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第27話

「なになになになになにどういうことよ!

 なんで街を襲ったトカゲのモンスターが『日本』って書いて土下座してんのよ?」


よかった、狙い通り勇者は急ブレーキで立ち止まってこちらに話しかけてきた。


お前(シャシャギャ)日本人(シャギャシャギャ)ならシャギャ(シャギャギャ)いたくない。

 (シャギー)日本人(シャギャシャギャ)だから。

 そしてお願い(シャギャギャシャ)だ、どうか殺さ(シャンギャ)ないで欲しい(シャー)


「何シャギャシャギャ言ってんのよぉ!

 ぜんっぜんわっかんないんだけど!」


やっぱりだめか、勇者が何を言ってることは分かるのに。

俺は日本語話しているつもりなのに!

あっちは日本人そのままで俺はリザードマン、だからなのか俺の口から出るのはリザードマンの言葉(シャギャギャ)だ。


「あんた、何を知ってんのよ!

 その顔あげなさい!

 そして知ってることを教えなさい!」


剣を突き付けられて俺は顔を上げる。


頼む(シャギャギャシャ)殺さ(シャンギャ)ないでくれ。

 (シャギャ)日本人(シャギャシャギャ)なんだ」


「え?そんなこと言ってんの?

 ナビちゃんどういうことよ?

 どう見たってトカゲの人じゃん?」


あれ?言葉が通じてる?

というか誰か通訳してる?

あたりには誰もいないようだが?

キョロキョロと辺りを見回しても誰もいないようだが。


「ん?アタシの言ってることは分かるけど、ナビちゃんの声は聞こえない感じ?」


頷くように頭を振る。


「…これは一応意思の疎通はできる感じなの?

 おぉぉぉ!これは大きな手掛かりの予感!」


やっほいと喜ぶ勇者。

でも多分がっかりさせちゃうんだろうなぁ…


「じゃあ名前が出たついでに紹介するけど、ナビちゃんはこの剣、ウェラエアの天位聖剣に宿る精霊?とか神の端くれとか言ってる。

 今もついでとはなんだとか怒ってるし。

 正式にはナビゲイルっていうらしいけど、略してナビちゃん。

 そしてアタシが」

ミサキ(シャンギャ) チヒロ(シャギャス)さん」


「ミサ…ってなんですって?当てた?知ってたってこと?」


ナビゲイルでナビちゃんとかネーミングセンスゥ!


「俺にはステータスが見える能力がある。

 だからこうして声をかけたんだ」


「…ほぉぉこの世界の人はなんかスキルとかがなんとなくわかる人がいたり、神殿とかには測定する器具があったりするけど。

 そういうのの精巧なやつというかチートってやつ?

 便利じゃん見ただけで分かるとか」


一応(シャンギャルシャ)チート能力(シャギャ)内緒(シャギャシャギ)にしてくれ、頼む(シャギャギャシャ)


彼女がそんな人間ではないとは思うが、彼女の能力(チート)が俺に知られたことで生じるデメリットを現時点で相殺するには俺の能力(チート)の開示しかない。


圧倒的強者に交渉を持ちかけるに当たって、今、生命の保障に値する価値があって切れるカードがチートのことしかない。


強者には、せめて自分が五分(イーブン)であると思わせないと関係が破綻する可能性がある。


俺もミサキさんにとって有用なスキルを持っていると知らせることで身を守るしかないだろう。


まともにやったら俺はPt(パーティ)ごとプチ殺される。

「…そりゃあ、まぁチートだし?

