第26話
「えいっ」
「せいっ」
「やぁぁあ!」
気合の声とともに付きこまれる槍の穂先は鋭く、そして正確に急所を狙ってくる。
「えいっ」
「せいっ」
「やぁぁあ!」
一の型、二の型、三の型の繰り返し。
10年くらいは練りこんでいそうだ。
こういうのはスキルのLvではわからないところかもしれない。
俺が棒で抑えてアオとアカが両脇から攻め掛かる。
いつもの俺たちの必勝パターンだ。
さらにシロの体力回復、俺達へのバフ、敵へのデバフ、すべて繰り出して倒せない。
今までこのパターンに持って行くことで強めの敵は屠って来て、実際倒せなかった敵はいなかったのに奴の防御が抜けない。
Lvとは違うところで熟練度が高い。
盾の使い方が合理的で素早い、スキルレベルはそう高くないはずなのに。
槍術盾術組み合わせた戦い方の恐ろしさを垣間見せてくれる敵だ。
攻撃の構えをしているはずなのに合間に繰り出されるアオとアカの攻撃に奴の防御が間に合い、2人が弾き飛ばされてしまう。
「えいっ!」
「はぁっ!」
「うりゃりゃぁ!」
俺達相手に防御に割くべき力がどのくらいでよいのか見切ったかのように敵は攻勢に移る。
強力な連続の突きが俺を襲う。
せめて俺の片手持ちこん棒が奴の槍よりも長ければ…
お互い膠着状態に陥って俺達は決め手に欠ける闘いを演じていた。
細かい傷はお互い入るのだが、戦線離脱するほどの大けがをすることもない。
4対1なのに相手もよくやる。
その時、地鳴りとともに結界発生装置が破壊された。
その生命の最後まで装置を守っていた全身鎧の騎士が倒れていく。
~Regular Battle~
~勝利条件:結界発生装置の破壊 (達成!)
敗北条件:目標を達成しないでの中隊の全員の撤退
DMステータス:AUTO
BGM:Regular Battle05 探しやすかったですか~
俺達が相手をしていた槍使いが
「隊長ぉぉぉ!
俺の恋人を紹介するって言ったじゃないですか!
彼女の手料理ご馳走するって言ったじゃないですか!
結婚するときは一番いい席で酒を飲み放題にするって言ったじゃないですかぁ!」
「おいその辺にしてやれ」
「ちくしょう、覚えていやがれ、いつか必ず、必ず隊長の仇を取ってやるからな!」
そう言うと逃げて行った。
やかましい、どこまでフラグたてるつもりだ貴様。
俺達に結界装置が破壊された都市はモンスターの侵入を許し、大混乱に陥っていた。
城壁が崩されて大型モンスターが入り込んだらそりゃあものすごい被害が出るだろう。
SSRモンスターなんて怪獣だよな、あんなのどうやって退治するんだ。
<彼我軍勢の大将ユニット同士が接触しました。
一騎打ちの要件を満たしました。
大将同士の一騎打ちを開始しました>
~Regular Massive War(大規模戦争イベント)~
~勝利条件:自軍大将の勝利
敗北条件:自軍大将の敗北
DMステータス:AUTO
BGM:いざ、雌雄を決せん!~
<SSRグランドレイクLv15
Vs
LR異世界からの勇者Lv17 ミサキ チヒロ
Duel Start!>
お、グランドレイクと王国側の大将が接触したらしい。
って名前!その名前!そして職業!
どこだ?
首を巡らせると今回の遠征の最大モンスター、グランドレイクに飛び掛かる影があった。
これが人間のLRか、ちょっと見普通の恰好だが。
いや元の世界の普通の学生の恰好をした女の子がここに居るのはおかしい。
これはぜひとも確認せねばならないだろう。
グレード LR
所属 ??????
名前 ミサキ チヒロ
種族/Lv 異世界人Lv09
職業/Lv 異世界からの勇者Lv17(BossTarget!)
