第12話
「失礼しまーす。
廃品回収でーす」
コソコソっと他のリザードマンの食べた後の袋をあさり、なるべく袋自体の損傷が小さいものを捜索する。
リザードマンに要求するのが間違ってるんだろう。
十分わかった、でもやっぱり言わせて欲しい。
「お前らもうちょっと奇麗に食べろよ…」
アカと同じ食べ方して涎まみれなのとか、ほとんどボロボロのゴミばっかりじゃないか。
おかげでかなり時間がかかってしまったが、まぁなんとか何枚か良さげな袋を手に入れることができた。
そろそろ切り上げて戻って皆と合流するかと思ったとき、大きい上においしそうな香りがするきれいな袋を見つけた。
「おぉ!お宝発見。
こりゃいいね。
ではではいただきます」
ホクホクと俺が袋に手をかけた時、
「貴方はそこで何をしてるんでございますの?」
薄暗い洞窟でも輝く見事な銀色のリザードマンに声をかけられた。
俺の今まで見たことのない色、
初遭遇の個体なので確認してみる。
グレード SR
所属 キリア
名前 ??????
種族/Lv リザードマン・ジルバLv04
職業/Lv デュケスナイトLv01
階級 カンパニーコマンダー
HP/MaxHP 93/93
SP/MaxSP 55/55
スキル01 槍術Lv02
スキル02 三位星魔術(Lv05+1相当)
スキル03 貪食Lv01
スキル04 体術Lv01
スキル05 ??????
スキル06 魔術の才能
スキル07 ??????
装備品① 三星槍+2
装備品② キリア騎士の鎧Liz
グレード SR!
なんというか格差ありすぎじゃないかこれ。
種族Lv04でHP100近くとか。
俺のLv07でHPは68/68ですけど?
スキル枠7つあるとか。
なんか高級そうな武器防具とか。
「私に話しかけられて無視した上に、ジロジロと見つめるのは不躾にございます!」
もともときつい目つきを険しくして、手に持った槍を鼻先に突き付けてくる。
しまった、ステータス確認に夢中になってボーっとしてた。
「ごめんなさい、あなたに見とれてました。
食べ終わった食料の袋を集めていたのです」
この能力の高さとスキルの数は驚愕である。
そして俺の培ってきた対クレーマー話術を食らうがいい。
「む、素直なのは良いことでございます。
しかし身分が低いとはいえ戦士が食べ残しをあさるなどと浅ましいのでございます」
槍を下ろし戦闘体勢は解除されたが、相変わらず細めの目でギロリと睨まれている。
「はい、申し訳ありません。
こちらの袋は食べ残しなどもなく奇麗なもので、大変に素晴らしいものだと思います。
ぜひ私にいただけないでしょうか」
手にした袋を裏返し空っぽであることを示しながら頭を下げる。
頭を下げる動作に意味があるかは判らないが、意思が通じるようにトーンに気を付けて声に意識する。
例え耳にはシャギャァとしか聞こえないとしても。
「むむ、私の食べ終わった袋が欲しいと言われると悪い気はしないのでございます」
コテンと小さく首をかしげると少し考えるような風情だったが
「いいでしょう、そのようなもの私には不要でございます。
持って行ってよろしゅうございます。
ただし、変なことに使ったら許さないのでございます」
最後に目つきを一瞬だけギロリと凄ませると許可をくれた。
「ありがとうございます。
大切にさせていただきます」
俺は礼を言ってその場を離れた。
あるぇ?狙い通り袋ゲットしたのはいいけど、扱いが泥棒から変質者に変わっただけな気がする。
詳しくステータスを確認する時間もなかったが、また後に機会があれば確認させてもらおう。
時間が限られていて正直それどころではない。
やること終わらせてさっさと休まなくては。
皆のいた場所に戻ろう。
どのくらい使える石があるか怖い気もするが。
アオ、お前が持ってきたのは尖りすぎ、袋破れるわ。
「コノイシハ、ホドヨクトガッテ、イタソウダ」
アカ、お前が持ってきたのはデカすぎ、袋に入る大きさに割れ。
「オデ、オオキイノガスキ」
シロ合格!ちょうどいいぞ、さすがだ。
「コノフクロハドウイウコトカ?」
「その大きいのは貰ったが何か?」
「ムム…」
詰め終わったら出発まで休もう。
お疲れ様、生き残ろうな。
~Regular Invasion War~
~勝利条件:敵拠点の抵抗力喪失
敗北条件:勝利条件を満たさないで軍団が撤退する
戦況:行軍中(初日)
DMステータス:AUTO
BGM:War Trip02 ちょっと隣の村までお祭りにW~
…~いよいよ出発ですねー~…
…~草原を三日ほど旅してといったな。
あれは嘘だ。
初日はダンジョン出口から山の中で藪をかき分けて、林を目指して進め。
なんちてwww
2個中隊の戦闘集団と1個小隊の輜重部隊ユニットが編成できましたー。
さぁ、頑張って参りましょう~…
聞いてませんけど!