 その辺の人間が持ってる能力だったら争奪戦になって、下手したら監禁したりするような事件になるかもだけど。

 アンタの場合トカゲ語が判らないとどうしようもなくない?」


「まぁいいわ、それは了解。

 それであなたのことを教えて、アタシも教えるから。

 ていうかアンタの名前教えなさいよ、アタシだけ名乗らせるとかありえないでしょ」


「でも一番教えてほしいのはこれ。

 元の世界に帰るにはどうすればいいか知ってる?」


「ごめん、元の世界への帰り方は俺も知らない。

 俺の事情は……」


ミサキさんは崩れ落ちた、ホントゴメンよ…




お互いの事情を交換し分かったことは、細かい点は種族が人間かそうじゃないか(本人は大問題なんだがな…)とか色々あった。

俺の身長は、ミサキさんの身長160㎝で換算すると、220㎝くらいあるそうだ。

あれこれと事情を説明したりされたりするうち、なぜか俺が元の世界で働いていた店のテーマまで歌わされたりしたが、歌ってみたってシャギャシャギャしか聞こえないだろ。


まぁがっかりしてたのが、腹抱えて笑えるくらい回復したのは良かったけどな。


俺とミサキさんで共通しているのは、


いつの間にかこの世界に居た。

ゲームみたいなチートを持っている。


ということである。


結論:つまり元の世界に帰る方法が判らない。


もっと長い時間かけて色々すり合わせれば、何か出るかもしれないが、この短時間ではこんなものだろう。


「はぁぁぁ!帰る手段のヒントぐらいにはなるかと思ったけど、お互いつっかえないわねぇ」


言い方は失礼だが悪い気分はしない。

お互いの境遇を憐れんでも仕方ない。

笑い飛ばして前に進んだ方が良い。


しかしこの子自体が色気より超元気だな。

ちょっと元気分けてくれと思う。

(オジサン)ちょっと眩しいよ。


「そうだなぁ…俺のチートは電波受信と、ステータスとかのシステムの情報が一部見える物っぽいから、色々見て回れたら何かわかるかもしれないなぁ」


「…え、そしたらアタシも行く!

 弱っちい(コモン)のリザードマンのトカゲさんも勇者のアタシがいた方が良いでしょ、ってか一人で帰ろうとかナシだからね!」


LR(チート)と比べてはいけません。

 

俺は普通(コモン)なの。


一般人の俺にとって勇者の支援があるということは大きいことだが、問題がいくつかある。


「いやそれがな、俺はシステムが見えるけど、所詮ダンジョンモンスター(D Mには絶対服従)な訳。

 だからシステムが判断すればそれに従う行動が強制されるんだよ」


~Regular Massive War(大規模戦争イベント)~

~勝利条件:敵拠点の抵抗力喪失

      敵総大将ユニットの撃破または戦闘不能

 敗北条件:自軍総大将ユニットの撃破または戦闘不能

      敵拠点の抵抗力が残っている時の撤退

 戦況:敗北(Lose!)


 DMキリア軍 

  部隊/指揮官:混成Gob(鬼族)歩兵旅団/オーガロード ユニット数 1824 

  部隊/指揮官:混成Udd(死霊)歩兵旅団/スケルトン・ナイト ユニット数 1894

  部隊/指揮官:混成Liz(リザードマン)歩兵中隊/リザードマン・ゴルドー ユニット数 106

  部隊/指揮官:混成輜重大隊/ワーカーアント ユニット数 1000

  単独攻撃ユニット:グランドレイクLv15(Dead!)


 Vs 


 ノステディア王国軍

  部隊/指揮官:第一騎士団連隊/騎士団長サドラー・ベミティース・ノステディア ユニット数 2000?

  部隊/指揮官:歩兵/不明 ユニット数 3500?

  部隊/指揮官:冒険者協会冒険者部隊/不明 ユニット数 670?

  ノステディア王国単独ユニット:勇者ミサキ チヒロ

 

 DMステータス:AUTO

 BGM:Massive War05 涙を飲んで~


どうやら撤退することになったようだ。

これで敗北条件は満たした、ということで…

しかしずいぶんボロボロにやられたものだな、こっちは。



俺達の敗北が決まった。

どのタイミングで決まるかはわからないが、まぁグランドレイクが目の前の勇者に討ち取られてからは、時間の問題でしかなかったか。

 

俺達DM軍(モンスターパレード)の敗北が決まり、全員が撤退行動を取らされる。


「ここまでだな。

 戦闘イベント敗北だってよ」


「敗残の俺達は逃亡を始めまーすってな。」


「またどこかで会える時があれば、情報交換しようぜ。

 できればその時は帰り方教えてほしいけどな」


「…ね、ねぇ!捕虜っていうとアレだけどさ。

 捕まえた!とかテイムした!とか言って残ってもらったりできないの?

