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第24話

<ノステディア王国王都バサルトン王城>


その日、ノステディア王国王都バサルトンの鐘楼からは、いつもののどかな時報ではなく、胸をざわつかせる敵襲の調べが鳴り響き、止むことがなかった。

 

城下の街中では大商家や貴族街などが家中にある壕に入り万一の敵の侵入に備え、庶民は各々がそれぞれの最適の行動を取ろうとしていた。




王城の謁見の間では王太子サドラー・ベミティース・ノステディアが頭をたれ出陣の挨拶をしていた。


王太子が頭を下げるのはこの世にただ一人。


「父上、では」


「うむ、王都内部の守りは任せよ、吉報をまっているぞ」


父王たるアレックス・ベミティース・イーレエン・ノステディアに首を一層下げ、


「は、伝令によれば、敵の主力はゴブリンとスケルトンとか。

 我が王国の(ツワモノ)共に掛かれば打ち破ることなど容易き事。

 ご安心ください」


「兵一人一人の力が弱くともまとまれば大いなる力を発する時もある、何事につけ油断なきようにな」


「はてさて、奴ら骨と小鬼に群れる以外のことが出来る知性があるのかどうやら…

 いえ、父上の仰る通りですな、気を引き締め事に当たります」


謁見の間を辞し、前室である鏡の間でサドラーは一枚の鏡の前に立つと、影のように気配を断つ従者から受け取った片眼鏡(モノクル)をかけ、自らの姿を確かめた。



グレード     人位最高級

所属      ノステディアス王国

名前      サドラー・ベミティース・ノステディア

種族      中原系人間

職業      ソードマスター

階級      ノステディアス王国二位将軍

技能      体力横溢/人為越し力

技能      凛凛と漲る気力

技能      達人を越えし剣術者

技能      一流たる槍使い


装備品①    ノステディア王国騎士団長の剣

装備品②    ノステディア王国騎士団長の鎧

装備品③    ノステディア王国騎士団長のマント



簡易的な装置とはいえ『能力の姿見』は謁見の間に不埒者が入ってこないように設えられている装置である。

良くわからない表現もあるが今のサドラーの能力が人として最強に近いのは感じ取ることが出来る。


自分よりもランクの高いものは周辺諸国を見ても皆無、大陸東部一の猛者として自他ともに認める存在だった。


あのものが現れるまで。


「この世に俺の能力を超えるものがいるとはいまだに信じられん…」


返される片眼鏡(モノクル)を受け取りながら従者が静かに言った。


「アレは神の化身、もしくは神そのものとも言われています。

 今、何より大事なのはそのものが味方としてこの地にあるということ。

 殿下は臣民の王者たるものとして、彼の者を存分に利用なさいませ」


「そうか…そうとも言えるのか…

 うむ、分かった。

 精々こき使ってやるとしよう」


「まぁまずは我ら騎士団が一当てしてみるがな。

 きちんと訓練した軍の恐ろしさ、思い知らせくれよう。

 そういった意味では小鬼と腐れ骨では腕の振るいようがないがな」


斥候からの報告ではゴブリンが8~9,000、スケルトンなどのアンデッドが5,000とあり、それぞれ上位種がいるとの報告もあった。


対するノステディア騎士団1,000。

援軍に間に合った近隣領主の増援など雑多な兵士が5,000、あわせて総兵力6,000。

数の上では倍する敵と正面から激突するつもりのサドラーだったが、それでも兵力ではなく能力では圧倒的にこちらが有利だと信じていた。


だからこそ野戦を選択した。


王都に被害が及ばないように、しかし他に散らさないように。

王都目前の平原に敵を集中させて逃がさず撃滅する。


作戦を決定し敵軍が王都近郊に現れるまでサドラーは待った。

侵攻路となり犠牲となった集落の報告にも歯を食いしばって耐えたのである。


決戦に間に合わなかった近隣領主の私兵軍団も続々と向ってくるはずであったし、王都内部には近衛軍団と冒険者などの闘うことのできる民間組織が防衛に当たる手筈である。

あのものも王都内部で待機しているはずであり、心強いというべきであろう。


心の晴れたサドラーはマントを翻し、漲る力を振りまくように歩き始める。

従者は自信を取り戻した主人の背中を見つめ、一息つきながらひとりごちる。


「さてあの者は敵か味方か、人か怪か、栄光と災厄のいずれをもたらすのか…

 いかんいかん、私の方が迷いに捕らわれてどうする。

 今は目の前の大事を片付けねばならん」


従者は王太子と自分のいつもの定位置から外れたのを修正するとともに、悩み事も脇に置くことにした。

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