くっそ、神(笑)くっそ。
俺たちは初めてダンジョンの外に出た。
すっげぃ山の中の森の中にぽかっと開いた
出てきたばかりのダンジョン入り口を確認する。
<キリアの第4ダンジョン=アルスークの古迷宮>
<154133世界中央大陸の中心近くにある小国、ノステディア王国の西部に広がるアルスーク山岳地帯、その中でも主要な山であるアルスーク山の中腹に、人知れず開いている裂け目を入り口にして、地下に広がる小規模迷宮である。
ダンジョンとして採掘されるエネルギーの効率が悪く、長らくダンジョンマスターに放置されていたが、最近になって活動を再開した。
人間側にはアルスークの古迷宮と呼ばれている>
~エレメント分布 火:D 水:B 地:B 雷:C 風:C~
うわぁ新情報盛りだくさん。
まずダンジョンの名前、第4ってなんだ。
使ってない古いダンジョンだって言ってたから神(笑)がダンジョンを複数所有しているのは理解できていた。
しかし第4は予想より大きい数字だった。
ランカーは伊達じゃないんだな。
ふむふむ、火が弱くて水がちょっと強い。
洞窟の特性がこうなってるって表示されて、そこのフィールドでの魔法の効果に関してもランク分けされているのか。
世界の名前がすごい適当感漂うのはこれサーバ番号みたいな分け方してる予感。
ダンジョンのある山、その土地を領有する国。
人間側からのダンジョンの呼び名。
つまり人間が国家を形成している上にダンジョンを認識してるということ。
まぁシステム的には当たり前といえばそうなんですけどね。
太陽は一つ、日光暖かくて気持ちいいです。
「アカルクテ、アタタカイノハ、イイコトダ」
「ヌクイ、オデスキ」
「アッタカイ、キモチイイ…」
皆ご機嫌である。
300ものユニットが移動するのはなかなか大変である。
スムーズに行動するにはなるべく細かく、そして速く動くシステムを作って、判断と指示が実行される必要がある。
組織とは最少人数を集めた集団を、いくつか集めて一つのグループを作る。
そのグループをまたいくつか集めて、一段大きいグループを作る。
それを繰り返してどんどん大きなグループを作るのが基本である。
軍隊とはそんな組織の代表的な存在である。
結構前に『プ〇トゥーン』という戦争映画があったんだが。
あれがそのまんま小隊という軍隊の組織単位の名称である。
俺の軍隊口調もそれがベースっぽい、大丈夫か海兵隊式で?
その小隊を構成するグループが分隊。
この分隊を構成するのが俺たちのようなパーティ単位の集団だ。
小隊の上は中隊という、これが今回の遠征の最大単位だ。
本当は中隊が複数で行動するときは、大隊というもう一つ大きな集団があるのだが、今回はなるだけ小規模の単位で行動するようだ。
規模が小さい順に並べると、
パーティ<分隊<小隊<中隊<大隊…
ここまでは良いだろうか?
