが食べたいなと思うんだけど。
いや、今は有利だと思おう。
何を食っても平気というのはこの環境ならアドバンテージの可能性が高い。
胃腸が丈夫なのはいいことだよな、うん。
戦い方は格闘技というより野生の戦いっぽい。
メインは、殴る、蹴る、齧る、引っ掻くって感じか。
今のところマッパだしどうしようもないな。
成長するとっていう説明とLv01という表記が経験で伸びるところっぽい、Lvの上がりやすさが不明だからこれはあとで確認だな。
早めに武器を調達したほうがいいのか、素手戦闘キャラに成長させるのか。
適正はあるがどっちが強くなるか、というか生き残り重視でいこう。
<職業
どのような行動が経験として反映されるかを表している。
規定値をためることによって職業レベルが上がる。
職業レベルが上がることによってスキルを身に着けたりする>
俺の職業の戦士なら戦うことらしい。
簡単でいいのはありがたいが
喧嘩もろくにしたことない人生をおくった人間にはハードだと思う。
戦士Lv01がどの程度戦えるものかこれも確認しなくちゃな。
商人とか農民が良かった。
あるかはわからないけど。
<HP
生命力、0になったら死ぬ。
種族レベル、職業レベルが上がることによって増えることがある>
おぉぅ、わかりやすいうえにこのあたりから思い切りゲーム感が出る。
24点が高いのか低いのか不明だが、直感は低いと告げている。
コモンのLv01が高いわけないでしょう。
<SP
気力、消費することで魔法とかSP技とかいう必殺技が使える>
俺には魔法もSP技も縁がなかった、残念。
低レベルの雑魚ユニットには関係ないらしい、悲しいね。
<スキル
種族・職業・経験・祝福などで得られる技能。
種族スキルは生まれながらに持っているものと成長で覚醒するものに分けられる。
経験によって覚醒するスキルは対応する行動をとり経験が一定に達成することでスキルLv01として覚醒する。
スキルレベルが上がることで対応行動の成果がレベルに応じて魔術、スキル技が使用できる>
さらに思いっきりゲームっぽい。
レベルが上がることによって必殺技が使えるようになる感じだが、かなり個人差が出る感じだ。
さっきの謎の声もおいしいスキルを覚えろって言ってたからな…
俺にしたって
スキル01とスキル02が??????で不明だか文字化けみたいな欄になってる。
これが職業・経験で後天的に覚醒する欄らしい。
2つのスキル欄が何で埋まるかで俺の今後が決まるとすると行動に気を配る必要があるのかもしれない。
と言いたいところだが、なにが原因でどのスキルが覚醒するかわからない、こんな状態で対策なんぞ立てようもない。
<スキル03 貪食Lv01
スキル04 体術Lv01>
<貪食
食料を素材のまま摂取可能となる。摂取した食料でHP・SPが回復する>
<体術
肉体を使用した攻撃に有利になる>
スキル03、04は最初から持っていることから種族スキルだと考えられる。
ものを食べることによって自己回復するスキルは良いね、回復スピードが高ければ。
体術は今のメイン戦闘スキルになるな、種族としての戦い方をスキルで表してる感じになるんだろう。
武器スキル覚醒を狙うかこっちを伸ばすか、枠が限られているようだから考えどころだ。
コモンは最低グレードなので、これの種族Lv1職業Lv1である俺は最低オブ最低クラスの戦闘力と仮定したほうがよさそうである。
要するに俺はゴミ戦力。
言ってて悲しいが、生き残りのためにレベルかクラス、できればグレードを上げて身の安全を図らないといけない。
三つ目、頭の中に変な声が聞こえる。
スキルの中で異彩を放つこれ
<Exスキル
神等の高位存在により付与された能力>
<神託
神等の高位存在の言葉を聞くことができる>
頭に響くあの声が聞こえるのは多分これだ。
ということはあの声の主は神ってことになるのか。
これもチートか?
一方通行で拒否権ないっぽいけど。
相手の目的が分かることはアドバンテージではあるけどな。
声の主が本物の神かどうかは判別できないけれども、先ほどの瞬間移動も考えると、俺は超常の力を持った存在に生殺与奪の権利を握られていると考えていいだろう。
正直言うと冗談じゃないと思う、でも今この場のルールはそうなっている。
情報を何とかして集めて判断材料を増やし、自由に行動できるようになりたいと考えるのは現代人としての思考が俺に残っているからだろう。
四つ目、これからこいつらと3体?で戦闘しなければならない。
意思の疎通とかそういったものができれば効率よく行動できるんだが、どうしたものか。
思いつく限りの疑問について一通り考えてみたが、分からんことばかりで、行動の幅自体はほぼ選択肢がないことが分かっただけだった。
神とやらの思惑通りに動かないとどうにもならない。
従わないという選択肢が一見あるように見えるが、先ほどの瞬間移動も含め相手の力量がまるっきり見えない。
多分抵抗は無駄なレベルで力が違いすぎるだろう。
これがどうにも気持ち悪い、多分どこかでとんでもないことが起きそうな気がする。
だが今はどうにもできない。
状況に流されるしかないだろう。