HP/MaxHP 6474/6474
SP/MaxSP 3621/3621
スキル01 聖剣の主(3+3+3Lv相当)
スキル02 漆位三日月魔術(5+2Lv相当)
スキル03 戦神の闘気
スキル04 舞踊神の演舞
スキル05 剣神の祝福
スキル06 舞踊神の祝福
スキル07 戦神の加護
スキル08 魔術神の加護
スキル09 剣武魔神の舞
Exスキル 異世界召喚者
装備品① ウェラエアの天位聖剣
装備品② 蒼鹿館女学院制服
<聖剣の主
剣を扱うに当たり聖剣のもたらす武器スキル。
聖剣に認められた存在としてスキルレベルに+3効果と熟練度上昇にボーナス>
<剣武魔神の舞
攻撃する場所、される場所、防御の仕方やステップの場所が、音と色と形でスキル所有者にのみ表示され、攻撃・魔術・防御・回避と最適行動をとることによってステータスが上昇する>
人間?勇者のグレードLRはスキルが別世界なのだが…
「えーい!」
彼女ははステップを踏むようにグランドレイクの攻撃をかわすと、カウンターで白く魔法の煌めきが映える聖剣を突きこむ。
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
1stHit! Good!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 9947/9984→9910/9984>
「やぁ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
2ndHit! Very Good!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 9910/9984→9836/9984>
名前と装備している制服、そして何よりあのExスキル、彼女は俺と同じ世界から来たんじゃないだろうか。
「とぉ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
3rdCombo! Great!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 9836/9984→9688/9984>
「ギジャァァァ!!」
これが本物のチート主人公か。
「うりゃ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
4th Combo! Beautiful!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 9688/9984→9392/9984>
SSRの攻撃を回避して一方的に攻撃している…
LRの強力な攻撃がSSRであるグランドレイクを圧倒している。
「せい!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
5thCombo! Stunning!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 9392/9984→8800/9984>
何この格差社会。
「はぁ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
6thCombo! Fabulous!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 8800/9984→7616/9984>
アナタだけやってるゲーム違うんじゃないですかねぇ。
「おぉぉ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
7thCombo! Amazing!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 7616/9984→5248/9984>
ストラテジーゲームに無双ゲーのキャラクターを持ち込まないで欲しい。
彼女が攻撃するたびにどんどんダメージが多くなっていく。
「うりゃりゃりゃ!たぁ!」
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
8thChainCombo! Excellent!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 5248/9984→512/9984!>
<ミサキ チヒロ
剣武魔神の舞発動!
9thChainCombo! Incredible!
身体能力上昇!>
<グランドレイク
HP 512/9984→0/9984!
Finish!
グランドレイクは倒された!>
<ミサキ チヒロのグランドレイクに対する身体能力上昇を解除します>
口を開けて眺めている間にSSRのグランドレイクが一方的に沈められる。
ダメージがコンボで倍々に増えて行くのなら、9連コンボが決まればHP1万弱のグランドレイクさえ倒せる。
まさにチート…
…~ちょっと~こんなところに勇者がいるなんて聞いてないんですけど!
あぁぁん…こないだのボックスガチャの目玉がぁ~
あぁ!あっちでも一騎打ちが!もぉ勘弁してよホントに~~…
ボックスガチャの目玉SSRがばっさりやられて思わず声が出たか涙目の神(笑)。
ざまぁ。
勇者とはぜひ交渉したい俺に神(笑)の注目があるのはまずい。
と思ったんだが他でも一騎打ちが始まったらしくそっちに気を移したらしい(多分一騎打ちバカのゴルドー)。
だがそっちにDMの注意がそれたのはいいけどどうやって交渉する?
勇者がこっちにどんどん向かってくる、ヤバイ!
どうする!
今は神(笑)の眼も勇者から離れている。
多分金色の一騎打ち大好きな奴のおかげで。
ならば。
畜生、元の世界の社畜の最終決着兵器を炸裂させよう。
嫌なこと思い出すから二度とやりたくなかったのに!
爪で元居た世界で自分がいた国の名前を地面に削って記す。
簡単な二つのシンメトリーな文字で綴る懐かしい名前。
アオ、アカ、シロに絶対手を出さないように言いつけ、声の届かない所まで退っているように指示すると、向かってくる勇者にその名前を見えるようにして、俺は両方の膝を揃えて座ると体を前に傾け額と両手を地面につけた。
『ザ・土下座』
初めて土下座した時のことは未だに鮮烈に覚えている。
俺がぺーぺーの新入社員の時、取引先とのやり取りで手違いがあってお互いにかなり大きな損害が出たのだ。
何も教えられていなかった俺に、いつの間にか全ての責任があったことになっていた。
何時間にも及ぶ説教の後、取引先と自分の会社、両方のかなり上の役職の人の前まで行って、土下座して許してもらうように直属の上司に指導されたのだ。
いやぁあの時の、
「未来ある若者がこうして頭を下げておりますので、どうかお許しいただけないでしょうか」
と、横に立っていた上司の声の調子は忘れられるものではないなぁ。
おかげさまで何かあるたびに率先して、土下座で切り抜ける俺は元の世界では周りから土下座マスターの称号を頂けるまでの熟練者として知られていた。
やる度にもう二度としないと心に決めて、誰かに継承させようと思っているのに、俺の部下に伝承者がいないのは残念である。
おっと涙が。
闘えと電波が飛んでくるのに震える身体を、必死で抑える。