うん、映画の知識ももちろんだけど、子供のころに見た、青い狸のロボットのマイナー秘密道具知識が、役に立つとは夢にも思わなかったよ。
夢だったら良かったのに、神(笑)マジ許さねぇ…
というわけで、俺がPtリーダーで直属の上司がコレ。
グレード R
所属 キリア
名前 ??????
種族/Lv リザードマン・オブシディアンLv06
職業/Lv 剣士Lv03
階級 スカッドリーダー
HP/MaxHP 170/170
SP/MaxSP 60/60
スキル01 剣術Lv03
スキル02 ??????
スキル03 貪食Lv02
スキル04 体術Lv02
スキル05 ??????
スキル06 身体強化
装備品① 鉄の剣
装備品② 胴鎧
強くない?
ワタクシのLvは7でHPは68/68ですけど、なにか?
いや確かに昨日の夜出くわした袋をもらった銀色のお姫様みたいな子に比べたら落ちるけどさ、
まともな戦闘スキル持ってちゃんと武器防具装備している。
これが普通の戦闘ユニットだとすると
確かに俺達Cはザコだなと思う。
でも見た瞬間言っちゃったよ、
「お前は俺か?」
「む、失礼である」
おっと、昨夜に続きまたやってしまった。
「申し訳ありません分隊長殿!」
軍隊編成中はある程度軍隊っぽい喋りになるらしい。
俺の個人的なイメージについては『古メダルジャケット』を参考に。
というか。
分隊長って軍曹だからな。
だが、さすがにいきなりハー〇マン軍曹とか呼ぶのは失礼すぎるし、カエルの軍曹だと話す方が逆になってしまう。
脳内呼称は見た目と装備でクロケン軍曹でいいか。
いや、このクロケン軍曹は俺とグレードも違うし、装備もちゃんとしてる、ズルイ、じゃなくて俺と同じオブシディアン種だ。
顔はいまだに触った感じで大体の形を確認しただけし、自分の種族の美醜はさっぱりだけど、大体の大きさとか皮膚感とか手足の形の感じなんかはそっくりにしか見えないのである。
昨日は暗いダンジョンの中だったからよく見えなかったけど、明るいところで見たらもっとよく判らなくなったという。
色は良くわかるようになったけど、黒青赤白緑の各色で一杯いるし、個体差がよくわからん。
「分隊出発である。ついてくるのである」
「「了解!」」
俺ともう一つのPtリーダーの声が返る。
クロケン軍曹の分隊は俺のPt4体と彼自身のPtともう一つ、併せて3個Ptでの総勢12体所属の集団である。
Pt長は伍長とか組長とかそんな階級相当かな。
それが視界に入る程度には離れてはいるが、まぁ固まって移動を始める。
歩き始めると山中の歩きにくさに驚く。
整備された登山道や林道なんかありはしない、人の寄り付かない山中だ。
半分潰れた獣道みたいな整備されてない山道を、棒を持って、さらに石を詰めた袋を二つ持って行くとかきつい。
それに引き換えひょいひょいと歩いていく、補給部隊のリザードマンジェダイトたちは、山小屋の荷物運びしてる歩荷さんみたいになってる。
背負子に山盛り目一杯積んでいるのは主にダンジョンレーション。
そうか、作戦中のご飯はアレか…
恨めしや神(笑)、メシだけに。
ウマくねぇよ…
たとえ激しくマズかったとしても、彼らの持つ荷物を無くされるとご飯がなくなるので心配になるが、彼らは山中での生活には適した種族なのか、危なげなく移動していく。
アップダウンの激しい山中をリザードマンが300体、裸足でひたひたと進んでいく。
ちょっとした休憩をはさみながら一日中移動すると山の中の深い森を抜けた。
なだらかな地形の草原に入ったところで全軍停止の号令がかかった。