 アンタはアタシのものだって言えば安全だよ?」


「ありがたいがそれはできない。

 支配されているままで神(笑)(キリア)の意図しない状態になった時どうなるか分からない。

 あと、ステータス見られたら一発で嘘がばれるぞ?」


立場(クソザコ)を考えるならば神(笑)(キリア)の思惑を外すんじゃなくて超える形でないといけない。

そのための切り札を得るのには、目の前の彼女の力も借りなければならないだろうなぁ。


「それに今ミサキさんについて行くと、確実にこいつらと戦うことになるしな。

 そいつは俺的にかなりまずいのさ」


イベント敗北という判断をしたシステムが、俺達に敗走の指示を出ている。

3人はそれに従い行動を開始したいのだが、一向に動かない(Ptリーダー)を眺めてそわそわしている。


「…むぐぐぐぐ…

 今はしょうがないのか…

 判った!我慢する!

 アンタ居るのはアルスークの古迷宮って言ったね!

 アタシが何とかしてあげる!

 迎えに行ってあげるから待ってなさい!

 アンタはマジでホント弱っちいんだから!

 しっかり生き残るように頑張りなさいよ!」


LR(レジェンドレア)と比べられても困る(2回目)。


「あぁ、判った。

 コソコソ隠れて待ってるさ」


ついでに頼みごとを一つしておく。

これが役に立たないことを祈りたい。(消火器は持っていた方が良いけど使う機会がない方がもっと良いよね)


「絶対だからね!

 約束したからね!

 迎えに行くまで死んじゃったら絶対許さないんだからね!」


勇者に背を向け4人で走り出す。

高速移動形態(ラプトゥル)で疾走すれば、短時間なら馬以上の速度で走ることはできる。


だが、勇者が敵ではなくなっても、戦いに勝った王国側の戦士は次々現れる。


行く先を塞がれればボロボロの俺達では早々に打ち取られてしまうと思ったが、


「それはアタシの獲物だー!

 手出し無用ーーーー!」


ミサキさん付いて来てるんかーい!

しかしさすが勇者、俺達の高速移動形態に走ってついてこれるとは。


いや心配して送ってくれてるんだな。

お別れの雰囲気は台無しになったが、ありがたい、全力で脱出に専念しよう。


ボロボロになった俺たちは安全地帯を目指し疾駆する。


ミサキさんはしばらくついて来てくれた。

人気が無くなったところで、手をブンブンと振って送ってくれた。

人目がないとはいえいいのか勇者がそんな行動とって。


「次からはチヒロでいいからねーーー!」


「どっちでもシャギャにしか聞こえないだろうが、

 チヒロさん!

 ここまでありがとう!」


「こっちの片が付いたら絶対行くからー!

 待っててねー!」




チヒロさんは俺達の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。

そんな気がする。


高速移動形態でいるのも限界だ。

上手く撒いたとは思うが、日が暮れるまでに野営できるところまで移動しよう。


「マケタノハ、ザンネンダッタガ、イキテイル」


「全くだ、俺達は生き残ったのさ。

 戦争の勝ち負けなんか俺達に関係あるものか」


「ツカレタ、ハラヘッタ、ネムイ」


「そうだなぁ、何か食べられる物手に入れて、休める所見つけよう」


「ニンゲン?ニンゲンガコノミ?タベルデナク?」


「人間は食べないよ、あんまり旨くもなさそうだ」


「ム…」


はいはい、ぺちんぺちんしない。

疲れて皆よろよろだけど生き残ってダンジョンに帰ろう。


<リザードマン・オブシディアン(俺)は持久力を覚醒した。

 リザードマン・アゼツライト(シロ)は集中を覚醒した。

 リザードマン・アパタイト(アオ)は俊敏を覚醒した。

 リザードマン・カーネリアン(アカ)は剛力を覚醒した>




さて今回の戦いでシロを抜かしたコモンの俺達もスキル04まで覚醒した。


神(笑)(キリア)が待っていたタイミングだ。


勇者とした約束は守れるだろうか…


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